第16話 セクハラ
気づくと俺は磔にされていた。
最後の記憶はクラゲとホテルのバーで飲み直していたとこまでだ。
くそ、頭がふらふらするッ。
「えー、読み上げます。この度、被告人ファインは人道上許しがたい事件を起こしたため、逮捕される運びとなりました」
俺を取り囲む何人か。主に公社の高官どもらしい。
だが、その中に一人、ゆるふわに微笑む少女。クラゲだ。
「オンドゥルルラギッタンディスカー!!」
俺はジタバタした。
クラゲが夢可愛く、耳元でささやく。
「ファインさん、私よく考えてみたんですっ。ファインさんが持ちかけてくれた共同経営は本当に良いビジネスでした。だけど、でもですねー」
すっっと息を吸ってクラゲは朗らかに笑いながら言った。
「これ、私が奪ったほうが儲かるなって……」
「お前は資本主義の悪魔か! く、離せ」
「思いついたら簡単でした。ファインさんは自分から悪行に手を染めるタイプでしたし、私が握っているものをリークしただけで、ほらこの通り、です」
クラゲが耳元から顔を離して、周りの光景を俺に見せた。
俺は命乞いフェーズに移ったことを確信した。
近くにいたリョウに話を持ちかける。
「なあ、リョウ。お前が俺に情報をリークしたのは戦争のために動いてほしかったからだろ? 言う通りにしたよな? なら、このこともわかるはずだ。お前なら俺を助けられる。お前しかいないんだ」
「ファイン、お前は許されないことをしたんだ」
顔を伏して祈るように眉間にシワを寄せるリョウ。
ふざけんじゃねぇ。そんな犯罪を犯した友達に自首を迫るような顔をすんじゃ無いっ。
こいつは駄目だ。もっといないのか。
「ていうか俺の罪状はなんなの? 人体切り売りしていたことに関してはみんな納得してたよね」
リョウが、人が変わったかのように笑顔で答える。
「ああ、それは普通に贄人たちからセクハラの訴えがあったので」
「え、ああ、そっちかぁ」
否定できなかった。
俺は刹那主義に生きている人間なので、いい女がいればワンチャン考えてナンパするし、いいおっぱいがあれば容赦なく視姦する。
なのでセクハラだと言われるのは驚かない。
まあ、セクハラで死刑になりそうなのはビックリだけどな。
「というか、ファイン。俺は別に死の商人しろ、とか言ってないからね。普通に友人として忠告しただけだから」
「だから俺はお前とダチになった記憶はねえよ」
こいつの頑な主張は何なんだ?
まあ、酒飲んだら忘れるなんてこともあるかもしれねえが。
まあ、それはともかくこれはもう無理そうだ。
俺は首を差し出す。
「やるなら一気にやってくれ、痛いのは嫌いなんだ」
もちろん嘘だ。
殺されてやるものか、絶対に生き残ってやる。
処刑人が持っているあの斧をどうにかして手に入れる。
そして、こんなときのために俺は口の中に爆発する魔術具を仕込んでいる。
すでにこの魔術具で縄は緩めておいた。
処刑人が近づいてきたタイミングでそいつの斧を奪い取り、そいつを人質にここを逃げる。
完璧な策だ。
処刑人が近づいてくる。
残り3m、2m、1m、今だっ!
「おらっ、て、あれ?」
な、縄が解けないっ。
え、なんで、もしかして隠密性を重視しすぎて、爆発力が足りなかったのか?
「ちょ、ちょっとまってくれ。やっぱタンマ。ちょちょままっっ」
俺はそのまま処刑された。
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