マッチングアプリで昔好きだった人とマッチした
理亜
第1話 マッチングアプリ
アタシ――
人付き合いが苦手なせいで、中学校では友達作りに失敗してしまった。
そう、アタシは中学校でボッチになっちゃったの……。
「昨日のアレ見た?」
「うん、見た見たっ、今週も最高だったよね。特に――」
楽しそうに会話している生徒たちを見て、『羨ましいっ……』と心の中で思ってしまう。
いいなぁ。アタシも友達が欲しいよ。誰かアタシに話しかけてこないかな?
なんてことを思っていると、一人の男子生徒がアタシに話しかけてきた。
「水沢、おはよう」
「……お、おはようございますっ……」
アタシに挨拶してきた男子生徒の名前は
この人、いつもアタシに話しかけてくるんだよね。
なんでアタシみたいな陰キャに話しかけてくるんだろう?
もしかして、アタシのこと好きなのかな?
いや、それはないか。アタシ、ブサイクだし……。
「あっ、そうだ……なぁ水沢、昨日の宿題見せてくれない?」
「え……? べ、別にいいけど……」
アタシは「はい、どうぞ」と言って坂田くんに宿題のプリントを渡す。
坂田くんはそのプリントを受け取ってから口を開いた。
「サンキュー、水沢。今度ジュース奢るよ」
「えっ? あっ、うん……あ、ありがとうっ」
――お昼休み――
やっと午前の授業が終わった。
クラスメイトたちは友達と一緒にお弁当を食べ始める。
アタシは友達がいないので一人で寂しくメロンパンを食べていた。
そんなアタシを見て、坂田くんは不思議そうな表情になる。
「水沢っていつも一人だよな。もしかして、一人が好きなの?」
「別に一人が好きってわけじゃないよっ……」
「じゃあなんで一人でご飯食べてんの? 友達と一緒に食べればいいじゃん」
「友達なんかいないよ……アタシ陰キャだから」
「ふーん、そうなんだ。じゃあ俺と友達になろうぜっ」
「え……? いいの?」
「おう、もちろんだっ。これからよろしくな、
「……」
今日、アタシたちは友達になった。坂田くんと連絡先まで交換した。
なんで坂田くんはアタシと友達になってくれたんだろう?
やっぱりこの人は謎だ。
坂田くんと友達になったあと、アタシの人生は大きく変わった。
休日はいつも家で勉強していたけど、最近は坂田くんと外で遊ぶことが多い。
一緒にゲームセンターで遊んだり、カラオケでたくさん歌ったり、ファミレスで坂田と二人で勉強したり。
坂田くんは勉強が苦手らしいので、いつもアタシが教えている。
はっきり言って二人で勉強するのは効率が悪い。
けど、彼と一緒に勉強するのは本当に楽しいんだよね。
気づいたら坂田くんのことが好きになっていた。
たぶん、これが初恋だ。
「坂田くんって好きな人いるの?」
「好きな人? そんなのいないけど」
「そっか……」
やっぱり好きな人いないんだ。
坂田くんは恋愛に興味ないのかな……?
「水沢は好きな人いるのか?」
「え? 気になるの?」
「そりゃ気になるよっ。で、どうなんだよ。好きな人いるのか?」
「えーっと、その、好きな人はいるよ……」
アタシがそう言うと坂田くんは目を丸くする。
「へぇ~、やっぱ好きな人いるんだ。なぁなぁ誰が好きなんだよ? 同じクラスの奴か?」
「それはその……内緒です」
「えぇぇ……いいじゃん、俺にだけ教えてくれよ。なぁいいだろ?」
「絶対イヤだっ……坂田くんには言えないよ」
坂田くんはアタシのこと異性として見ていない。
今告白してもフラれるのがオチだ。
もしフラれたらアタシたちの関係は壊れてしまう。それは嫌なのでアタシは坂田くんに告白しなかった。
はぁ……どうやったら坂田くんと付き合えるんだろう?
もっと積極的にアプローチしないとダメなのかな?
