花のように美しい

 今日はおばあちゃんとお母さんと、私と紡君の四人で梅を見にきたところで。

県内にある大きなフラワー、ブロッサムに関係なく、様々な花を見ることができる施設に来ている。

結構有名なところで、冬には毎年イルミネーションも飾られている。


 まあ、私は寒いのはあまり好きじゃないし、わざわざ見にこないけれど。


 それにしても、とても梅の花が綺麗で、見惚れてしまう。

春先に見に来たせいか、少しずつ暖かくなっていて、それだけでも気持ちが軽い。


「歩ちゃん、紡君、そこの梅の木の前に立ってみて。記念に写真撮ってあげるから」


 お母さんの言葉に、従って梅の木の前に立ってみる。

「良いんですか? ありがとうございます」

そうにこやかにお礼を言うと、紡君も私の隣に立つ。


「あ、おばあちゃんも……」

私が言おうとしたところで、

「まずは二人で撮ってもらうといいよ」

とおばあちゃん。


 何が良いのかは分からないけれど、二人がそう言うのならとスマホで写真を撮ってもらう。


「あ、王子様とお姫様みたいな人たちがいるー!」

途中、小さい子供の声が聞こえ、私はそれはどんな人たちなんだろう、見てみたいな、と言う気持ちを抑えつつ。


「ありがとう、お母さん!」

「伯母さん、ありがとうございます」

二人でお礼を言うと、

「後で良いのを選んで、コンビニでプリントしとくからねー」

とお母さん。


「じゃあ、おばあちゃんとお母さんの写真、私撮るからね」

と、私もスマホを取り出して、おばあちゃんやお母さん、梅の写真を撮ろうと思ったところで。


「紡君も写真撮っていい?」

思いもかけず口から飛び出てしまった言葉。

自分で自分の言ったことに驚き、あたふたとしながら、

「あ、ごめん。嫌ならいいんだけど」


言いかけたところで、

「僕も歩姉さんの写真も撮りたかったんだ」

となぜか、照れながら言う紡君。


「伯母さんも時子さんも撮っていいですか?」

紡君が言うと、

「紡君は、梅とか花とか歩ちゃんだけ撮ってればいいんだよ」

「そうそう、私たちは自分たちで写真撮ってるから」

おばあちゃんと、お母さんの、謎の言葉。


「えー何それ?」

言いながら紡君の顔を見ると、紡君の顔が赤くなっているのを見て、私もなぜか気恥ずかしくなった。


そして、気を取り直したかのように、紡君の顔が涼しくなった。なんだったんだろう、さっきの表情は。

それにしても、花のように綺麗な顔してるなー、とか紡君の顔を見ながら思った。

それはなんか黙っておこう、なんだか恥ずかしいし。




私たちは、梅を見た後、施設内の様々な春先の花を見て周り、ちょうど施設内を一周したところで、

「……ごめん、お腹が空いてきちゃった。なんか食べたいかも」

レストランの案内看板の前でそんな発言をしてしまった。


「もうお昼だし、分かるよー、食べよう!」

とお母さんがフォローしてくれた。

「私もお腹が空いてきたところなの」

「僕もなんか食べたくなってきたな」


 3人ともフォロー、ありがとう。

そんなことを思いつつ、十数件あるうちの、ハンバーグのレストランに向かうことにした。




 いざレストランに着くと、なんだか凄く混雑していた。

店員さんに、四人座れる席がないので、二人ずつ分かれて頂けると助かると言われ、私は紡君と食事をすることになった。


 なんだか、二人で座っていると、とても緊張してドキドキする。

涼しい顔をした紡君をよそに、私は、ぎこちない動きになってしまっているのを自覚する。

紡君にしてみれば、私みたいなのにドキドキされても困るのだろうが。

だけど、紡君の感じを素直に感じてみると、あちらはあちらで少し緊張しているような? なぜ?


そう言うことを思っていると、すぐ隣の席から、

「あーゆー女、ムカつくんだよねー」

と声がした。


見ると、同級生でもあり、私のことを倉橋君が好きなあまり嫌っていた女性だった。

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