第22話 アリスのお楽しみ計画。▼イリス▼



第3段階終了から2週間後

アカデミー・展望テラス

イリス



 ミーナ嬢をアレクシス殿下に紹介してから、2週間が経った。



 アカデミーの状況は変化し、混沌としている。



 そんな中、ベルトハイドの面々は、今までにない程、穏やかな日常を送っていた。



 そう…装っていた。



 実際はその裏で、今まで分かった事実を元に、捜査をし、追跡し、金をふんだんに使い、事件の全貌を明らかにしていた…。



 だから、見せかけの穏やかな日常と、晴れやかな笑顔の裏で、計画は大詰めを迎えている。



 ベルトハイドが描いた結末は、既にそう遠くない所まできている。



 だけどまずは、可愛くて、生意気で、憎らしい妹(アリス)のやってみたい事…アリスのお楽しみ計画に協力をする。




 今日はその為に、展望テラスへと来ているのだ。



 そこへは、2週間が経ったことで、徐々にミーナ嬢に毒を盛られた令息達が、依存状態から復活してアカデミーへと戻ってきていた。



 治癒のポーションは、効果的だったようだ…。



 しかし、愚かにも、戻ってきた令息達は、毒…薬物依存から抜け出せたにも関わらず、未だに未練がましくミーナ嬢を待ち続けていた。




 彼等は薬物と同時に、ミーナ嬢にも依存していたらしい…。



 その証拠に、彼等は今、菓子には一切執着して居ない。


 ただただ、彼女と会えない時間が耐え難い様子だった。



 彼等の中で菓子は、ミーナ嬢の手作りの愛情…とでも、位置付いて居たのだろうか…?


 

 何にせよ、理解は出来ない…。



 そんな中、ミーナ嬢はというと、アレクシス殿下に夢中なようで、ジークの居ない展望テラスには、全く顔を出していなかった。



 一応、令息達がこれ以上、菓子を口にしないように、菓子は未然に回収をしている。



 それに、当事者のミーナ嬢も菓子の行方には、欠片も興味が無い様子なので、問題なく計画は進んでいる。



 ミーナ嬢の菓子には、小さな変化が生まれているのだが…今は目の前の、アリスのお楽しみ計画に集中しよう。




▼△▼




 展望テラスで食事をしながら、令息達の会話に意識を向ける。



 どうやら、自分達に振り向いてくれないミーナ嬢の事を、皆で責めたてているらしい…。



 なんと惨めなのだろうか。



 捨てられた男達が、揃いも揃って遠吠えをしているのだ…。



 同じ男として、極めて恥ずかしく、なんとも居た堪れない…。



 彼等には心底呆れるが、アリスのお楽しみ計画においては、この状況はむしろ好都合だった。



 席を立ち、彼等に近づいて先手を打つ。



「君達…恥ずかしくないのか?…見ているこちらが恥ずかしいから、そろそろやめてくれないかな?」


 と、声をかける。



 いきなり向けた敵意には、すぐさま反発を返される。



「あぁ?何様のつもりだ!?」

「…身分が上だからって、何でも許されるわけじゃありませんよ?」

「…そうです!酷いです!」



 等と、口々に騒いでいる。



「…君達、ミーナ嬢がここに来ない事や、自分達を相手にしない事を理由に、彼女を責めているようだけど…


 好きだ好きだと言う割には、本当に彼女の事を、理解していないんだな…?」


 と、さらに煽る。



 すると再び、男達が不満を吠え出す。



「俺らはミーナの事を1番知っている!」

「そうです!知ったような口、利かないでください!」

「わかっていないのは、そっちだろ!」



 と、ギャーギャーと喚く喚く…。



 皆、薬物の依存状態から抜け出して、本当に元気に回復しているようだ。…全くもって喜ばしい。



 そんな事を考えながら、引き続き、煽り続ける。



「ミーナ嬢は最初から言ってたじゃないか、【自由恋愛】をしていると。


 彼女は現在に至るまでずっと、自身の考える【自由恋愛】を楽しんでいるだけだ。


 彼女を思い続けるのは勝手だが、彼女の事を理解して、その上で、勝手に思いを寄せ続けるのなら、好きにすれば良い。


 だが、彼女に振り向いて貰えないからと言って、自分の信念を貫いているだけのミーナ嬢を、寄って集って責め立てる事は…


 紳士の風上にも置けない、恥ずべき行為だと、自覚した方が良い」




 それを聞いて、怒りが頂点に達したのか、1人の令息に胸ぐらを掴まれる。



 だが、掴んだ瞬間から、理性では不味いと悟ったのか、怒りに満ちた視線には戸惑いが生じ、掴んでいる力は弱まった。



 静かに溜息を付き、冷静にその手を外して、これ見よがしに、乱された服装を整える。



 そして、相手の目を正面から見返して、笑みを浮かべながら彼等に伝える。




「…どうやら、口で言った所で、理解しては貰えないようだね…。


 …仕方がないから、皆を招待しよう。


 自分こそは、ミーナ嬢を本当の意味で理解している。と思う者は、是非とも参加して欲しい…。


 彼女の見ている世界を…体験させてあげよう」




 そう吐き捨てて、展望テラスを後にする。




 これで計画の参加者は確保出来た。


 ここまで煽れば、彼等は参加せざるを得ないはずだ。




 王位奪取計画・第三段階・種蒔き。

・イリスが令息達を招待する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る