第31話 2人目の獲物・首謀者。
2人目の獲物・首謀者。
第一王子派・婚約者候補筆頭。
リリアナ・セラーズ侯爵令嬢。
私はリリアナ・セラーズ。
王国の大貴族である、セラーズ侯爵家の1人娘。
1人娘の私は、パパとママから、目に入れても痛くないくらい、愛されている…。
『リリはパパとママの1番大切な宝物だよ』と、小さい頃から言い聞かされて、とっても甘やかな環境で育てられた。
私が欲しいものは、いつだって、なんだって、パパとママが手に入れてくれた。
手に入らないものは無かった。
そんな私は、パパとママに連れられて行った王宮で、とても綺麗な王子様(アレクシス)に会った。王子様はとても素敵で、キラキラして見えて、凄く欲しくなった。
だから、いつものようにパパとママにお願いして、王子様を手に入れようとした。
そうして私は、王子様の婚約者候補になった。
今はまだ候補者だけれど、他のどの候補者を見ても、私より優れた子は見当たらなかった。
だから、私が王妃様になる事は、約束されているようなものだった。
けれど、王子様には、弟の王子様が居た。
成長して、色々な事がわかってくると、
私が好きな王子様より、弟王子様(ジーク)の方が、母親の血筋的に、王様になれる可能性が高いのだと知った。
そんな状況で、私の好きな王子様(アレクシス)は、いつも困った様に笑っていた。
その表情を見て、私はわかってしまった。
王子様は王様になりたいのだと…。
だから私は、彼の為に頑張る事にした。
そうすれば、きっと彼も私の事を、世界で1番愛して、世界で1番幸せなお妃様にしてくれるはず…。
だから、私は邪魔な弟王子を、退治する事にした。
最初は殺そうかと思った。
けれど、護衛はいるし、毒見はいるし、上手くいくとは思えなかった。
だから、どうしたら良いのか必死に考えた。
王子様と結ばれるために、私が出来る事を必死に考えた。
考えて考えて考えて考えて…
私は思いついた。
弟王子様(ジーク)に欠点を作って、王様にはなれないようにしようと。
だから、まずは身分の低い女と結婚させようと考えた。
私の好きな王子様が、弟王子様に劣っているのは、母親の身分だけだった。
だから、同じ欠点を背負わせてやろうと考えた。
けれど、それも、上手くいかないと思えた。
相手は王族だ。普通と違って、結婚するのではなく、側妃や愛妾として、囲む方法がある。
それに、たとえ成功したとしても、"火遊び"として、片付けられてしまう可能性の方が高いと思えた。
だから、何かもっと…、もっと致命的な欠点を作る必要があった…。
だから、女と同時に、毒を盛ることを思いついた。
正常な判断が出来ない王子など、王と認められるはずがない。
とても良い作戦に思えた。
だから、実行した。
彼の為なら、私は何だって出来た。
そして、それは、私が想像していたよりも、遥かに上手くいった。
男爵令嬢(ミーナ)は頭が悪すぎて、指示が出来る訳でも、嘘を吐かせる事も出来ないけれど、頭が悪いからなのか、言う事だけは素直に聞いた。
だから、男爵令嬢を誘導する女(ステラ)を付けた。
女(ステラ)は小柄で気弱で大人しそうな印象だった。
そんな女の、致命的欠点を手玉に取り、脅して、直接的に男爵令嬢の誘導をさせた。
結果、弟王子は男爵令嬢に骨抜きになった。
そして、毒を盛る事も上手くいった。
毒見も、上手く掻い潜った。
「ミーナの手作りなのに、毒見なんて酷い!」という謎の主張が、受け入れられたらしい。
念の為、最初はただの菓子にしていたのだが、それからは継続的に毒を盛れた。
けれど、それだけでは安心できなくて、念には念を入れて、毒味役も切り替えさせた。
我ながら、本当に良い働きをする令嬢達を、差し向けられたものだ…。
…一体、誰の紹介だったかしら?
…それに、私は本当に、こんな事を考えたのかしら…?
……よくわからないわ。頭が痛い。
…よくわからないけれど、すでに行動して、結果も出ているのだから、無理してまで考える必要もないわ…きっと。
だから、話を戻すとしましょう…。
脅迫して付けたその女(ステラ)は、優秀だった。
言葉が通じない男爵令嬢を巧みに操り、誘導し、弟王子に毒を盛りつづけた。
男爵令嬢の気が多いせいで、第二王子殿下の派閥の男性達にも、薬物を盛る羽目になったけれど、そんな事は些細な…誤差だ。
それに第二王子だけで無く、未来の側近候補達も薬物漬けなんて、派閥ごと潰せるかもしれない。良い事しかない。
全てが上手くいっていた。
彼の為に、アレクシス殿下の為に、ここまで頑張ったのだから、私はこの功績を讃えられて、アレクシス殿下の婚約者になれるだろう。
そして、将来は、彼に並び立つ王妃になる。
彼の為にここまで尽くした私の事を、優しい彼はきっと、心の底からこれ以上はないくらいに、私のことを愛してくれるだろう。
そして、私は、彼の愛を一身に受けて、世界一幸せになる…。
そう思っていた。
なのに、なのに…あの女(ステラ)は…奴は失敗した。
それどころか、私が愛する彼(アレクシス)を害するという、万死に値する行いをした。
…だから、始末する予定だった。
奴を消せば、私に結びつく証拠は、全て消せる。
その筈だった…。
人を消すのには、時間がかかる。
事態が発覚してから直ぐに、準備を開始して、手配をしている最中だった…。
でも、誰かに先を越されてしまった。
人の口に戸は立てられない…。
奴(ステラ)が口を割るかどうかは、わからないが、脅迫していたのだ。期待は出来ないだろう…。
けれど、証拠は1つも残していない。
それに、私は何もしていない。
全て奴(ステラ)が、勝手にした事だ。
…だから絶対に大丈夫。と、自分に言い聞かせる。
そして、優雅で美しいと褒められる笑みを、顔に貼り付けて、不安な心中をひた隠す…。
我が家は侯爵家。私は侯爵令嬢。
例え、いくらか怪しまれたとしても、証拠もなしに訴えられるような身分ではない。
そんな事は、あり得ないのだ。
ふと視界に入った私の手は、昨日までと同じように、一点の曇りもなく美しいままであった。
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