第2話

テレビや新聞でも株式市場のニュースが目立つようになってきた。僕の株も出来高が徐々に増えて上がる前兆の様相を呈してきた。証券マンから電話がきた。[そろそろきますね]彼は僕に売る準備を促すような勢いだった。案の定翌日には200円を付けた。証券マンは自分の手柄のようなつもりで半ば強制的に僕の株を売った。僕は少しムッときたが(儲かったから言いか)と自分を納得させた。証券マンは次に買う株を提示してきた。[電力株がいい]と上がる理由をごたごたと並べて有無を言わせなかた。言われた通りに買ってみるとやはり徐々に上がってきた。証券マンは勝ち誇ったようにますます主導権を握るようになってきた。結局、電力株も倍くらい儲かって

僕はますます証券マンの言いなりになってきた。貯金もおろして銀行から借金までして株にのめりこんでいった。この頃になると全銘柄が順番にあがるようになっていた。上がるから買う買うから上がるという循環になってきた(踊る阿呆にみる阿呆どうせ阿呆なら踊らな損々)全員参加型の泡踊り状態になってきた。世は正にバブルの宴だ。猫も杓子も株だ株だと大騒ぎになっていた。僕も数十の株を持ちなにがなんだかわからなくなっていた。あいかわらあず証券マンの鼻息だけは荒かった。

1989年12月、日経平均は40000円に近づいていた。巷では経済評論家や証券会社が来年は50000円になると息巻いていた。






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