第26話 計画の終幕。 ○アリス&イリス▼



週末

ベルトハイド公爵邸・お茶会・終幕

アリス&イリス


 

 しばらくすると、拍手と歓声が聞こえてきた。


 どうやら、最初のチームが、謎を解き終えたらしい。


 その後も、次々と他のチームも謎を解き終えて、自らの席に戻り、雑談に花を咲かせていた。


 全てのグループが謎を解き終えた所で、最後に謎を解き終えたグループに、皆で拍手を送りあった。



 その良きタイミングで、アリスが声を掛ける。



「皆様、お疲れ様でした。お楽しみ頂けたでしょうか?」


 問いかけると、各テーブルから、歓声が上がり、拍手が送られた。…どうやら楽しんで頂けたらしい。


「…良かったですわ。

 お楽しみ頂き、ありがとうございます。


 これから、結果発表をさせて頂きますが、皆様お疲れかと思います。


 まずは、スイーツや軽食と、お飲み物をご堪能くださいませ」



 そうやって、参加者達にスイーツを振る舞っている時間を利用して、結果を把握し、景品を用意するフリをする。



 結果はどうでも良かったが、大事なのは景品だ。




▼△▼



 この景品に、茶会においてベルトハイドが施した、最後の仕掛けがあった。



 イリスが優勝したチームを読み上げて、景品を授与する。



 優勝チームへの景品は、普段使いには向かない、色のついていないダイヤモンドを使用した。


 男性にはカフスを、女性にはピアスを用意した。


 それぞれが景品を受け取ると、目を輝かせて喜んでいた。


 これらは、王都一の工房で作らせた一級品で、並の貴族では到底手が届かない代物だ。 



 だから、皆が喜ぶのは当然だった。



 また、参加してくれた事への感謝を示すと称し、参加賞も用意した。大事なのはこちらの方だ。



 参加賞では、男性にはタイピン(クラバットピン)を、女性には髪留めを用意した。


 これらは、すべて同じデザインのものだ。こちらも言わずもがな、センスの光る高級品だ。



 だが、もっとも大切な事は、参加賞であるその品が、今日参加した"チームを示す色"を、含んでいる事であった。



 ここに、ベルトハイドの最後の仕掛けがあった。



 今回、チームごとに割り振った色は、無作為に見えて、そのチームに居る男性の、髪の色や瞳の色を取り入れ、チームの色に採用していた。



 これにより、一体何が起こるのかというと、チームごとの色彩の入った景品(そうしょくひん)を身に付けることで、女性陣は男性陣の持つ色を、自然に纏うことが出来るのだ。



 そして、この国で異性の色を纏う行為は、その異性に好意がある事を示す、俗説的な風習がある。



 だから、この参加賞は、ただの参加賞では終わらない。



 「チームの色だから…」「高価な品だから…」「流行のデザインだから…」と、様々な言い訳を用意しながら、相手の色を自然に纏うことを、可能としているのだ。



 そんな些細な仕掛けが施されている。



 初めから男を堕とす目的を持った令嬢達は、その隠された意図に気が付けば、嬉々として身につけるだろう。



 また、令息達も、密かに気になる令嬢と、同じデザインの品を着けられるとあれば、景品だからと言い訳をしながらでも、着けるだろうと予測している。



 彼等がどんな事を考えようが、興味はない。



 けれど、お揃いの品をつけた男女が並び立てば、他者から見れば相思相愛の男女に見える。



 そして、令息達が自身の色を纏った令嬢達を見たときに、希望的な推察や勘違いが起こり、感情を惑わすような化学変化を、起こす事が出来るかもしれない。



 そんな状況が、作れたのなら面白い。



▼△▼



 考えて、仕組まれて、計算されて、用意されたお茶会であったが、令嬢達も令息達も、豪華な景品と楽しい時間を過ごせた事で、ベルトハイドに感謝を示した。



 そして、本日仲間として共に戦ったチーム同士で、お揃いの品をつけられる事を、素直に喜んでいた。


 

 この参加賞を配れた事により、アリスのお楽しみ計画は無事終了し、本計画の種蒔きも、全ての行程を網羅し、無事に終了した。



 後は、どんな結果を齎すのか、楽しみに待つだけだ。




 王位奪取計画・第三段階・種蒔き。

・ベルトハイドの悪意の種蒔き完了。

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