第14話 正論
「ファイン先輩、もう一度聞いてもいいですか? 話によっては警察を呼ぶ必要があるので」
バイト終わりの控室、俺はヒメに協力を持ち出した。
俺は真面目な顔を崩さずに言う。
「風呂の残り湯を分けてくれないか」
「通報します」
「待て待て、誤解だ」
俺は誤解を解くため、説明をもう一度することにした。
「いいか、お前の風呂の残り湯、というか皮膚の一部は加工すると爆薬になる。別に髪の毛でもいいが、お前だって丸坊主になるのは嫌だろ」
「だから、なんで私が協力することになってんですか。ファインさんの金儲けでしょ」
く、正論だ。
だが、正論に負けるわけにはいかない。ただでさえ、女の体の一部を売りさばいて儲けようとしているのだ。ここで言い負ければ、何もかもダメになる。
「いや、これはお前にとっても得なはずだ」
「自分の体の一部を売ることがなぜ得になるんです? やりたければ自分でやりますし、ファイン先輩に利益を分ける意味ないですって」
くそ、なんでこいつ正論ばっかり思いつくんだ。
だが、こいつの論には正論であるがゆえの穴がある。
「販路はどうする?」
「そんなの適当に売りさばけば」
「無理だな。俺たちが売るのは武器だ。おもちゃじゃない。それなりの信用と実績が必要だ、自分たちに味方しているという保証が欲しいはず。その点、俺は公社のトップにそれなりに信頼されているらしい。じゃなきゃ情報なんてくれるはずがねえからな。それに資金もクラゲに駆け寄れば絶対に出してくれる。あいつはこういう金儲けの話には乗るはずだ」
「そんなの私だって」
「はっ、お前にできるのか。クラゲに金を借りるってことがどういうことなのか知ってるのか? やつに命を差し出すのと同義だぞ?」
「それ自分で言ってて辛くないんですか?」
ヒメはむむむっと腕を組んで考えている。
よし、こっちのペースに持ってくることに成功した。多少頭が良かろうがこいつは基本的にガキだからな。
あと一押しでいけそうだな。
「風呂の残り湯を売るって考えるから変態っぽい響きになるんだよ。身体の一部を代償に武器を召喚するって言えばちょっとダークファンタジーっぽくてかっこいいじゃん。それに公社に正式採用されれば多くの人がお前が作った武器に頼るわけだし、アイドル的な人気も出るかもしれんぞ」
「あ、アイドルですか。そんなこと……」
「いや、あるね。歴史的にそういう例はいくつもある。知ってるか? 戦艦って英語だと女性扱いなんだぜ」
「うう、こ、今回だけですからね」
最終的に話はまとまり、利益は山分けということで決まった。
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