第4話 貴族はアカデミーに通わなければいけないのです。
さて、話は変わりますが、この国では、15歳になりますと、貴族の令嬢・令息は、3年間アカデミーに通学する必要があります。
このアカデミーに通学することには、将来的に国を牽引する貴族達に、皇族を敬い、帝国への忠誠を学ぶ教育を施す。という大切な目的があります。
勉学にて様々な学びを得ると同時に、この期間を社交界に進出するための準備段階として、人脈作りをしたり、礼儀作法を学び直したりするのです。
私も去年から通っており、仲の良いお友達もたくさん出来ました。
ウィルも一つ上の学年ですが、同じアカデミーに通っております。
また、第一皇子殿下とフィルミーナ嬢も同級生です。
大きな事件もなく、穏やかなアカデミー生活を送っておりました。
ですが、最近おかしな噂が聞こえてきますの。
その噂では、一年生の男爵令嬢と第一皇子殿下・カイル殿下が、とても親しい仲だと言うのです。
アカデミー内で口付けを交わしていたり、手を取り街中を2人で歩いてたり、人目を憚りながら密会している。と言う噂なのです。
カイル殿下の婚約者は、現在もフィルミーナ嬢のはずですが、どうも彼女はおざなりな扱いをされているのだとか。
フィルミーナ嬢が、どう思われてるのかは存じませんが、フィルミーナ嬢のお友達や派閥の方々は、大層お怒りのようなのです。
その影響か、最近はアカデミー内が少々殺伐とした雰囲気です。
殿下に直接抗議するわけにもいかず、具体的な対処法もありません。
皇妃や陛下は、ただの火遊びだから、気にすることはない。と言ったスタンスのようです。
なぜ皇妃様や陛下のお考えを、私が知っているのかと申しますと、【フィルミーナ嬢が第一皇子殿下のお気に召さないのであれば、婚約者を変えれば良いのではないか。】と、迷惑なことに我々の派閥が、再び湧き立っているのです。
私のお友達には、中立派の方もおりますが、やはり同じ派閥の方が多いので、
「チャンスですわよ!アメリーさま!」
と、彼女たちは私を焚き付けるようなことを、日々言って参ります。
根が悪い子達ではないので、悪意はないのですが、皇妃には絶対になりたくない私にとっては、全くもってチャンスではないのです。
そして父も父で、
「これはチャンスだアメリーよ!フィルミーナ嬢が婚約者から外れれば、お前が婚約者だ!やったな!」と。
「…頑張りますわ。」
「それでこそ我が娘よ!ハハハハハ!」
と、父はご機嫌に去って行きました。
この状況は、全くもって望ましくないですわ。
本当に頑張って回避しませんと。
………………………
状況に不安を覚えた私は、婚約者のウィルに「明日の放課後、時間をとって欲しい。」と、外でのディナーへのお誘いをし、了承を得ました。
放課後、家に帰り、馬車で集合場所であるレストランへと向かいました。
既に着いていた、ウィルにエスコートされ、店内に入ります。完全個室での和やかなディナーを終えたのちに、ウィルに話をしました。
「ウィル。最近、殿下と男爵令嬢の仲が良いのは、ご存知かしら?」
「ええ。かなり親密な仲だとか。」
「そのようね。それで私、困っているの。フィルミーナ嬢が婚約者として、蔑ろにされているようなのであれば、殿下の婚約者を私に替えてしまえば、良いのではないか。という話が、上がっているの。私はウィルと婚約しているのに。」
「…そうなのですね。」
「…ええ。だから私、困っておりますの。」
「…なるほど。だから、外での食事なのですね。…それで、我が家から婚約の解消を申し出て欲しいと。そういうことですか。」
「…え?いえ!違うわ!そんなこと考えたこともないわ。絶対に嫌よ。私はウィルと結婚したいの。だから、フィルミーナ嬢を応援しようと、思っていたの。こんなこと家では言えないもの…。」
「…でも、ウィルは私との結婚は…望まないの?…政略的な結婚とはいえ、私はウィルと一緒にいるのが好きで、結婚するのも楽しみだったのに…。
婚約解消なんて、絶対に嫌よ…。」
「いえ、婚約解消しません!アメリーと結婚します!」
と、顔も耳も真っ赤にしたウィルが告げてきた。
「よろしいの?私は嬉しいのですけれど…。」
「ええ。僕も嬉しいです。アメリーに婚約解消を促されるのかと思って、勘ぐり過ぎてしまいました。僕のせいで傷つけてしまい、ごめんなさいアメリー。」
「それなら良かったわ。私こそ誤解させてしまい、ごめんなさい。…ウィル。フィルミーナ嬢を助けるために、私に力を貸して欲しいの。」
「ええ。フィルミーナ嬢には頑張って貰わないと、アメリーと結婚出来ないですからね。」
「そうね。絶対にウィルと結婚したいもの。」
「それにしても、フィルミーナ嬢には心底同情してしまいますわ。私でしたら絶対に嫌ですもの。」
そうして、ウィルに協力を取り付け、まずは現状を探る。という結論に落ち着きました。
殿下と男爵令嬢のことは、ウィルが。
私はフィルミーナ嬢がどのように考え、行動されているのかを、調べることに致しました。
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