第2話  過去が姿をもって現れた。

2話 過去が姿をもって現れた。

「ヤッホー、真也久しぶり」

 彼女、佐藤 千春は平塚 真也の幼馴染であり、初恋であり、失恋の相手であり、過去である。

 過去とは、彼が彼女との事を過去に置いてきており、二度と会わないし会う事すらないだろうと思っていたことで思い込んでいた事だった。

 そう、二度と会うことなどありえないと、そう思っていたのに。

「なんで、居るんだ」

 再度口から出た言葉は、真也にとって否応なく現実を自分自沈に突き付けるモノであったが、自然と口は動き、事実を突きつけた。

「真也に会いたくて。不肖、佐藤 千春戻ってまいりましたぁ」

「・・・・」

「アレ、驚かない? え、あ、ちょっとぉ!」

 困惑する千春を一瞥し、睨むでもなく、かといって、感動するでもなく、まるで蝋人形にでもなったかのような、一切の感情を捨て去った表情になったかと思うと、カバンだけを手に取ると、真也は教室を後にした。

 あまりの出来事に、教師ふくめ、何が起きたのか理解できず、唖然とする中、ただ一人、千春だけが、困惑しつつも。

「そりゃ・・・そうか」

 と、一言誰にも聞こえないか細い声でつぶやいたのだった。



 何をやっているんだ俺は。

 教室を、本当に自然な動作で貴重日だけが入っているカバンを手に取り、抜け出しはしたが、特にいく当てなどなく出てきてしまったため、どうしようかと思っていると、前方より白衣に身を包み、口には飴を加えた女性が、セミロングの髪を揺らしながら進んでくる。

「おつかっした~」

 適当にスルーして通り過ぎ、このまま帰宅してしまおう、そう思って、とりあえず教師の横を不信感の無い様に通り過ぎたはずだっただが。

「おいこら、平塚」

「痛て・・」

 横を通り過ぎる間際、彼女は真也の頭に左手を乗ってけて、その動きを止め、左手に名いっぱいの力を込めた。

「ホームルームからそのまま授業1限目のはずだよなぁお前のクラス」

「い、嫌だなぁ、静流さん。移動教室イタタタ」

「見え透いた嘘つくなよぉ。昨日の友香ちゃんのことも聞きたいし、このまま連行だ。おら来い!」

 半ば引きずらる様に確保された真也は、まるで逆らうことができずに捕まると、図書室へと連行された。

 紅 静流 3~歳独身、身長172センチ女性にしては大きく、また出るところのでている美人系司書なのだが、司書などやってるのに武闘派という事で、数々の問題児を構成させたりしていたのが原因で、今やこの学校の秩序そのものである。

 この人がなぜ真也の事を知っているのかと言えば、過去に変な誤解から、真也が悪い事をしたという話で目を付けられたのだが、幸い静流は自分の見聞きしたことしか信用しないたちだったため、すぐに別の犯人が静流の手で捕まり、おとがめなしだったのだが、それ以来、真也は静流とは極力かかわらんようにしていた。

「どうだ、昨日はキスまでなら許すぞと、張り紙しておいたんだが。良い雰囲気になったか?」

 援護射撃かなんかのつもりだったのだろうか、満面の笑みで図書室の司書室につくなり、椅子に真也を座らせ、お茶を出した途端にコレである。

「静流さんナンノコトカナァ?」

「人がせっかく色々助けてやってんのに。まぁ良いわ、どうせ幼馴染から逃げてきたんでしょ」

「は、なんで」

「昨日放課後に職員室で、大変な才女が、わざわざこの学園に来るらしいが、どうやら要望があるらしく、お前のいるクラスに席を用意しろと、校長と交渉したとかで、職員室ではちょっとした騒ぎになってな。

 一様、生徒指導の身として呼ばれて、少し話はしたんだが・・・」

「もういいです。充分わかったので」

 どうやら静流さんは、俺と千春の関係を邪推しているのだと感じ、真也は深いため息をついた。

 何故、せっかくやっと忘れかけていた記憶、さらには、失恋から、次の恋にもしかしたらと淡い期待を少しはいだかなかったといえば嘘になる、そんな出来事が自分に起きた直後に、今最も会いたくない人物がふらりと表れてしまった。

「なるほど。面倒くさそうな話みたいだな」

「すんません」

「お前はアレか、1年前の時もそうだったが、私の世話にならん時が済まんのか?」

「いえ、全力であなたとは関わりたくないです」

 素直に率直な意見を述べた真也だったが、ほっぺたを抓られた。

 痛みに身もだえつつ、すぐに話してくれた静流に違和感を覚え彼女を見ると、真剣な表情でこちらを見ていた。

「友香ちゃんの事は、遊びにはしないな」

「それ以前に、お互いの事を知らないので、まずは友達からという話になったんですが」

 この説明何度目だ?

