第34話 3人目の獲物・愚かなデコイ。

思いっきり、やってしまいました…。

苦手な方はごめんなさい。


……………………………………………………



3人目の獲物・愚かなデコイ。

荒ぶる恋愛マイスター。

ミーナ・マーテル男爵令嬢。




 はーい!ミーナだよー!ごきげんよぉー!


 ミーナはいっつも可愛いく楽しく!アカデミーで過ごしてるよー!アカデミーは格好良い男の子がいっぱい居て、とっても楽しいの!



 でも、なんだか最近、いろんなことがおかしいんだ。



 よくわかんないけど、上手くいかないの。



 ジークはまだアカデミーに来ないし、アレクも昨日から来なくなっちゃった…。



 それに、なんでか、ステラまで居なくなっちゃったし…。



 今までステラが、ミーナの作ったお菓子を、綺麗にしてくれていたから、そのステラが居なくなったら、イリスにもお菓子を渡せなくなっちゃった…。




 お菓子を用意出来ない事をイリスに伝えると、優しいイリスは綺麗に笑って許してくれた。


「…少し残念だけれど、大丈夫だよ?…今までありがとう。皆にも伝えておくね?」


 って、言ってくれたの!



 イリスは優しくて、綺麗で、本当にとっても格好いい。



 だから、ジークとアレクの次に、1番好き!





 そんな事を考えてたら、あっという間にランチの時間になってた!不思議ー!



 意識したらお腹すいちゃったー!ランチにしよーっと!



 うーん。でも今日は、アレクも来てないし、どうしようかなぁ…。



 そうだ!展望テラスに行こうかな!


 

 久しぶりにみんなにも会いたいし!



▼△▼



 みんなに会えるの楽しみ!早く行きたくて、早く会いたくて、楽しく廊下を移動してたら、ミーナの行きたい道に令嬢達がいたの…。



「…男爵令嬢のくせに…」

「生意気なのよ…」

「鏡見た事あるのかしら…」



 令嬢達にコソコソ見られながら、クスクス笑われちゃった…。


 あーあ。今日も令嬢達から、陰口を言われちゃった…。




「ねぇ!ミーナの陰口を言わないでよ!嫌なことがあるなら、直接教えて!!」




 そう言うと令嬢達は、冷めたい目でミーナを見るだけで、何も言って来ない。




 だけど、少し離れるとクスクスと笑って、またミーナへの陰口が復活するの。なんかやだなー。



 これも、最近変わったことかもしれない…。


 今までは、もっと違った…。


 前も嫌だったけれど、正面から文句を言ってくる、子達ばかりだったのに…。



 何でこんなに変わったんだろう…?



 でも、代わりに、今まで言ってきてた人達は、何も言って来なくなった。それどころか、ミーナを応援して、親切にしてくれる人まで出て来たの…。



 …なんでなんだろう?


 …ミーナには、難しくてわかんないや。



 こういう時は、いつもステラが教えてくれたから…ミーナには、どうしたら良いかわかんないや…。




 うーん…。まぁ良いやー!




 考えるのやーめよ!




 それより、みんなと楽しくランチだよー!


 みんな元気かなー?

 久しぶりに会えるの楽しみぃー!


 そんな事を思って、元気に展望テラスの扉を開けた。




▼△▼




「みんなー!ミーナだよぉー!元気だったー?」



 大きな声でそう言って、開け放った扉の先には、以前とは違う光景が広がっていた。




 なんというか…貴族の男女が仲良くマナーを守って、お食事をしていたの…。



 ピカピカ光るお揃いの宝石を付けたお貴族様達が、お食事をしている…。



 なんだか、格式高いレストランに間違えて入っちゃった時…みたいな感じ…。




 …あれれ?なんだかミーナ、もしかしたら場違いかも…。




 でも、よくよく見ると仲良さそうな貴族の男女の、男の方は、ミーナが大好きなみんなだった。




 なんで?どうして?みんなミーナの事が好き!って、言ってたのに!!どうして他の女の子と仲良くしているの!?




