第2話 キス
――夜――
お風呂から出たあと、俺は自室に戻ってきた。
俺はベッドの上に寝転んで今日のデートを思い出す。
今日、俺はマッチングアプリで仲良くなった『あすか』さんとデートした。
『あすか』さんの正体は水沢明日香だった。
アイツ、凄く可愛かったなぁ……。
中学時代の水沢は地味だ。はっきり言って可愛くない。
けど、今日の
水沢が可愛すぎて今日はずっとドキドキしてたよ。
「水沢か……」
中学生の頃、俺には好きな人がいた。その子の名前は
そう、中学時代の俺は
本当は水沢と恋人になりたかったけど、彼女にフラれるのが怖くて告白できなかった。
結局、水沢に告白できないまま俺は中学校を卒業した。
俺たちは高校が違ったので、簡単に水沢と会えなくなった。
もう一生水沢と会うことはないんだろうなと思っていたけど、今日俺たちは再会した。
マッチングアプリで仲良くなった女の子が水沢だったなんて……。
今でも驚きを隠せなかった。
俺は今も水沢のこと好きなのかな?
うーん、わからない……。
けど、今日のデートは本当に楽しかったなぁ。
ずっと水沢のことを考えていると、急にプルプルとコール音が鳴る。
水沢が電話してきたのだ。
ん? なんだろう?
とりあえず、俺は電話に出た。
「もしもし、水沢か……?」
『うんっ、そうだよっ』
スマホのスピーカーから水沢の声が聞こえてきた。
彼女の声が耳に伝わってきた瞬間、ドキッとしてしまう。
おいおい、なんで俺はドキドキしてんだよ。
やっぱり、まだ俺はコイツのこと好きなのかな……?
『今日のデート楽しかったね』
「え? あっ、うん、そうだな」
今日のデートは本当に楽しかった。
楽しすぎて時間があっという間に過ぎていった。
また水沢と遊びたいなぁ。
俺から『またデートしようぜ』と誘ってみようかな?
いや、けどそれは恥ずかしいなぁ……。
『ねぇねぇ、坂田くんは来週の日曜日って暇かな?』
「え? 日曜日はバイトもないから暇だけど」
『じゃあさ、アタシの家で遊ばない?』
「み、水沢の家……?」
『うん、ダメかな……?』
「い、いや……別にダメではないけど」
『え!? ほんと!?』
「あ、あぁ、本当だ」
『ふふ、じゃあ日曜日も遊ぼうね♪ 約束だよ?』
「お、おう……分かった」
来週の日曜日、また水沢と遊ぶことになった。
◇◇◇
【水沢明日香 視点】
マッチングアプリで仲良くなった人とデートすることになった。
相手の名前はリュウセイ。
マッチングアプリで仲良くなった人とリアルで会うのはワクワクすると同時に、恐怖を抱いてしまう。
怖い人だったらどうしよう。なんてこと思っているうちに、デートの集合場所に到着した。
デートの集合場所にリュウセイさんはいた。
アタシはリュウセイさんの顔を見た瞬間、心の中で「……ぇ……」と声を漏らしてしまう。
アタシはこの人を知っている。名前は
そう、リュウセイさんの正体は坂田流星くんだったの。
もう坂田くんには会えないと思っていたけど、マッチングアプリで彼と再会できた。
嬉しいっ、凄く嬉しいっ。
久しぶりに坂田くんと遊んだけど、本当に楽しかったなぁ。
やっぱり、アタシは坂田くんのことが好きだ。それが再確認できた。
来週の日曜日も坂田くんと遊ぶことになった。しかも、アタシの家だ。
ど、どどど、どうしようっ……。来週の日曜日、坂田くんがアタシの家に来るよっ……。
あぁぁ……なんか緊張してきたっ。
◇◇◇
【流星 視点】
