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 秋風吹く月夜——。


 シュウジはコックピットここにいない。



 けど想定していたはずだ。伝えてくれているはず……今までの戦いこれまでの全てを。


 巨大兎きょだいうさぎがどすどすと地面を鳴らす。終焉は間近だ。



 アタシは巨大秋桜コスモスの前に飛び、そうちゃんが動きに合わせて来る。何のほころびも……無い!



「「薄明はくめいの光が白炎びゃくえんとなる」」


「僕の」

「私の」

「……俺のッ」


 通信機に、声が響く……


「「「力を光に変えて」」」


 傍に居なくても、存在は消えない。


「「「降り注げ!!」」」


 心は、消えない……!


「「「ディストレス!!!」」」


「「「バーキング!!!!!!!!」」」


「「「アローー------!!!!!!!!!!!!」」」


 満月の夜、儚げな秋桜コスモスは、光に包まれて消えた。


 強く、生まれ変わるために。



 後には黄金の別世界みたいな光景だけが残り、しばらく涙を流した。



「お疲れサマ~☆☆☆はいはい、お団子食べて食べて~☆☆☆」


 家に帰ると、ちゃぶ台いっぱいのお月見だんごがそうちゃんとアタシ、玲鷗れおんを待っていた。


 きび入りの黄色いお月見団子。みたらしで食べる。姉妹とシュウジで作って待っててくれた。かえでも居る。


 出来ることをやれば、祝宴を楽しんでいいと思う。



 アタシは月夜を楽しみながら、気づかなかった。


 サブローの哀しみに。

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