第15話 王妃様にお会いしに行く。○アリス視点○



計画調整・数日後

王宮・王妃宮

ベルトハイド公爵・アリス。



 お父様と、王妃殿下へ謁見する。


 この数日で、調べ事が進んだり、計画を立て準備をしていた。


 お父様とは、後から合流する事になっているので、私だけ先に、王妃様とお会いしていた。



「よく来たわね。アリス」


「ご無沙汰しておりまして、申し訳御座いません。王妃殿下」


「堅苦しいのは良いわ。…それにしても、貴女…ベルトハイドらしく育ってきたわね…」


「ええ。伯母様。生まれてからずっと、ベルトハイドで育ちましたから」



「まぁ…。…本当に…嫌になるわね。


 イリスと一緒に『おばたま』と呼んでくれてた時は、あんなに可愛かったのに…。


 血なのね…」




「よく見てくださいませ、伯母様?


 今でもとっても可愛い筈ですわ。


 それに私、成長期でしてよ?

 まだまだ変わりますので、楽しみにしていてくださいませ?」




「…本当に嫌だわ。…それで?可愛い私のアリスは、今日は何をしに来てくれたのかしら?」




「表向きの訪問目的は、ジーク殿下の婚約者候補としてのご挨拶ですわ。


 けれど、それは必要ないかと思いますので、今日は伯母様に『私のジーク殿下への気持ち』を、お話しする為に参りましたの」




「…まぁ」




「ですので伯母様。あの…私も恥ずかしいので…人払いして頂けますか?」



 そう言って年頃のウブな女の子の様に、顔を赤らめて、上目遣いでおねだりした。


 部屋に居た使用人達が、アリスの可憐な様子に、思わず顔を赤らめる。




「…あらあら。そう言う事なら、仕方ないわね?

 皆下がって良いわ。ベルトハイド相手なら、何も起こらないわ。安心して休憩でもしてきなさい」



 王妃殿下は人払いをしてくれた。



 これで、ドア越し、少し遠くに配置された護衛を除いて、全ての使用人が席を外した。



「それで?ジークに対して、どう思っているのかしら?」


 王妃様は、酷く楽しそうに、揶揄って聞いてくる。



「ジーク殿下に対しては、素敵なお兄さま(従兄弟)だと思っておりますわ。それ以下でも、それ以上でもございませんわ」



「そう。…まぁ、そうよね」



「ええ。伯母様。今日参りましたのは、直接お話ししたかったからですわ。


 書面には残せませんでした。


 …事態は残念ながら、よろしくありません。

 ですので、早急に本題に入らせて頂きます。 


 どうか冷静な態度を、お保ち頂きますよう。お願い申し上げます」




「…」

 王妃様がアリスの言葉に、スッと目を細める。




 そして、アリスは、王妃様にこれまで起こった出来事を、申し伝える。



 ジーク殿下が、男爵令嬢から薬物(毒)を盛られている事。


 ジーク殿下の症状が、芳しく無い事。


 第二王子派閥の他の令息達にも、同様の被害が出ている事。


 この3点をお伝えする。

 


 話し終えた後で、王妃様から厳しい視線を向けられる。




「…これで落ち着けとは、…随分と酷な事を言うのね?」



「ええ。伯母様。お願い致しますわ」



「…今すぐその女を、この手で捻り殺してやりたいのだけれど…、それも分かっていて落ち着けと、言っているのでしょう。ねぇ?」



「ええ。その通りですわ伯母様。けれど、ご安心くださいませ。既に薬物の効果を特定して、治療用のポーションも用意しておりますわ。


 そして父がいま、ジーク殿下に栄養剤として、治癒ポーションを飲ませるように、手配しております。


 毒味役も、信頼出来る者を選抜しております。ですので、後程、現在の毒味役の処理と共に、ご検討くださいませ…」



「はぁ…。どうして、こんな事に……。それで?誰の仕業なの?」



「それは、まだ判明しておりません。…けれど、実行犯と計画犯は別である可能性が高い。とは、考えております…」



 そこまで話した所で、お父様が遅ればせながら到着する。



 ここから先は、選手交代だ。



「…それでは伯母様。父も参りましたし、私はこの辺で、御前を失礼しようかと思います。…久しぶりにお会い出来て、嬉しかったですわ」



「…あら。そうなの?」



「ええ。アリスにはこの後、違う事を頼んでいるのですよ。


 詳細についてもご説明致しますので、まずは、退室させてくださいませ」


 と、お父様が援護する。



「わかったわ。…アリス、また会いましょ?」



「ええ。伯母様。では、失礼致します」




 王位奪取計画・第三段階・種蒔き

・ジーク殿下の治療&次への布石。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る