宵闇のホーリーチェリー……――示せ、二つの絆。

13

 ニャニャニャニャーン、

 ニャニャニャニャーン……


 陶器の目覚まし時計は、猫のしっぽを押すと止まる仕様だ。


 頭にボタンが付いていればいいのにと思いながら、アタシは布団から手を伸ばして、トラ猫の体をくるくると回した。


 ニャニャニャニャーン、

 ニャニャニャ……――。


 声はかわいいけど、しっぽが小さすぎる。


 六畳の和室に敷かれた布団は、すでにアタシの布団だけだった。


 隣の四畳半を見ると、ちゃぶ台に座ったシュウジが、ビカビカとしたテレビの光を浴びていた。

 真剣な顔で。


 アタシはトラ猫を元に戻してから、腕をぐん、と伸ばした。


「あ、あねおはよう」


「……はよう」


 アタシは布団をてきとーに畳んで、お風呂場で顔を洗った。


「おはよう!」


 甘い卵焼きを焼きながら、母が言った。うん、元気が過ぎる。


「おはよ」


 アタシもちゃぶ台に座る。


 弟が味噌汁を、母がほうれん草のお浸しと冷やしトマトを運んで来る。

 いいの、アタシは片付け担当だから。


 テレビに昨日の映像が映っていた。


 三角の白い瞳が動きに合わせて金色に発光。グリーンカラーの角ばった体躯。

 古代の戦車を人型に変形させたみたいな巨大なロボット。

 かえでの映像は消されていた。


 現在の時刻、6:55分。


 テレビ画面右下には……


 29日


 小さく、そう浮かび上がっていた。

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