第25話:みんなで遊園地!ー春の陣ー ①
ホワイトデーは終わり、春休み―。
気温も少しずつだが上がってきた。時折頬を撫でるように吹く風は、心地良く自然と気持ちも温かくなる。
そんな翔は今―――
大人数で遊園地に来ていた。メンバーは男性陣6名、女性陣5名の大所帯だ。
男性陣からは
一方の女性陣は
パークに入場したエントランス部分で学校では1文字も言葉を発さない晴太が口を開いた。
「おっしゃあーっ!!ついに来たぜ!!!これこれこの遊園地特有の雰囲気っ!!まるでここは別世界・異次元空間!まさにアナザーディメンション!!」
そう叫び走り出そうとする晴太にその場に居た一同は唖然とした。そんな晴太を翔は右の腕を軽く掴んで捕まえて言った。
「あの……晴太…」
声が小さかったのかその言葉は晴太には届かず、再度叫んで走り出そうとした。
「社会はゴミだよな!!!?分かるよ!!さぁ行くぜーーっ!!」
そう叫ぶと晴太は翔を振り切って1人で走り出して消えて行った。
「あいつが言葉発してるの初めて見たんだけど…」
翔や詩花と同じクラスの
「あいつ喋ってるの初めて見たんだけど…」
翔がそう呟くと凛音も続いた。
「た、確かに。ぼくも同じクラスで1年ずっと一緒にいるけど初めて声聞いた…」
同じクラスの詩花、茜、夕菜は納得するように頷いていた。
「ま、晴太は…一旦おいといて行こうか!」
赤弥がそう言うと皆は腕を上げて各々歓声をあげた。
「へーい」(翔)
「はーい!」(凛音)
「おー!」(青葉)
「行こう(クイッ)」(茶緑)
「わぁ」(詩花)
「いぇーい!」(夕菜)
「わーーいっ!!!」(茜)
「あわよくば茶緑くんと…(小声)」(麗羅)
「お〜〜」(風愛)
パークを少し進むとチュロスやポップコーン等の歩きながら食べれるものが売っていた。
「食べたいなー」
夕菜が立ち止まり、チュロスをじっと眺めながらそう言うと、赤弥は彼女の顔に近づき目を見て優しく言った。
「後で来ようね」
「…な…っ……ちょっ…」
夕菜は顔を真っ赤にして目を少し逸らすと赤弥の背中をトンッと押した。
翔がその光景をニヤニヤしながら眺めていると夕菜はそれを見つけ、呟いた。
「lock on…」
夕菜はそう言うと目をキランと光らせて翔に向かって走り出した。
「ひぇっ」
モブ声を出した翔は、全力で走り出した。
2秒後にあっさりと捕まった翔を見て、凛音と詩花はそれを見て笑っていた。
「そういや翔君とゆうなんは仲良いよねーっ!付き合ってんのー?」
翔を掴む夕菜に茜が言った。両手には既に2本のチュロスが握られていた。丁寧にストロベリー味とチョコレート味だ。
「いや食べるの早っ!」
翔がツッコミを入れると、夕菜がそれにツッコミを入れた。
「いやつっこむとこそこじゃないわよ!」
不思議そうに2人のやり取りを見ている茜の後ろにはゆらぁっと詩花が立っていた。何やら茜に耳打ちをしているようだ。詩花は茜の耳元で何か話している。すると茜は泣きそうになりながらチョコレート味のチュロスを1つ詩花に手渡していた。
「(…何を言ったんだ……)」
凛音・翔・赤弥・夕菜は同時に心の中で思った。
「そんでどこ行くー?」
茜は買い足したチョコレート味のチュロスを片手にそう言った。
「そうだなぁ」
赤弥が園内マップを見ながら考えていた。
「あれ……」
そう言うと、辺りをキョロキョロと見渡し始めた。
「どうした?」
翔がそう聞くと赤弥は首を傾げながら言った。
「茶緑と麗羅さんどこ行った?」
「……あー…」
思い当たる節があるように翔はお化け屋敷に向かって歩き出した。後ろには凛音・詩花・赤弥・夕菜・茜がぞろぞろと歩いてついて行く。
「あ、やっぱり」
お化け屋敷に着くや否や翔は呟いた。待機列に並ぶ麗羅と茶緑の姿があった。麗羅は豊満な胸を茶緑の腕に押し当てていた。そしてこちらと目が合うと不敵な笑みを浮かべた。
しかし、茶緑には胸を押し当てるのは何の効果も無いようだった。
「………」
一同の心の中は無だった。
「あ、あれ次は北原さんがいない…あ、あれ青葉も」
赤弥がそう言うと再度辺りをキョロキョロし始めた。
「北原さんってゆったりしてるイメージあるから
凛音が心配そうにそう言った。
「へー、凛音って北原さんと知り合いだったんだ」
翔が不思議そうに聞いた。
「うん、委員会一緒だよ!」
「なんか凛音って人脈あるよな」
「そ、そうかな~?」
翔が感心しながらそう言うと、既に周りには誰も居なかった。
「え!?皆どこ行ったの!?」
それぞれがどうなっているか各チームの視点で見てみよう。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
――青葉・風愛チーム――。
エントランス付近のお土産コーナーに居た2人。一緒に居ようと思っていた訳ではなく、純粋に取り残されてたまたま2人とも近くのお土産コーナーに吸い込まれて行っただけだった。
遊園地にはそれぞれにキャラクターがいると思うが、ここの遊園地にもいる。
「これかわい~」
のんびりお土産を見ていた風愛はリスのキャラクターのニット帽を手に取って眺めていた。
「北原さんそれ買うのん?」
青葉は買い物かごに大量のお菓子を入れながら聞いた。
「ん~~~~」
「そ~ですね~」
間延びしながら言う風愛は少し考えるようなポーズをした。
「ふむ」
青葉はそう返事して風愛を見つめていた。
「ん~」
「あ、そう言えば~。わたしポニーテールだからニット帽被れませんね~」
「ハハッ…本当だっ」
青葉は彼女の反応を見て笑っていた。
「じゃー、これとかどう?」
ニット帽と同じリスのキャラクターの眼鏡を手渡した。眼鏡と言っても度は入っておらず、遊園地のグッズの定番のかけるだけのやつだ。
「わ~、かわいいですね~」
笑顔で青葉から受け取ると眼鏡をかけてみた。
「どうですか~?」
青葉は普段女子と話すことが無いため緊張しながら答えた。
「…あ、似合ってますよ」
「(敬語になっちった…動揺しすぎだろ俺)」
「わ~、嬉しいです~。これ買ってきます~」
嬉しそうにそう言うと、レジへとことこと歩いて行った。
「(え…かわいい…小動物みたい…)」
青葉の中で守りたい欲がふつふつと沸き上がった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
――茶緑・麗羅チーム――。
「怖かった~~」
麗羅はそう言いながらお化け屋敷から出た後も茶緑に胸を執拗に当てている。
「今日は暑いな」
茶緑は眼鏡をクイッとやってそう言うと腕まくりをした。
「(この胸に一切興味を示さないドライな感じ……っ!!)」
そう心で麗羅は思うとビクビクと身体を震わせた。
「大丈夫かい?」
茶緑は心配そうに麗羅に聞いた。
「ぁ…ぅん…大丈夫…」
「(…何よりも先に心配してくれる優しさ……素敵っ)」
吐息混じりに答えた。
「む。これは…」
茶緑がポップコーンを販売しているところを眺めながら呟いた。
「(欲しいのかしら)」
麗羅が心の中でそう思うと、茶緑は続けてこう呟いた。
「ちょっとあっちで待っててもらえるかな」
ベンチの方を指差しながら言う茶緑に麗羅は頷いた。
「え…うん」
数分後、キャラメル味のポップコーンを片手に茶緑がベンチに戻ってきた。
「ごめんよ、遅くなって」
そう言いながら麗羅の横に座るとポップコーンを一掴み持ち、麗羅の口元に持っていった。
「(…え?)」
顔を真っ赤にした麗羅は急に恥ずかしくて手で受け取って食べた。
茶緑は特に気にしていなかった。
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