「シュウジ、アンタは怖くないの？」

　あの日、記憶野原で泣き疲れて、遠くを見ながら訊いたアタシに、シュウジは言った。

「怖いよ」

　ホタル色の魂の記憶（メモリー）を見送りながら、本音が零れていく。

「わけ、わかんない……よね、みんなの期待、怖いし、色々言うし……乗るのはこっちじゃん、無理（ムリ）……だよ……」

　やっと止まった涙が戻って来る。涙で滲んだ世界は、不謹慎にも綺麗だ……。

「姉が言ったんじゃん、開花したら全員死ぬって」

　アタシは、周りに浮かぶ星たちを見上げた。潰（つい）えてしまった大切な未来の輝き……。

「僕も……怖いよ。死んだら嫌じゃん。母にも、姉にも、絶対死んでほしくない……楽しみみつけてやってみるしか……なくない？手探りでもさ」

　アタシだって嫌だ。

　大事な人が死ぬのも、楓（かえで）と暮らせなくなることも。

　でも頑張り続けることが出来ないアタシは弱いのだろうか……。

「姉（あね）」

　アタシは振り返らなかった。でも、聞きなれた弟の声は、たまに天からの声みたいに響くことがあった。薄明光線みたいに。

「守るよ、最後まで。もしも僕がいなくなっても、神さま？になって見守るって、約束する」

「なにそれ、死んだら怒るけど」

「母も怒るよ」

　でもアタシの心は軽くなっていた。

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