雪原の大華……――巻き起こせ、天の奇跡

37

「行ってきます」


「「「行ってらっしゃい」」」


 そうちゃんは笑顔だった。


 旅に出る。

 昨日、そうちゃんはアタシたちにそう言った。


 HyLAハイラはホワイト機関らしくて、有休がちゃんとでるらしい。

 それに、本当なら高校生のそうちゃんだ。


 そんなに早く大人にならなくていいのだ。


 もともと旅が好きなそうちゃんは、スコットランドのアイラ島の、カモミールのさとを目指すそうだ。


 下の階のお母さんだけじゃなくて、そうちゃんも花が好きだ。


 存分にリフレッシュしてくればいい。

 頑張ったのだから。


 アタシは旅立つそうちゃんにおにぎりを渡した。


「シャケと上のお姉ちゃんの卵、入ってるんでしょうね?」


「当たり前でしょ」


 そうちゃんのおにぎりの具の好みを知らない人間は、ウチの家族にはいない。


 そうしてそうちゃんは旅立って行った。


「ライズブレスは持って行ってくれたよ……」


 眩しそうに見送りながら、サブローが言った。


「……今朝は来るの、遅いじゃないですか」


 アタシはサブローに言った。


「水入らずがいいかと思ってね」


 カンカンカン………とサブローがアパートの階段を上がって行く。

 先に行かないで貰えますかね!?


「っていうか、ライズブレスって何ですか?」


 アタシはちゃぶ台にサブローの分のおにぎりを置いた。

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