第3話
1990年株式市場発会の日、株価は大きく下がった。多くの予想に反したので市場は動揺した。多くの投資家が弱気に転じ売りを急いだ。僕の株も、つれ安した。信用建の株に追証が発生した。保証金が足りないと証券会社から現金を要求され、初めて株の厳しさを味わった。株はずっと上がり調子だったのでよくわからないまま信用取引にも手を出して、自分の能力一杯つぎ込んでいた。これ以上下がると損切りに走らなければならなかった。
それから株式市場は多少の上下を繰り返しながらも以前のような勢いは感じられなくなっていた。株の動きが小さくなったころ今度は不動産市場が活況を呈してきた。地価は毎月のように上がり2倍3倍は当たり前で10倍位になったものもあった。しかし政府は不動産の動きには大きく反応した[このままいくと一般国民の土地利用ができなくなる]などといい地価の上昇に歯止めをかけると言い出した。政府は様々な規制に乗り出した。不動産市場はすぐに反応し売りが殺到してきた。思惑通り地価は下げに転じたが株式市場も同様な反応をしてしまった。株式市場は信用取引も入っているので動きには敏感だった。それから更に悪い材料が持ち上がった。湾岸戦争である。世界の経済に暗い影を落としつつあった。特に日本の市場は下げ基調の中、売りのターゲットにされようとしていた。日本株のピークアウトを確認したかのように外人投資家達の売りの勢いは増してきた。日本投資家達も便乗し先を急ぐようになっていた。政府はあまりにもの勢いに驚愕したのか株価対策などを打ち出し初めた。しかし、時すでに遅しタイミングはずれていた。最早、日本経済そのものが崩壊するような様だった。銀行、証券会社、不動産会社等々一流といわれた企業が次々と倒産していった。言わずもがな、僕の株などひとたまりもない。信用取引建ては次々と清算され僕の資金は限りなく0に近づいていった。
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