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「ホント、アタシも知らなかったわ。アタシにハピたん似のハトコが居るなんて」


 久しぶりのショーコの紅茶は美味しかった。

 ……幸子さちこのクッキーも美味しかった。アタシのフィナンシェも無事に紅茶にマリアージュしてた。


 でも!


「だって私友だちいないんだもん!オフの日に私、ひとりって寂しいじゃん……」


 幸子さちこ三叉路さんさろで立ち止まった。

 黒曜石の瞳が夕陽の中で輝いている。


 確かに、幸子さちこの境遇を思うと、友だちを作ってるヒマなんてなかったのかもしれない。


「中学、行かないの?」


「私、大検取ってる」


「うそっ」


「これでも、医者の娘だしぃー☆」


「……ごめん」


 そうだ、大世界の人工島アイランドオブピース幸子さちこの両親は医者をしていた。


「あ、あのさ。幸子さちこっていつもキラキラしてるけど、レイダーチームにはキラキラしなくなったっていうか、幸子さちこのままっていうか……その……」


 仲間トモダチってことでいいんじゃないかってアタシは言いたかった。


「ふふん☆当たり前でしょ?世の中にはね、ファンになってくれる人と絶対にならない人。二種類いるの。ならない人にサービスしても無駄だもん」


「いや、そういうことじゃなくて、つまり……」


「変なミカ!☆」


 ふわ、とミルクティーの匂いがして、ふわふわのマシュマロが頬に触れた。

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