――日曜日――
今日は13時から水沢とデートだ。
本当は朝から遊びたかったけど、俺は午前の8時から12時までバイトだ。なので、13時から水沢と遊ぶことになったのだ。
バイトが終わったあと、俺は水沢の家に向かう。
水沢の家に行くのは久しぶりだなぁ。なんてこと思っているうちに、彼女の家に到着した。
俺は玄関の前に立ってインタホーンを押す。
しばらくして家の扉が開かれた。出てきたのは水沢だった。
上は半袖のTシャツ。下はショートパンツだった。
ショートパンツから伸びるシミ一つない綺麗な生脚にドキッとしてしまう。
「おはよう、坂田くん♪」
「う、うん、おはよう、水沢……」
俺の顔を見て、水沢はキラキラと目を輝かせる。嬉しそうだった。
この子、本当に可愛いなぁ。
俺は「お邪魔します」と言って家の中に足を踏み入れる。
玄関で靴を脱いで水沢の部屋にやってきた。
彼女の部屋には机、椅子、勉強机、ベッドなどが見受けられた。
ここが水沢の部屋か。中学の頃とあまり変わらないなぁ。
「なぁ水沢。今日っておじさんとおばさんは家にいるのか?」
「ううん、パパもママも仕事でいないよ」
「……」
水沢の返事に俺は沈黙する。
水沢の家族は仕事で家にいないのか。つまり、水沢と二人きりってことだ。
水沢と二人きり……。
俺はゴクリと喉を鳴らす。
やべぇ……なんか緊張してきた。
「ねぇねぇ坂田くん」
「ん? どうした?」
「君って彼女いるの?」
「は?」
水沢の問いに俺は思わず間抜けな声を出してしまう。
「彼女なんかいるわけねぇだろ。つか、彼女いたらマッチングアプリなんかインストールしねぇよ」
「ふふ、そっか、そっか」
水沢は頬を緩ませる。嬉しそうに見えた。
「水沢はどうなんだよ? マッチングアプリで誰かと付き合ったことあるのか?」
「ないない、誰とも付き合ったことないよ。マッチングアプリで仲良くなったの坂田くんだけだしね」
「ふーん」
マッチングアプリで仲良くなったの俺だけなのか。なんか嬉しいなぁ。
俺もマッチングアプリで仲良くなったのは水沢だけだ。
マッチングアプリで水沢以外の女の子とメッセージのやり取りをしたことあるけど、正直に言うと全然楽しくなかった。
けど、水沢とマッチングアプリでメッセージのやり取りをするのは凄く楽しかった。だから、リアルで会ってみたんだ。
突如、水沢が俺の太ももに手を乗せてきた。
可愛い女の子が急にボディタッチをしてきたので、童貞の俺は驚きを隠せなかった。
「ねぇ坂田くんっ」
「は、はい、なんでしょうか……?」
「坂田くんはアタシのことどう思ってる?」
「……」
水沢の問いに俺は黙り込む。
俺は水沢のことどう思っているんだろう? コイツのこと好きなのかな?
「アタシは……坂田くんのこと好きだよ」
「え……?」
俺のことが好き?
おいおい、何言ってんだよっ……。俺のことからかってるのかな?
水沢の表情は真剣だった。
俺のことをからかっているようには見えないんだよなぁ。
本当に水沢は俺のことが好きなのか?
じょ、冗談だろ?
混乱している俺を無視して、水沢は続きの言葉を紡ぐ。
「好きっ、君のことが大好きっ――」
水沢の声は震えていた。緊張しているんだろう。
「――だからその……アタシと付き合ってくださいっ、お願いしますっ」
「……」
告白された。誰に? 水沢に……。
なんだこれ、本当に現実か?
夢みたいだ。
俺はどうなんだろう。水沢のこと好きなのかな?
