第5話 情報収集は基本ですわ。
翌日、アカデミーの放課後サロンにて、
私はお友達とお茶会をしていた。
「アメリー様!聞きましたよ!カイル殿下の婚約者候補に選ばれるように、努力されるって」
…すでに父が大騒ぎしているようね。
「皆様、お耳が早いのね。」
「「「まぁ、やはり本当なのですね」」」
「私達、全力でサポート致しますわ。」
「なんでもおっしゃってください。」
「アメリー様がカイル殿下の隣に並び立つのが、今から楽しみですわー!」
と、同陣営の令嬢達が騒ぎ立てる。
「ありがたいですわ。皆様もしご存知でしたら、教えて欲しいのですが、フィルミーナ嬢とそのお友達方が、どのような対応されているのか…おわかりかしら?」
「流石ですわ!アメリーさま!」
「まずは敵を知るところから。始めるのですね!」
お友達の話をまとめると、
・フィルミーナ嬢は静観を決め込んでいる
・フィルミーナ嬢のお友達は、フィルミーナ嬢のために、男爵令嬢をどうにかしてやろうという、過激な思想になってきている
・男爵令嬢は平民出身
こんなところでした。
フィルミーナ嬢のお友達方も、フィルミーナ嬢が、未来の皇妃になれるかどうかで、派閥のポジショニングが変わりますわ。そのため、親からも圧を受けるでしょうし、彼女達も必死なのでしょう。
同じことはこちらにも言えるのだけど、上手くいけば皇妃、悪くても宰相の夫人。こちらはあちらほど、切羽詰まっていないのが唯一の救いだわ。
「皆さま教えてくださって、感謝致しますわ。楽しくて、すっかり日が暮れてしまいましたわ、ごめんなさいね。また明日お会いしましょう。」
「ええ。また明日。もっとお力になれるように頑張りますわ!」
「私も」
「私も」
と、声が上がる。
「では皆様、ご機嫌よう。…ナディア様とライラ様、少し残ってくださるかしら?新しい事業の件で、お話があるの。」
「「承りましたわ。」」
2人の令嬢と私以外が、その場から立ち去るのを確認し、2人に向き直る。
残って貰った2人の令嬢は、侯爵家のナディア様と伯爵家のライラ様です。
このお二方は中立派の家門で、実は婚約者選びのお茶会に参加されていたご令嬢です。
この2人もカイル殿下の婚約者を、目指していたのですが、今では2人とも別の婚約者がおり、婚約者との仲も良好な様子です。
そして、私と同じように、当時のフィルミーナ嬢の凄さに、感銘を受けておりました。
また、中立派であることもあり、フィルミーナ嬢とも、良好な関係を築いていらっしゃいます。
「お二人に残ってもらったのは、他でもありませんわ。貴女方も親や親族から、カイル殿下の婚約者に名乗り出るように、言われているのではなくて?」
素直でまっすぐな質問を致しました。
すると2人の令嬢からも、素直な回答を頂けました。
「ええ。お察しの通りです。実は、私は言われております。私が皇子妃となれば、我が家がもっと栄えると…」
ライラ様が
「私もですわ。親族一同で既に浮かれている始末ですわ。」
と、ナディア様が
「どこも似たような感じですのね。私、皇妃になる気など、さらさらないのに。本当に困っておりますの。」
「「まぁ。そうでしたの?」」
心底驚いたような反応を返されました。
「ええ。絶対に嫌よ。私、ウィルと結婚したいのに、冗談じゃありませんわ。お二人も同じではなくて?」
「…ええ。もちろんですわ。でも意外でしたわ。アメリー様はてっきり、カイル殿下と婚約して、皇妃になりたいのかと思ってましたわ。」
「私もそう思っておりました。」
「もちろん派閥の方や親族の前では、口が裂けても言えませんわ。ですが、本当に困っておりますの。男爵令嬢が皇子殿下と、婚姻など出来るわけありませんし、最悪、私達を側妃に、などと言い出しかねませんわ。」
2人がゾッとした顔でこちらを見る。
「そこで私、お2人にお願いがありますの。中立派である、お2人にフィルミーナ嬢側の令嬢が、男爵令嬢に対し、過激になるのを抑えて頂きたいの。貴女方はフィルミーナ嬢が皇妃になっても損はないですし、例えそうならなくても、私は恩を忘れませんわ。お願い出来るかしら?」
どんな結果になろうとも、彼女達は何の損もしない提案なので、2人には快く受け入れて貰えました。
こうして私は、情報を集めながら、暴走した令嬢達を牽制をする手筈を整えました。
……………………………………………………
翌日の放課後、デートと称しウィルと会い、情報交換を致しました。
ウィルの情報によると、なんと皇子殿下は例の男爵令嬢を、本気で皇子妃にしようと、されているようです。
しかも、すでに身体の関係もあるとかないとか。破廉恥ですわ。
男爵令嬢のお名前はサラ・リト・ユーワクン嬢。
男爵がメイドに手を出して出来た子だそうです。
そして、去年まで平民として過ごして居られたためか、
貴族生活に慣れていないようです。
「それで、フィルミーナ嬢をどうするおつもりなのかしら?」
「年末のパーティで、サラ嬢を虐めた罪により、フィルミーナ嬢を断罪しようとしているようです。そして、公爵家に責任を取らせる名目で、サラ嬢と養子縁組をさせようと考えているようです。」
「まぁ。そんな恐ろしいことを。怖いわぁ…。でも、去年まで平民だった女の子に皇妃は絶対に無理よね…。」
「ええ。その通りです。ですので、側妃を何人か取れば良い。と、考えているようです。」
「フィルミーナ嬢を側妃にするのか、あるいは各派閥から均等に。と、なりそうですわね。…困った話だわ。お父様は、すぐに手を上げそうですわ。」
「…そのような事態は、何としても阻止しましょう。」
「…ウィルお願いがありますの。フィルミーナ嬢が断罪される内容を、事前にリスト化するように促せないかしら?」
「ええ。可能だと思います。」
「その内容を事前に知ることが出来れば、何とかなるかもしれませんわ…。絶対にウィルと結婚してみせますわ。頑張りましょうねウィル」
「…ええ。頑張りましょう。」
ウィルはまた、照れて真っ赤なお顔をしておりましたが、同意してくれました。
その後、ウィルは見事にサラ嬢が受けた虐めリストを作成してくれました。そして、私はリストの内容を事前に知ることが出来ました。
リストの虐め内容は、本当にこんなことをされたのか?と、甚だ疑問でした。しかし、フィルミーナ嬢と交流のない私には、事実はわかりかねます。
それに、リストには直近のものもありましたが、ライラ嬢とナディア嬢が抑えてくれているので、この辺は明らかに虚偽です。
そしてリストを再度見て、私は確信致しました。
「ウィル。私、出来そうですわ。頑張りますので、応援してくださいね。」
「そうですか。良かったです。他にも僕に出来ることがあれば、なんでも言ってください。」
「ええ。頼りにしてますわウィル。」
こうして私は念入りに準備をして、年度末のパーティーに挑みました。
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