 そう思いながら、投げやりに問い掛けに答えると、静流は前髪を掻き上げ、唸った後、ふぅと安堵の息を吐いたように見えた。

「真面目ちゃんだからなぁお互い。まぁ変な事にならない・・・・するなよ」

「保証が、できなくなりました」

 おいおい勘弁してくれぇ、と静流が悪態をつく。

 静流もうすうすは感じていたのだろう、真也目的で女性、しかも並外れた才女が遠路はるばる来るわけがない。

 明らかに恋愛がらみであると。

「あー、地雷っぽいから聞いて良いのか怪しいと思っているのだが。話がややこしくなる前に聞いておくぞ。佐藤 千春はお前の何?」

 まぁそうなるわなぁ、と真也は思いながらも、この人ならば変に口外などしないだろうし、もしかした良い知恵を貸してくれるかもしれない。

 淡い期待半分、自分に対しても、戒めと、前に進むための決意を固めるため、なんとなく話すべきなのかもと思い口を開きかけ。

「ちょい待ち。先に茶菓子とお茶、入れるわ。どうせ話長いんだろ?」

「俺はあんたがちょと怖いわ」

「気の利く綺麗なお姉さんって言い直してみぃ?」

「キノキクキレイナオネエサマ」

「クソガキめ」

 なんやかんやと悪態をつきつつも、静流は面倒見が良いのか、それとも真也が一方的に信頼を寄せているのか、軽口をたたきながら、静流は席を立ち、お茶の準備をする。

 そんな背中に、見えないだろうし、本人は嫌がるかもしれないが、深く一礼をしつつ、真也はどこから話せばよい物かと、思考を過去の自分へと巡らせていった。



 3年前の9月。

「私、引っ越すの、遠くに」

 唐突に告げられた幼馴染からの一言で、足元が揺らいだ真也は、黄昏時の紅の空を見上げながら、何か幻聴のようなものが聞こえたと思い、連れ立っている相方、佐藤 千春に視線を向ける。