たぶん、俺もまだ水沢のことが好きだっ。中学の頃からコイツのことが大好きだ。
中学の頃は何回も『水沢に告白しようかな……?』と悩んだ。
結局、水沢にフラれるのが怖くて告白しないまま中学を卒業してしまった。
あのときは『中学の卒業式に水沢に告白すればよかった』と何回も後悔した。
もう後悔したくないっ。だから、
「俺も……水沢のことが好きだっ」
「ぇ……?」
俺の告白に水沢は目を見開く。驚いている様子だった。
「坂田くんもアタシのこと好きなの……?」
「あぁ、そうだよっ……。俺も中学の頃からお前のことが好きだった」
「っ……そっか。アタシたち中学の頃から両想いだったんだね」
「そうみたいだなぁ……」
「坂田くんっ」
「水沢……」
俺たちはゆっくりと顔を近づける。いつの間にか俺たちの唇は重なっていた。
初めて女の子とキスした。
水沢は俺以外の男の子とキスしたことあるのかな……?
何十秒もキスしていた俺たちは唇を離して、乱れた息を整える。
「坂田くんはアタシ以外の女の子とキスしたことある?」
「あるわけないだろ。さっきのが初めてだよっ……」
「えっ!? さっきのキスが初めてだったの!?」
水沢は驚愕に染まった表情を浮かべる。
ん? なんで驚いてるんだ?
「ほ、本当にさっきのキスが初めてなの?」
「ああ、そうだよ……。俺、誰かと付き合ったことないし……」
「そうだったんだ。坂田くん、凄くカッコイイから恋愛経験豊富だと思ってたよ」
「俺が恋愛経験豊富? ぷははっ、そんなわけねぇだろwww」
俺は恋愛経験ゼロの童貞だ。三次元の女の子と付き合ったことはない。
「水沢はどうなんだよ? さっきのがファーストキスなのか?」
「ううん、アタシは違うよ」
水沢の返事に俺は「……ぇ……」と絶望交じりの声を漏らす。
「お、俺以外の男とキスしたことあるの?」
「う、うん……小さい頃パパとキスしたことあるよ」
俺は思わず目を丸くする。
「おいおい、家族はノーカンだろ」
「え? そうなの?」
「そりゃそうだろ。家族含めるんだったら、俺も母さんとキスしたことあるし」
「えぇぇ……坂田くん今もママとキスしてんの?」
「今はキスしてないぞっ!? 小さい頃の話だぞ?」
「なんか怪しい~、実は今も大好きなママとキスしてるんでしょ?」
「だからしてないって言ってるだろ」
「ふふ、そっか、そっか。坂田くんがマザコンじゃなくて安心したよ」
水沢はそう言って俺のことをギュッと抱きしめてくる。
俺も水沢を抱き返した。
部屋に甘い空気が流れる。
「なぁ水沢さん」
「ん? どうしたんだい、坂田くん」
「もう一回キスしていいですか?」
俺がそう言うと、水沢はニヤリと小悪魔のような笑みを浮かべる。
「なになに~、坂田くんはそんなにアタシとキスしたいの?」
「あぁっ、したいよっ。水沢と――大好きな人とキスしたいよっ」
「っ……」
俺が『大好き』と言った途端、水沢の顔は真っ赤になる。顔から湯気が出ていた。
すげぇぇ、顔から湯気出てる。
「いいよっ……アタシも坂田くんとキスしたかったし」
「え? マジで? もう一回キスしていいの?」
「う、うん、いいよ。ほら早くしてっ……」
「マジでキスするぞ? 本当にいいのか?」
「もうっ! いいから早くキスしてよっ!」
「あっ、はい、分かりました……」
俺は水沢の肩を掴んで強引にキスした。すぐに唇を離して水沢に目を向ける。
彼女の顔は蕩けていた。
「もっと……」
「え?」
「もっとチューしてっ。一回じゃ足りないよっ……」
「俺もだっ……」
また俺たちは唇を合わせる。自然と舌を絡め合う。
「ちゅっ、ちゅっ……んっんっんっ、坂田くんっ。ちゅっ♡」
「水沢……」
俺たちは満足するまでキスを続けた。
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