第29話 実行犯は夢を見る。※
※注意※
・暴力表現、過酷な表現あり。胸糞注意です。
・苦手な方は読まなくても、話は繋がりますので、飛ばしてください。
よろしくお願い致します。
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サイド : 実行犯・ステラ
…夢を見ていた。
…碌でもない私の、碌でもない夢だった。
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私は、準男爵家の四女として生まれた。
意識が芽生えて最初の記憶は…
大人の力で容赦なく叩かれ、吹き飛びながら聞いた「何で生まれてきたのよっ!!!」と狂ったように泣き叫ぶ、母の声だった。
私は他の兄弟達とは、持って生まれた色が違う。
私だけ、髪の色や目の色が…少しだけ違っていた。
私だけが、虐げられて過ごしてきた。
小さい頃は、何が原因なのかわからなかった。
母を殴る父。
私を殴る母。
見て見ぬ振りをする兄弟達。
碌でもない環境だった。
けれど、成長した私は理解した。
他でも無い私自身が、この碌でもない全ての事の…原因なのだと。
私が育てば育つ程、本当の父の面影が滲み出て来ているようで、私への扱いはどんどん過酷なものになっていった。
成長して外に出る機会が増えてからは、服に隠れない所への暴行はなくなった。
その代わりに…、とでも言うように、私は金持ちな庶民や貴族達に、物のように貸し出されるようになった。
通常、貴族の令嬢は、結婚時に貞操が重視される…。
だけど、私の為に持参金を出す気など、欠片もない両親は、私を物のように貸出す事で、碌でも無い金儲けをし始めた。
結果私は、令嬢としての価値を失った…。
私の人生は、本当に碌でもないことばかりだった。
親は、私が生まれてくる事を望まなかった。
私だって、生まれてなんて、来たく無かった。
けれど、私にはどうする事も出来なくて、言われるがままに、碌でもない両親の、碌でもない金儲けの道具になり続けた。
望まないのなら、親に逆らい、拒絶すれば良かったのかもしれない…。
けれど、幼い頃から身に刻み続けられた痛みと恐怖は…。
いつだって、私の身体を動かなくする。
身体の傷は時間が経てば治癒し、いずれはなくなる。
でも、暴力で受けた恐怖や痛みは、心や思考の中に、少しも色褪せぬ深刻な傷として、残り続ける。
考えただけで、震え、怯え、泣き叫びたくなるものの、それを態度に出せば、もっと酷く殴られる事を知っている。
ただでさえ、生きる事に希望を見出せない弱い私に、身と心に刻まれたとてつもない恐怖は、到底乗り越えられる物では無かった。
…言い訳だと言われてしまえば、…そうなのかもしれない。
それでも、私には抗えなかった…。
けれど、そんな事を続けていたら、私のして来た碌でもない事が、同じアカデミーに通う侯爵令嬢にバレてしまった。
どんなキッカケで、何故バレてしまったのかは、わからない。
けれど、こんな事を続けていては、バレない筈がなかったのだ…。
その侯爵令嬢は、人生で一度も苦労をした事がないような、綺麗な手をしていた。
そして、穏やかな笑みを浮かべながら、残酷な現実を突き付けて、私を追い詰め、脅迫をした。
私には、従う他に選択肢が無かった。
…振り返れば、私の碌でもない人生には、碌でもないイベントしか用意されていなかった。
こんなに碌でもない私の最期には、きっと碌でもない死に方しか、用意されてはいないのだろう…。
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