あなたがいるとなぜか肩身が狭くなる
「って話を立ち聞きしてたんだ」
合流した、おばあちゃんと母に話す。立ち聞きは自分でも趣味が悪いなとは思っているけど。
「別に大したことしてないじゃない、普通だよ。何を語ってるんだ、紡君は」
しかもなぜ、顔を赤くするんだ、意味が分からない、と思った。
「歩ちゃん、それはね、普通ではなくてね……」
おばあちゃんがそう言いかけたが、私は話を遮った。
「あのお店のショーウィンドウに前から欲しかったグッズがある! 見てきて良いかな?」
と言いつつ、私は返事を待たないで、お店に駆け込んだ。
おばあちゃんと母も一緒にお店に入る。
私が会計を済ませてる間、お店で待っていてくれて、優しいなと思う反面、勝手に行っちゃって、ごめん、と思う。
「待っててくれて、ありがとう、おばあちゃん、お母さん」
「前から欲しいって言ってたもんねそれ」
と母がにっこりと笑った。
三人でショッピングを楽しみ、夕方頃になり、家に帰ることになった。
紡君たちがボランティア活動をしていた、商店街を通っていると。
いた!先ほどとは別の場所で、ボランティアがゴミ拾いしている!!!
紡君の姿は確認できないが、なんとかこの通りを避けて帰路につけないだろうか、と思っていたら。
―――なんだか、脂汗止まらない感じ、気分が悪い感じがする、とどこかから感じ取った。
辺りを見回すと、顔色を悪くして、座り込んでいる若い二十代前半くらいの女性がいる。
すると、紡君がその女性に駆け寄り、「大丈夫ですか?」と声をかける。
げっ、と思いつつも、顔色の悪い女性を放っては置けない、私も駆け寄る。
「大丈夫ですか? 今、魔法で治癒しますね」
私は、そう声をかけると、女性の背中に手をあて、施術した。
私の全身から優しいピンク色の治癒の光が放たれているだろう。自分の視界にある、自分の体から、その光が確認できた。
割とすぐに、女性の気分が悪い感じがなくなっていったのを感じた。
「もう大丈夫ですよ」と私が声をかけると、女性がこちらを睨んだ。
「余計なことしやがって」「この男の人にずっと介抱されたかった」と言う念が伝わる。
私は思わず 紡君を睨み、紡君は驚いた顔をした。紡君は気を取り直したかのように、女性に声をかける。
「……良かったですね」「はい!」なんだこれ?、と私は苦々しく思った。
「そこの魔法使いのねーちゃん、俺の友達もちょっと気分が悪くてな、着いてきてくれねーか?」
ふと見ると、いわゆるコワモテの若い男性が、私に声をかけている。
「え、いや、そんな感じはしないですけど?」
「だから、ちょっと付き合えって言ってるじゃねーか!」
イライラしたように、男性は私の腕を掴もうとしている。
「ヤバい」と思ったその瞬間だった、男性が「痛てっ!」と声を上げた。
見ると紡君が、男性の腕を力強く掴んでいた。
「僕の彼女に何するんですか?」
その表情は、平然と見せかけて、冷たいようにも感じた。しかもやっぱり、綺麗な表情で顔で、やっていることもカッコ良くて、腹が立つ。
男が逃げるように去った後、紡君は私の顔を覗き込む。
「大丈夫? なんとも……」と紡君が言ったところで、私の怒りが沸点に達した。
「誰が彼女だ!!!バカにしてんのか!!!」
私は思わず怒鳴った。
「いや、彼女って言った方が効果があるかなって、嘘も方便……」
「そんな嘘は嫌いだ!!!」
嘘が嫌いと言うより、紡君に助けられたことと、紡君に助けられた自分が気に食わない。
と言うか、こんなふざけた奴に彼女扱いされたことが、最も腹が立つ。
「どうせ、子分って思ってるくせに……!!!」
腹が立って、暴言を吐いた私に後から来た、おばあちゃんと母が声を揃えて、
「それは違うよ、歩ちゃん」
と言うが、私は怒りで聞く耳持たなかった。
「ごめんね、ありがとう、紡君」
と申し訳なさそうに母が言うと、
「いえ、当然のことをしたまでで……」
と紡君の少し困ったような暗い声が聞こえた。
情緒不安定だな、こいつ!!!と、また怒りがしばらく収まらなかった。
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