 我慢が出来なくて、言葉に出そうとすると、近くにいたアルから声をかけられた。



 わーい!アルだ!相変わらず格好良い!…というか、もっと格好良くなったかも…?



「やぁ。ミーナ嬢久しぶり。君もランチかい?」



 良かった!前のアルと同じように優しいっ!



「…うんそうだよ!ねぇー!アル!ミーナの席どこぉー?」



「あぁ。ミーナ嬢が来ない間に、少し席の配置を変えたんだ。空いてる席だと……あっちかな?」



 そう言って、アルが指差したのは、すごく遠くの席だった。

 



「やだぁ!ミーナはアルと食べるの!だからあの席はやぁだ!ね?アル一緒に食べよ?」




 そう言ってアルの袖をちょこんと握り、下から見上げて小首を傾げる。こうすると、みんなミーナの言う事を聞いてくれるの!



 けれど、アルは困ったように笑うだけで、信じられない事を言い出したの。




「…ごめんね…それは難しいかな。今日は別の子と約束しているんだ。


 実は、ミーナ嬢が来ない間に、ミーナ嬢の言っていた【自由恋愛】の考え方を、ようやく理解出来たんだ。


 それで、彼女と親しくなれた…。


 だから、感謝しているんだ。ありがとうミーナ嬢。


 彼女と今日は約束しているし…その……彼女が大切だからさ、君とは一緒に食べれないんだ…ごめんね?」



 そう言って、アルは優しくて格好良い笑顔を浮かべて、ちょっと照れたように顔を赤らめた。





「………え?」


 アルは何を言っているの?





「俺もだ!ミーナ嬢!ありがとう」


「僕もです!ありがとうございます!」


「私も今までミーナ嬢の言う事を、わかっておりませんでした!ありがとうございます!」


「僕も!自由恋愛って良いな!ありがとう!」


「俺も!…」


「僕も!…」




 …そうやってみんなに、【自由恋愛】がわかったって、次々にお礼を言われちゃった…。



 なんで?



 自由恋愛は楽しくて、みんなが幸せになれる、魔法なのに…。



 それをみんなにわかって欲しくて、ミーナは頑張ってたのに…。



 ミーナの考えを、みんながわかってくれて、嬉しいはずなのに…。



 なんでミーナはこんなに、嬉しくないんだろう…。



 アルも言いたい事が言えたからか、自らの席に戻ってしまった。



 アルの席の向かい側には、綺麗な女の子が座っていた。よく見ると彼女のアクセサリーはアルと一緒だった…。



 それに、アル凄く嬉しそう…。



 あの格好よくて素敵な顔は、今までミーナの物だったのに…。



 自由恋愛は、早い者勝ちなのに…どうして?



 疑問は浮かぶけれど、答えてくれる人は居なくって、ミーナの中に怖い気持ちが湧いてきたの。



 この気持ちを、どうしたら良いのかわからなくて…。



 ミーナは堪らなくなって、展望テラスから逃げ出しちゃった…。



▼△▼



 ミーナは走って走って走って、1人になれるところまで行って、それで……わんわん大泣きをしたの。



 どうしてー!なんでー!とか、泣きながら、いっぱい叫んじゃった…。



 だけど、答えなんか返ってこないし、答えが思い浮かぶこともなかったの…。




 そんなことをしていたら、何だかミーナ辛くなっちゃったから、その日はそのまま帰って、いっぱい寝たの。




 でもでもそれでね、いっぱい寝たら、ミーナにはジークもアレクもイリスも居ることを思い出したんだ!



 だから、昨日はほんのちょっぴり寂しくなっちゃったけど、ミーナにはみんながいる!



 それに、もうちょっとしたら、夏休みが始まる!夏休み楽しみぃー!みんなと一緒に色んなところに行こー!アレクとジークとイリスとミーナで!




 良いんだもん!早い者勝ちだもん!3人のことは、ミーナ絶対に渡さないもんね!

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