19

 かえでのいない、不安な夜が明けた。

 例の、シュウジの口上を睡眠学習のように聞いているうちに、アタシはいつしか眠っていたようだ。


 地下基地の中に、偽物ニセモノの太陽が昇る。

 

 優しいお味噌汁の匂い。


かえで!!!」


 サブローの体を蹴とばして飛び降りたかえでを、アタシは抱きしめた。


 見慣れない碧い首輪をしている。


AIdエイドの反応を消す加工をしているから外さないように。念のため、地下基地から出さないようにしてほしい」


 サブローはそう言った。


 アタシはしっかりとかえでを抱きしめた。


「で、なんで一緒に朝ご飯を食べてるんですか?しかも、食事中もサングラス……」


 当然のように食卓を囲むサブロー。

 今風のアッシュグレーの髪型から見て、思ったより若いのかもしれないけれど、サングラスのせいでオジサンにも見える。

 エリア関東の警察の人が着ているみたいな、白いサファリジャケットみたいな服を着て、下も白だから黒いサングラスがいやに浮いて見える。


「目がちょっと弱くてね。気にしないでくれたまえ」


 サブローはアタシの卵焼きをどんどん減らしていく。ちょっと!


「サブローさん、僕考えました。ハイドロ・ライト・エージェンシー。HyLAハイラなんてどうですか!?」


 サブローの見えない目が輝いた気がした。

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