結局、坂田くんに告白しないままアタシは中学校を卒業してしまった。
アタシと坂田くんは高校が違うので、簡単に会えなくなった。
おそらく、もう坂田くんと会うことはないだろう。
こうしてアタシの初恋は終わった、と思っていた。
けど違った。まだアタシの初恋は終わってなかった。
◇◇◇
【坂田流星 視点】
俺の名前は
現在は大学二年生だ。
友達はいるけど彼女はいない。そう、俺には彼女がいないんだ。
高校生の頃は二次元の女の子で満足していたけど、もうダメだっ。やっぱり、三次元の彼女が欲しいよっ。
そう思った俺はマッチングアプリをインストールした。
俺がインストールしたマッチングアプリは男性だけ有料だ。
女性は無料らしい。
なんで女性だけ無料なんだよっ。意味わかんねぇ……。
姉ちゃんはこのマッチングアプリを使って恋人を作ったらしい。
俺もこのマッチングアプリを利用して、可愛い女の子と恋人になってみせるぞっ。
――一週間後――
マッチングアプリで1人の女の子と仲良くなった。
相手の名前はあすか。
あすかさんは大学2年生らしい。あと、近所に住んでいることが分かった。
【あすか】『リュウセイさん、次の土曜日デートしませんか?』
【俺】『はいっ、しましょうっ!』
仲良くなった俺たちはデートすることになった。
あすかさんとデートか。楽しみだなぁ。
――土曜日――
今日はあすかさんと10時からデートだ。
スマホを開いて現在の時刻を確認すると、『9時25分』ということがわかった。
もうこんな時間か。
そろそろ待ち合わせ場所に行くか。
俺は家を出て待ち合わせ場所に向かう。
あすかさん、もう待ち合わせ場所にいるかな?
なんてことを思っているうちに、待ち合わせ場所に到着した。
チラッと横を見ると、一人の女性と目が合う。
背中まで伸びた艶のある黒髪、大きな瞳、小さな鼻、薄い唇。
相手は超がつくほどの美人だった。
この人、どこかで見たことあるなぁ……。
もしかしてこの人が『あすか』さんかな?
「あの……もしかして、あすかさんですか?」
「はいっ、そうですっ。初めまして、リュウセイさんっ」
「……」
この人があすかさんか。
めちゃくちゃ可愛いなぁ。
会う前からあすかさんの顔は知っていた。
マッチングアプリのプロフィールが顔写真だったからな。
写真で見るより実物の方が可愛いなぁ。
「あのリュウセイさん」
「はい、なんですか?」
「もしかしてですけど……あなたの本名って『坂田流星』で合ってますか?」
「……」
俺はまだあすかさんに本名を教えていない。
なのに、どうしてあすかさんは俺の本名を知っているんだ?
一体、どこで俺の本名を知ったんだろう?
動揺している俺を見て、あすかさんはキラキラと目を輝かせる。
「やっぱり坂田流星くんだよね? そうだよね?」
「……えーっと、なんで俺の本名知ってるの? ちょっと怖いんだけど……」
「え? もしかしてアタシのこと忘れちゃった? アタシたち同じ中学校だったんだけどなぁ……。本当に覚えてない?」
「……?」
俺とあすかさんが同じ中学校?
おいおい、なんの冗談だ?
中学にこんな可愛い女の子はいなかったぞ?
いや、いた……。
中学生の頃、俺はあすかさんに似た女の子と仲が良かった。
毎日、その子と遊んでいた。
たしか、あの子の名前は
「お前……水沢か?」
「うんっ、そうだよっ。アタシのこと覚えてくれてたんだ」
「……」
「ふふ、久しぶりだね、坂田くんっ」
「お、おう……久しぶりだな」
俺の顔を見て、水沢は「ふふっ」と明るい笑顔を浮かべる。
その笑顔が眩しすぎて反射的に目を逸らしてしまった。
コイツ、本当に水沢なのか? 中学の頃はこんなに可愛くなかったぞ……?
はっきり言って、中学の頃の水沢は可愛くなかった。
けど、今の水沢は超が付くほどの美人だ。
水沢の見た目の変化に驚きを隠せずにいた。
「さてと、そろそろ映画館に行こっか」
「そ、そうだなぁ……」
俺たちは横に並んで映画館に向かう。
ふと横を振り向くと、水沢と目が合った。人間離れした水沢の容姿を見て、すぐに目を逸らしてしまう。
そんな俺を見て、水沢は小首を傾げる。
「なんで目逸らすの?」
「それはその……」
「あっ、もしかしてアタシにドキドキしてる?」
「あぁ……そうだよっ。水沢が可愛いからドキドキしてるんだ」
「ふぇっ!?」
俺が『可愛い』と言った瞬間、水沢の顔はカッと赤くなる。
「あ、アタシって可愛いの……?」
「ああ、凄く可愛いと思うよっ」
「っ……そ、そっか。げへ、げへへっ」
水沢は「げへへ」と不気味な笑顔を浮かべる。
相変わらず、笑い方キモイなぁ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます