第50話 【番外編】あの人はいま…。
ちょっとした続きです。
確実にメイン登場人物のはずなのに、全然登場しなかった、あの方のお話です。
ご興味があればどうぞ(°▽°)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ずっと貴方の事を考えていたから、貴方がずっと側にいるような気がしていた。けれど実際は、全然会えていなかった…。あの人はいま?】
▼△▼
「…そう言えばお父様。ジーク殿下はどうなりましたの?」
アリスがふと思い出したかのように、公爵へと尋ねた。
「ああ。ジーク殿下は…社会勉強中だ。
…イリスもアリスも夏季休暇だろう?ジーク殿下に会いに行ってみると良いよ…」
公爵は、珍しく歯切れが悪かった。
▼△▼
というのも、ジーク殿下。
毒の治療が済んだ後に一度、王妃様と面会している。
その時にジーク殿下は、他の令息達と同じように、『ミーナ嬢を好いているので、早く会いたい!』などと、王妃様を前に主張した。
それで終われば、まだよかったのかもしれないが、更に最悪な事に、『彼女との婚姻を真剣に考えている』とまで、言及したのだ…。
これらの発言により、ジーク殿下も他の令息達と同じように、"毒入り菓子に依存していたのでは無く、ミーナ嬢に惚れていて、彼女(ミーナ)に依存していたのだ。"と、盛大に証明してしまったのだ…。
つまりジーク殿下は、毒の効果は関係なく、ミーナの仕掛けたお粗末なハニー・トラップに、本気で引っ掛かっていた事を、王妃様に対して、自己申告してしまったのだ。
このジーク殿下の言動を受けて、王妃様の怒りは、無事に限界を突破をした。
そして、その怒りの矛先は、当然全て、ジーク殿下へと向けられた。
結果、【美しく聡明で、寛大で、たおやかな王妃様】という、国1番の分厚い仮面を、か殴り捨てて、出来の悪い息子を激しく叱りつける、1人の母親が降臨したのだった…。
▼△▼
そんな事があって、ジーク殿下には罰として、社会勉強が義務付けられた。
護衛と毒味を、きちんと付け、安全面を確保した上で、ベルトハイド領内にて、庶民の暮らしを学ぶ事になったのだ。
それが彼に課せられた、罰であった。
生まれた時から王族であるジーク殿下には、さぞかし大変な日々であろうが、王に必要な、広い視野と柔軟な思考を得られる……かもしれない。
何にせよ、我らベルトハイドの面々に出来る事は、王妃様の怒りを買ったジーク殿下の成長を、静かに見守る事だけだった…。
ジーク殿下が社会勉強を通して、一回り大きくなって、より立派な王になってくれる事を、祈るばかりだ…。
▼△▼
漠然とした目的の中で、始まった罰であったが、幸いにも、既に一定の成果をあげている。
最初は不満ばかりでミーナ嬢を強く求めていたジーク殿下であったが、庶民の生活を少しずつ学んでいるらしい。
年齢も、育ってきた環境も、全く違う人達の考えに触れる事を、日常的に経験し、彼にとっての未知の体験をする事で、様々な事を真剣に考えているようだ。と、報告が上がってきている。
更に最近では、ジーク殿下が零す不満も減り、ミーナ嬢の結婚という、彼にとっては衝撃的でショッキングな出来事も、なんとか無事に飲み込めたらしい…。
若者は瞬きするような時間ですら、何倍にも成長している時がある。
未来がどう転ぶのかは、わからない。
けれど、ジーク殿下にとって、有意義な時間になる事を、願うばかりだ…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます