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 月を映す田園に、揺れる秋桜コスモス——。


 エリア栃木、佐野秋川中腹に広がる黄金のその景色は、どこか懐かしくて、綺麗だった。


 中でも、とりわけ大きな可愛らしい、今にも咲こうとしている秋桜コスモスつぼみは、あの日、草原で丸まって泣いていた、母のようでも、アタシのようにも見えた。


 守るように、巨大うさぎが月夜に立ち塞ぐ。


「みっちゃん、あの巨大兎ウサギは、見た目よりは速くない。落ち着いて避けよう。玲鷗れおん!」


「オーケー、宗二そうじ巨大兎ウサギは任せろ!」


 コックピットから、玲鷗れおんの声響く。


 コックピットのシュウジの席には……そうちゃんが座っていた。


「みっちゃん、玲鷗れおん巨大兎ウサギを引き付けている間に、秋桜コスモス殲滅せんめつしよう」


「うん!」


 ウサギとは戦えない、シュウジはそう言ってレイダーを降りた。シュウジの学年で、ウサギの世話をしていたことがあったからだ。

幸子さちこもウサギを飼ったことがあるとかで、ヘブンズレイダーも今回は出ていなかった)


 そうちゃんは全てのレイダーに適性があったけど、アタシはハイドロレイダーにしか乗れなかったから、ハイドロレイダーとナノゲイルレイダーが出撃することが決まった、つい先ほど。


 そうちゃんは不思議なほどに、アタシのタイミングにぴったり合った。


 まるでそこにシュウジがいるみたいに。

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