第17話 公社
サイタマ新営公社。略称は公社。
ニューサイタマの実質的な自治組織であるが、その本質は探索だ。
もともとニューサイタマは探索拠点の一つに過ぎなかった。
しかしその探索対象が予想以上に多くの富をもたらし、この街とそれを築いた公社は発展してきた。
半径100kmと推測されているすり鉢状の地形。
何が爆発したのか、いつ爆発したのか、それどころか、中心部に何があるのかすらよくわかっていない巨大な構造物。
世界崩壊後、当初から存在だけは知られていたが
しかし、危険とともに莫大な資産が転がっている。
菌糸の森の入口は外縁からだいたい5kmといったところなので、全体の10%しかわかっていないことになる。
しかし、人類は魔術という力を手に入れた。
これによって深部探索計画が息を吹き返すことになる。
探索隊は先鋭だ。今回は次回以降の探索の下見が目的であり、また、大人数で動こうとすると補給が追いつかないためらしいので少人数でいくらしい。
選ばれたものは数百といる中でたったの3人。
まず探索隊長のリョウ。
トップ直々率いる。彼は探索集団のトップでもあるので当然である。
次に、副隊長のジャンク屋。
彼は魔術師だ。だが、本人は贄人ではなく魔術具を使う。
そして、最後に選ばれたのが、
「ファイン、一緒に来てくれ」
うちの窓がパリーンと音を立てて割れ、スタスタとリョウが入ってきた。
「お前は毎回登場するたびにうちの窓を壊さないとダメなのか?」
「? 弁償代はオーナーに渡しているはずだけど?」
駄目だ。話が通じてねえ。
いや、言いてえことはわかる。おそらくこいつの中でドアを使うってのは無駄なんだろう。
ドアベルを鳴らして、誰何の会話をして、部屋に案内されるという手間があるからな。
その点、窓をぶち破れば直、目的人物に会うことができる。
失礼になる点に関しても金払ってれば問題ないだろっていうことだ。
普通、効率的になろうって言っても常識が邪魔をする。だが、こいつには無い。
俺は気持ちが悪かった。
この薄ら笑いを浮かべているなろう系主人公みたいな皮を被ってる昆虫みたいな生物のことが心底、恐ろしい。
まあ、それはともかくとして来客は来客なので茶は出す。文字通りの粗茶だけどな。無礼には無礼をってやつだ。
「っていうか、なんで俺なんだ。自慢じゃないが、俺は弱いぞ」
「別に戦闘員じゃないやつに強さは求めてねえよ。お前はきっと役に立つ」
まずっと言いながらリョウは茶を飲み干した。
「そもそも俺は行きたくねえんだよ。猫草亭の仕事もあるし、俺はインドア派なんだ。アウトドアはおめぇらだけでやれ」
「うるせえ! 行こう!」
「誰が化け物のトナカイだ! 俺は人間だし、お前らの海賊団にも入らねえ!」
ワンピースね。
まあ、それはともかく行く気はない。
報酬があったとしてもわざわざ金のために死んでやるほど俺の命は安くないのだ。
なんか毎回、話の最後に死んでいる気がするが、今回こそは絶対に死なない。
「ったく仕方ねえな。諦めるよ」
リョウが残念そうに後頭部を触る。
そ
それが合図だったらしく、マフラーをしたフードの男が現れ、俺の首根っこをつかんだ。
「同意の上で連れて行くことはな。ジャンク屋、行こう」
「了解だ、ボス」
マフラー男、ジャンク屋は俺をつかんだまま窓から勢いよく飛び降りた。そして、無理やり引っ張られた俺の首の骨はポッキリと折れ、そのまま俺は死んだ。
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