 彼女は今にも泣きだしてしまうのではないかというぐらい、顔を歪ませ、何かに必死に耐えるような仕草をしていた。

「わ、悪い冗談はやめろよ。お前の悪い癖だぞ」

 長い時間共に過ごし、悪い冗談や悪ふざけ、時には少しシャレにならない件かなどもしてきた間柄だから、ごくまれにこういう悪ふざけなんかはよくあった。

 だが、悪ふざけにしては、顔はこわばり、緊張しているのが伝わってくる。

 そこでふと彼女の父の仕事が何だったのかをふと思い出し、悪態をつきそうになった。

 彼女の父は、有名な大手企業のいわば基盤を支える人で、年に何回かは長期で海外に出張がある人だった。

 しかし、今日に至るまで、彼女とそのお母さんが一緒についていくなどという事態にはなってはいなかった今までは。

「今回は、長いんだって。大きなプロジェクトがどうとかで・・・」

「マジ、なのか?」

「マジみたい。だだからね・・・」

 そこで言葉が途切れ、俯く。

 だから、何のだろうか。紡ぎだされた言葉は続くことなく、夜も迫る暗闇へと飲み込まれ、消えていく。

 夕暮れの、夜が顔をのぞかせたこの時間は、まさに全てを奪い去ってしまうのではないかという幻覚にとらわれてしまうような、そんな感覚に襲われる。

 言葉もまた、消え去りそうだった。

「いつ、行くんだ」

 なんとか真也は一番重要な部分だけを聞かねば、そんな思いで聞くと。

「・・・・明日」

「え、いや待て。おかしいだろ? そんなすぐなんてあり得ないだろ。普通はこう、前もって・・・知ってたのかだいぶ前から」

 必死に現状を理解しようとして言葉を費やしていて気が付いた。そんなすぐに長期主張の話が決まるわけが無いと。

 という事は、千春は真也に今の今まで、直前になるまで黙っていたのだ。

「ご・・・めん、なさい」

 彼女は絞り出すようにそういうと、ついに耐え切れなくなったのか、突然走り出し、真也を置き去りにして、行ってしまった。

 残された真也は、ふざけるな! と、誰に言うでもなく悪態をつきながら、夕暮れの空を見上げていた。



 翌日早朝。

 真也は制服には着替えはしたが、学校に行く気などはなく、そのまま自宅の隣の一軒家に足を向けた。

 表札には佐藤の文字があり、早朝にもかかわらず、家の前にはトラックが止まっており、家の中では様々な人があれやこれやと忙しそうに動いていた。

「すみませ~ん」

 玄関まで行き、中に声をかけると、おじさんが、いそいそと姿を現した。

「おお、真也君。すまないねぇ、千春かな?」

「ええ、そうなんですが・・・・」

「うん? ま、まさかとは思うのだが、もしかして何も聞いてないとか?」

 真也の妙な反応を察したのか、おじさんは大変申し訳なさそうに、伺うような感じで聞いてきたので、言葉ではなく首を縦に振り。

「昨日、聞きました」

「げ。あのバカ娘。いざという時に意気地がない。誰に似たんだ」

「アナタですよ、お父さん。シー君、ごめんね、今首ねっこ捕まえてくるからちょっと待っててね」

「あ、春奈さん、え、あのぉ」

 話し声を聞きつけてきた、小柄な美人が顔を見せるなり、旦那を小突くと、すぐにそう言って奥へと消えて行った。

 小柄なのに力があり、小柄なのに怒らすと無茶苦茶怖いのが春奈さんで、おばさんなんて呼んだ日には、地獄を見るとても怖い人である。

「千里おじさんも、すみません・・・」

「いや、むしろ済まない。本当ならもっと早くに君には伝わっているはずで。そしたら・・・いや、ここからは君らの問題だからあまり言えないが、ともかく、すまない」

「あの、お仕事なんですから、そんなに誤らなくても」

「いや、そうはいかないよ。大人の都合で人一人の人生を同行していいう話は決してないし、娘にも選ぶ権利はある。でも保護者としてはどうしてもこうせざるおえない、という現実があって・・・」

「分かってます。おじさんが、子供にも人権があり、権利があるって。子供のころから耳に胼胝ができるぐらい聞かされていますから」

 この千里という人は実に変わった人で、世の中では子供は子供のまま、親のいう事に従ってればいい、という世間の感性とは違い、子供もまた一個人であり、自由にする権利がある、だからそれを親の都合や、大人の勝手な理屈や理由で、その自由を奪ってはいけない! と、常日頃から口酸っぱく言っていて、平塚家の親も、その理連に共感してなのか、基本的には真也が決めることなどには口出しせず、見守るのと、そのしりぬぐいを何も言わずに行ってくれていた。

「昔から君たちには、そういって育ってもらった。だからこそ、今回は私の至らなさで」

「あの、良いですから。仕事なら仕方ないんですし」

「ちなみに、どれぐらいか聞いてる?」

 不意にされた質問に、妙な不安を感じ、口を開くことができず、首を左右に振る。

 それを見た千里は眉間にしわを寄せ、両手で頭を抱えた。

「何してるんですかアナタ」

「何って、そら、自分のふがいなさに打ちひしがれていてただなぁ。聞いてないらしい、どれだけ向こうに行くのか」

「・・・・」

 千春を連れてくるといって消えた春奈さんが戻ってきたかと思えば、千春の姿は見当たらず、話に加わったのだが、千里の言葉を聞いた途端、その顔絵が阿弥陀如来様のごとくとんでもない怒りの、言っちゃえば怖い、の部類が尋常じゃない顔もなり。

「もうちょっと待っててねぇ」

 言うが早いか、すぐに姿を消し。

 すぐに、アンタ何やってんの! 地を震わすような怒声が家全体に響き渡り、家の中で作業をしていた業者さん含め全員が、身をびくりと震わせ、声のしたほうに視線を向けた。

 しばらくして、目を真っ赤に泣きはらした千春があらわし。

「決着つけないで戻ってきたら。分かるわね?二人とも」

「え、俺も・・・あ、はい。行ってきます」

 満面の笑みを向けてくる春奈に、言い知れぬ恐怖を覚え、真也は千春の手を取り、外に連れ出した。



「ふぅ、行ったわね。誰に似たのか。ヘタレすぎるわよ」

「君がパワフルなだけなきがするんだけど」

「娘の今後に関わる事よ、そら必死にもなるでしょ」

「親バカだなぁ。さぁて、飛行機の時間夕方に調整しますかねぇ」

「どっちが親バカなのかしらねぇ」

 千里と春奈はお互いに見合わせながら、互いの体重を少しづつ預ける様にして寄り添うと、玄関から今しがた出ていった若い二人を思いながら、どうかうまくいくようにと心の中で祈るのだった。



