今更本当には聞くつもりないんでしょ
私は自室で仕事をしていた。
タイピングを必要とする仕事。これは魔法使いの通貨を稼ぐ為にやっているもの。
人間の通貨の為仕事がドクターストップをかけられていて、
「魔法使いの仕事? やれるもんならやってみろ!」
と言われたので、やれると判断したので、週五日くらいでやっている。
多分、担当医は私が魔法使いって知らないで言ったんだけろうけど。
私なんかが魔法使いなはずがないって、思っている感じがしたけど。
取り敢えず、他の魔法使いの役に立つことを、ライターとして伝えている感じで。
私も昔から今も、そう言ったものに助けられることが多いのを感じていて、それで私でも役にたてるならって思ってやっている。
魔法の通貨は、日本円にして月に数億円稼いでいることになるが、なんだか贅沢な暮らしに憧れる性分ではないせいか、貯金がどんどん溜まってゆく。
誰かへのプレゼントや、寄付など、どんどんしていきたいが、母はまず「自分の為に使いなさい」と言う。
紡君も、彼は魔法使いとしても優秀だと聞くし、結構魔法の通貨も稼いでいるみたいだけど、でも人間の仕事も一生懸命取り組んでいるようだ。
一生懸命なことはいいことだと思う。それに、学生の頃から優秀で、素直にすごいと感じる。
まだ高校の卒業式を迎えていなくて、それは来月、3月の初頭だと言うが。
人間の仕事は卒業前から一足早く駆り出され、研修等を重点的に受けているようだ。卒業式のために一旦、地元へ帰るらしい。
でも、それでも私は、すっかり美青年やらイケメンやらになってしまった、紡君のことが好きではなくて、むしろ憎くて。
紡君、昔は可愛かったのに、なんであんな風になってしまったんだろう。
「歩ちゃん、ちょっと話があるの」
夕方5時頃、一通りの仕事を終え、リビングに来たところ、リビングと繋がっている台所から、母から呼び出された。
ここに座りなさい、とテーブルにある椅子を指さされたので、座る。
なんだか、母の口調が少し厳しいような。
母は私の正面の席に座った。
「歩ちゃん、あなた酷すぎない?」
母が私の顔を見ながら話し出した。
「何が?」
酷い? なんのこと? と何かしたかなと思いを巡らせなながら返事をした。
「紡君への態度、よ」
「え?」
私は呆けてしまった。
いや、だって、紡君がひどいんでしょ? と。
「この前だって、助けてくれた紡君に対して怒ったよね、お礼すら言わず」
確かにお礼は言ってないかもしれない、けど。
「その前も、嫌なこと言う人から守ろうとしてくれたみたいなのに」
? ああ、人のこと子分って言った件?
「大体、あなた紡君と再会した時から、紡君への態度がおかしかった」
それを聞いた私は、唇を噛んだ。
「いや、だってあんな外見してるから」
私は反論した。
「外見? どういうこと?」
母の厳しい口調は止まらない。
「あんなかっこよくなっていたら、恨みの一つくらい感じるものじゃない?」
正論を言ったつもりだったのに。
「なんで?」
一層酷しい口調の母。
「だって……」
涙がポロポロと流れた。
嫌な記憶が蘇る。
「言いたいことがあるなら言いなさい」
心にも思ってないでしょ。そんなこと、今までの経験上。
「高校生との時から何度も相談しようとしたじゃない……」
何度も何度も話そうとしたけど、取り合ってもらえなかった。
辛くて辛くて、今でも辛くて。
そんな時、おばあちゃんが台所へやってきた。
「歩ちゃん、どうしたの?」
おばあちゃんが驚いたような声を発した。
「なんでもないよ、おばあちゃん」
おばあちゃんには笑って見せる母。
「でも、こんなに……」
とおばあちゃんは言うが。
「良い大人が泣いて許してもらおうだなんて、恥ね」
母は先ほどより、少しだけ口調だけに厳しさはない。
その代わり、侮蔑をしているのを感じる。
おばあちゃんは私の隣の席に座り、背中をさすった。
おばあちゃんが闇の魔法で緊張と熱を取ってくれているのが分かる。
「緋奈さん、歩ちゃんのお話聞いてあげて頂戴」
私を見ながら、母におばあちゃんは言った。
「分かった、話してみなさい」
母の態度は相変わらずだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます