第35話 前向き不屈デコイ。



 サイド : 愚かなデコイ・ミーナ





 明日から、夏休みぃー!と思って浮かれていたら、今日はアカデミー主催のデイ・パーティーがあるらしかった。



 だから、みんないつもより綺麗で、ピカピカしていたのかぁ…。


 ミーナ知らなかったから、いつもと一緒だよぉ…。


 うー。恥ずかしいよぉ…。



 ステラが居ないから、また恥かいちゃった…。

 もー!ステラのバカ!早く戻って来てよぉ!!

 


 ミーナは1人じゃ、何にもできないよぉ!!うぇーん!!


 

 …でも、パーティーなら、みんな居て楽しいかも…。



 それに、ミーナが楽しくなくて、みんなだけ楽しいとか、ずるーい!



 ミーナだって、絶対に楽しんでやるんだから!!



 場所もわかんないけど、みんなが移動し始めたら、ミーナも後ろからついて行こーっと!



 そう決めて、みんなの移動を待った。



 みんなはまるで大人みたいに、男女で仲良く腕を組んで歩いて行った。


 なんだか貴族みたいで変なのー!って、思ったけど、話しかける人も居ないから、ミーナは大人しく、黙ってついて行ったの。



 1人で喋ってるとおかしい子なのは、ミーナも知ってるもんねぇー!




▼△▼



 たどり着いた会場では、みんな、笑顔でキラキラしてて、とっても楽しそうだった。

 


 ミーナもテンションが上がる!



 キラキラで!いつもと違って!なんだか楽しぃー!




▼△▼



 夏休みに入ると、みんなとしばらく会えなくなっちゃうから、みんなとお話ししておきたいなぁー!と思って、ミーナはみんなの姿を探したの。



 けど、みんな、こないだのアルと一緒で、女の子と腕を組んだり、踊ったりして、楽しそうに過ごしていた…。



 みんな、みんな、ミーナのだったのに…。



 …そんな事を思ってたら、またミーナの怖い心が出て来ちゃった…。



 ダメだぞミーナ!今日は楽しく過ごさなきゃ!




 ………そうだ!イリス!




 ジークとアレクは居なくても、イリスは居るはず!ミーナったら、天才かもっ!!


 それに、優しくて綺麗なイリスなら、ミーナと一緒に楽しんでくれるはず!!!


 だから会場で、キョロキョロとイリスの姿を探したの。




▼△▼



 …見つけた!イリスだ!




「いたー!イリスー!ミーナ寂しかったよぉー!」


 イリスを見つけられた事が嬉しくて、一目散に駆け寄ったの。




 すると、何かに引っ掛かって、転んでしまった。


 クスクスと意地悪な笑い声が聞こえてくる。


 痛くて、恥ずかしくて、悲しくて、涙が出る。




「…大丈夫かい?ミーナ嬢?」


 そう言ってイリスが、見た目よりも力強く、ミーナを立ち上がらせてくれたの。




「ふぇえ!イリスぅー!痛かったよぉー!撫で撫でしてー!」


 と、ミーナはイリスにおねだりをした。



 すると、イリスは少しだけ困ったような顔をしてから、綺麗な笑顔を浮かべて、撫でてくれようとした。



 イリスってば、やっぱり最高ー!ミーナだーい好き!




「…イリス?」



 イリスがミーナを撫でてくれる直前で、イリスの事を呼ぶ声がした。


 声がした方を見ると、お人形さんみたいに、綺麗な女の子が立っていた。





「…お知り合い?」

 と、お人形さんの女の子はイリスに聞いてた。




「…あぁ。そうだよ。知り合いの…後輩だ」

 イリスは答えた。



 ミーナは勝った!ミーナはイリスの後輩さんだもんねぇー!イリスに紹介して貰っちゃったもんねー!


 けど、女の子は綺麗に笑って、ミーナを見ていた。




「可愛い子ね。…仲良しさんなのね?」

 

 そうだよ!イリスとミーナは仲良しなんだもんねぇー!早い者勝ちだから、イリスはミーナのなの!


 だから、この子にも渡さないもんねぇー!


 そう思って、ミーナは得意げな顔をして、お人形さんみたいな綺麗な女の子の方を見た。




「…まぁ。…イリス、約束は守ってよね?」


 お人形さんの女の子は、何だか驚いてるみたいだった。


 約束ってなんだろー?




「…ああ。わかっているさ。


 …ミーナ嬢、少し良いかな?聞きたい事があるんだ」




「うん!良いよぉー!」


 イリスはミーナを選んだ!


 ミーナは嬉しくて、再度あの女の子の方を見た。




 すると、女の子はミーナを見た後、すぐに下を向いて、悔しそうに肩を震わせていた。


 ミーナは女の子のそんな姿を見て、嬉しくて堪らなかった。



 ミーナは勝ったんだ!わーい!



 けど、そんな事を考えていたら、イリスと距離が離れてしまったから、慌てて駆け寄った。


 それでミーナは、イリスと2人で中庭に出たの。




▼△▼




「イリス!なーにぃ?ミーナに何のお話しかな?」



「…あぁ。ミーナ嬢に聞きたいことがあるんだ。…今日はマーテル男爵夫妻は、家に居る予定なのかな?」



 イリスがなんで、パパとママのこと聞いてくるんだろー?


 なんでだろー?わかんないやー!


 けど、知りたいんだったら、教えてあげよー!



「うん!いるよぉー!」



「…そうか、ありがとう。それが知りたかったんだ」



「お話し終わり?じゃあー!イリスー!ミーナとパーティー楽しもうっ!ミーナ寂しかったのぉー!」



 すると、イリスはまた困ったように、綺麗に笑った。



「すまないミーナ嬢。今日は先約があるんだ、だからそろそろ戻らないと…」




「…え?」




 イリスは約束があると言った。 


 さっきの女の子は約束は守れと言っていた。


 だから、イリスとあの女の子は約束していて、一緒に楽しむんだ!!!



 イリスもミーナじゃない人を選ぶんだ!!

 


 そんなのって!そんなのって!!



 ミーナやだぁああああ!!!!



「そんなっ!!!どうしてぇ!!!ミーナがこんなに頼んでるのにっ!!どうしてぇーー!!みんなも、みんなも、なんでなのおぉお!!!」



「もうやだよぉー!!!イリスのバカっ!!!」



▼△▼



 ミーナは涙が止まらなくて、鼻水とかいっぱい出たけれど、気にせずに全力で走って会場を後にした。




 だけど、優しいイリスは来てくれなかった…。



 

 …ミーナの足…早すぎたかな?




 涙が止まったら、もう1回会場に戻ろうかとも思ったけど、これ以上、悲しくて嫌な思いはしたくなくて、大人しくお家に帰る事にした。



 なんで色んな事が、上手くいかなくなっちゃったんだろう…。



 …ミーナ悲しいよぉ。ふぇえーん!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る