第32話 首謀者は招待される。※


※軽微な乱暴表現あり。ご注意ください。


また、呼称が統一されていませんが、誤字ではなく仕様です。よろしくお願い致します。



…………………………………………………………………



 サイド: リリアナ・セラーズ侯爵令嬢





 アカデミーから帰ると、お父様に呼び出された。



「なに?お父様、お母様もどうしたの?」


「…黙って着いてきなさい」

 そう言ってお父様は、お母様の肩を抱きながら、歩き出す。


「嫌よ!何なの!?いきなり?おかしいよ!?」


「…」

 お母様は何も言わなかった。


「…黙りなさい!!!」

 初めてお父様に怒られた…。



 男の人に怒鳴られた事なんかなくて、怖くて震えが止まらない。


 それに、何で私が…侯爵令嬢の私が、こんな扱いを受けるのか、全くわからなくて、悔しくて涙が出る。


 けれど、お父様は泣いている私を無視して、乱暴に腕を掴み、馬車へと押し込まれる。



 怖い怖い怖い



 それに、私がこんなにたくさん泣いているのに、なんでお母様は目を逸らすばかりなの?


 なんで?どうして?…答えを貰えない疑問ばかりが、頭の中に浮かんでは消える…。


 馬車の中には、当て付けの為に泣き続けた、私の啜り泣く声だけが響いていた。




▼△▼




 しばらくすると、馬車は知らない邸宅に着いた…。


 今まで1度も行ったことがない…。


 けれど、とても大きくて、とても壮大な邸宅だった。


 ここはどこ?何で私は…ここに連れて来られたの?


 お父様もお母様も、何も教えてくれない…。



 どうする事も出来なくて、2人の後ろを、拗ねたように俯きながら着いていく。涙は既に止まっていた。



▼△▼



「ようこそお越しくださいました。…皆様お待ちですよ?」



 声をかけてきた高貴そうな夫人は、年齢不詳で恐怖を覚えるほど美しい女性だった。



 けれど、やはり記憶にない…。


 もしかしたら、違う派閥の方なのかしら…?


 そして、夫人に誘導されて、広間へと通される。





 すると、怖い顔をした大人達がたくさん居た。



 私は怖くて震えた。



 助けて欲しくて、パパとママに縋ろうとした。



 けれど、パパとママは、信じられない事に、その場に座り込んで懇願をした。



「私達はどうなっても構いませんっ!!どうかっ!この子の命だけは!お助けくださいっ!!」



「どうか、何卒!よろしくお願い致しますっ!!!許されない事をしてしまいましたが、それでも、それでも大事な娘なのですっ!!!」


 と、叫ぶように、絞り出すように、声を出していた。



 なんで?どうして?意味がわからなかった。




「まぁまぁ!お顔を上げてくださいませ!


 そのような事をされては、まるで私達が虐めているようでは、ございませんか。


 お立ちくださいませ。


 確かに、ここにいる方々は、そちらのお嬢様から、愛する息子に毒を盛られた被害者達ですけれど…。


 セラーズ侯爵と夫人には、何もされておりませんわ。


 …だから、さぁお立ちになって?」




 美しい夫人の言葉で、状況がハッキリと分かった。


 これは私の為の舞台なのだと。




 パパとママは泣いていた。


 美しい夫人は、お父様とお母様を使用人に補助させて立ち上がらせる。





 そして、ゆっくりと私の方を向いた。



「さて、お嬢さん。今日は来てくれてありがとう。

 貴女にお話しのある方々を、集めてみましたの。楽しんで貰えると嬉しいわ」



 美しい女性は、もはや恐ろしい魔女にしか見えなくなっていた。


 

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