79
サブローの気持ちが嬉しかった。
幸せは自分で決めたい。
けれど、純粋に願ってもらう幸せは、希望のひとつになる。
「二人が俺の二十歳を見届けてくれたように、見送らせてよ」
いい未来を。
自分が幸せだと思う未来をみつけてほしい。
「……そうだね。……なんか、アタシも酔ってるのかもしれない。あっは、ちょっと風に当たってくるわ!」
アタシはすでに畳に横たわっているハジメを乗り越えて、外に出た。
カン、カン、カン……とスチール風の階段を降りて、空を見上げる。
エリア新宿・セクション新大久保によくあるこの木造風アパートで暮らすのも、あと一週間。
星は見えないけど、うすグレーの空がアタシにはいつも、優しく暖かく思えた。
……寂しい。
でも終わりじゃない。
「綺麗……」
サブローのくれた水色のネックレスは、街灯の灯りを浴びて、キラキラと光った。
頑張れる。
……頑張れない日もあるかもしれないけど、思い出す。
アタシが頑張ったこと、これからやりたいこと。
そして来年のクリスマスには、帰って来るんだ。
彼氏……がもしいたら、ハジメともサブローとも仲良くなってくれると思う。
アタシは12月の空気を吸い込んだ。
しんしんと、静かな夜。
……綺麗な雪が、降って来そうな気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます