追いつくなんて無理かもしれないけど
これらを話さないと、きっと納得してもらえないだろう。
私の頭の中に頻繁に浮かぶ、思い出、言葉。
「歩ちゃんって性格悪いよねー。勘違いしてるんだよね、きっと」
「ちょっと特技があるからっていい気になっちゃって!」
「だけど先生達みんな、歩ちゃんのこと嫌いだから」
「もちろん、私達も歩ちゃんのこと嫌いだよ?」
『歩ちゃん、酷い……!!!』
高校を卒業するまでずっと言われ続けたりした言葉達。
私が一体、何をしたって言うの?
身に覚えのない言葉達だったり、なんで私だけ言われたのか分からない言葉達。
そんなことを、ここ数日、ぐるぐると考え続けている。
でも、魔法使いであることを隠していた理由を言わないと、辛くても言わないと、納得してもらえないだろう。
そう思い悩んでいた時。
「歩ちゃん、無理に話さなくて良いのよ。そんな辛い顔しないで」
私の気持ちを察したかのように、優しい口調で、おばあちゃんが話しかけてくれた。
「歩ちゃん、自分を大切にしてあげなさい。自分自身を肯定してあげるの」
おばあちゃんは、セルフコンパション―自分自信を自分で肯定すること―を言っているのだろう。
「辛かったよね、苦しかったよね、分かるよ、って自分自身に声をかけてあげるのよ」
俯いた私の顔を少し覗き込みながら、背中に手を当ててくれた。
その優しい言葉、その優しい掌で、私の心は少し安心したようだった。
「二人とも、お昼ご飯、食べよう?」
午前中の家事を終えた母が、私達にそう呼びかけた。
私は自分が魔法使いになった時のことを覚えている。
その発端が、オラクルカードと呼ばれるものだった。
オラクルカード、スピリチュアルが好きな人達が好んで使うアイテムの一つ。
オラクルには神託という意味があり、オラクルカードとはある意味ではタロットカードに近い占いのような使い方をするカード達。
私は、魔法使いになる前は、スピリチュアルにしか視界になかったようなものだった。
それがあれば、魔法使いのおばあちゃんと肩を並べて歩けていけるような気がしていた。
私は、自らをライトワーカー、つまり光の仕事人と名乗る女性から、オラクルカードの使い方を学んでいた。
その人はオラクルカードを扱うことを仕事にしている女性だった。
そして、オラクルカードの使い方を教えてくれていた、その女性から、課題を言い渡された。
当時、月に一回のペースで課題を言い渡され、私はそれをこなしていたのだ。
その最後の課題。
「オラクルカードのあなたのオリジナルのスプレッドを考えてきて頂戴」
スプレッドとは簡単に言ってしまえば、オラクルカードから受け取りたいメッセージによって、カードの引くカードの枚数やその置き方が変わるもの。
それを自分で考えて来いと言うのだ。
私はそれに対し、必死になって取り組んだ。
これをクリアすれば、おばあちゃんと少しは肩を並べて歩けると思ったからだ。
私は意気揚々としていた。
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