 春奈に追い出されるように送り出された、千春と真也だったが、どこに向かえばよいのか、それもわからず、近くにある高台の公園へと足を向けていた。

 真也が手を取り、つないだままの手は、真也が力を入れていないのに、痛いほど千春からぎゅっと握られており、真也は妙な痛みを感じつつも、それを顔には出さず、優しく握り返しながら、そのまま歩き続けた。

 まだ朝も9時になるかどうかという時間で、過ぎ去る人々は足早にバス停や、駅方面へと進んでいく姿を横目に見ながら、誰に咎められることもなく、目的の場所についた。

 かつて、幼少期から小学校まではよくこの高台にある公園で、あきることなく夕暮れ時まで遊び続けた二人にとって、この場所はいわば特別な思い出の詰まった場所で、別れを惜しむには最も最適な場所だった。

「なんで、ここなのよぉ」

 しかしそう思っていたのは真也だけだったのか、妙に涙声のまま、真也の握っていた手にさらに力を込める。

「いったぁ、おま、いい加減痛いわ!」

「うるさいバカ!」

 あまりの痛さに慌てて振りほどこうとするも、がっちりと握られた手は離れることなく、真也の手を掴み、まるで失わないように必死に捕まえてるかのような、そんな握り方だった。

「あのな、マジで痛いんだけど」

 流石に限界だったため、真也はそっと握ってる手に空いてるほうの手を優しく乗せ、離してくれるように手を添え、ゆっくりと指をはがしていく。

 その様子を、納得いかないといわんばかりに凝視しながらも、それでも再度千春は手に力を込める事はしなかった。

「さて、色々言いたいことがあるんだが」

「シリマセン。私は何も聞いてませんでした」

「駄々っ子か!」

「それで構いません」

「お前なんで敬語なの?」

「意地悪なシー君にはこれで十分です!」

 整った顔が真也の顔を覗き込むようにして振り返り、真也は思わずたじろいたと同時に、この顔がもう見ることができなくなるのか、そう思ったら、ふと体が勝手に動き。

「え、な、え?!」

 気が付くと、真也の腕の中には千春が収まっており。

 千春もまた、何が起きたのかよく分からず、気が付いた時には彼の腕の中に居た。

 お互いに何をしたのかされたのかわからず、永遠にも似た時が数秒流れ。時間がたつにつれお互いの状況が把握できてきて、途端に恥ずかしくなり、慌てて離れようと、真也がしたときに、千春は、慌ててそうさせまいと、タックルする形になってしまった。

「うぉっ、痛っつぅ」

 バランスを崩し尻もちをつく形で転ぶ。

 幸い、芝のある公園だったため、さほど痛みはなく、真也はほっとして、腕の中にいる千春に目を向ける。

 彼女もまた、バランスを崩しはしたが、真也がしっかりと受け止めていてくれてたため、変に足をひねったりすることなく、彼に凭れ掛かるようにして倒れたため、痛みなどはなかった。

 互いに互いの距離は近く、少し顔を寄せてしまえばお互いにキスできてしまうような、そんな近い距離。

 互いに同期型かなり、自然と頬が淡いピンク色から赤へと変わっていくのを、互いが互いの顔で認識し、互いに意識する。

「お前、顔紅い」

「シー君こそ・・・・」

「お、俺は、い、今から大切な事を言うから。その、恥ずかしいだけだ」

「え?」

 唐突に何を言っているんだ。

 真也は、気が付いたらそう口が動いており、自分でもびっくりしながらも、心のどこかでは今言わなければ、二度と口にすることはないのかもしれない、そう思っていたら自然とそう言葉が口をついて出ていた。

「千春。好きだ」

「・・・・・」

 予想はしていたのか、互いに吐息のかかるような距離でその言葉を聞いた彼女は、微動だにせず、ただじっと、彼を見つめていた。

 どれぐらいそうしていたのだろうか、そろそろ何か言ってほしいと真也が思い始めた時、目の前の瞳から、スーと、一筋の光が伝うのが見え、え? と驚く暇もないまま、どんどんと、その瞳からあふれんばかりの雫が流れ落ち始めた。

「どうして、どうして今なのよ!」

 次の瞬間、真也の視界が右にズレ、頬には暑さと痺れが走り抜けた。

 一瞬何が起きたのか理解できず、唖然としている真也に。

「バカ。大っ嫌い!」

 真也はそのまま突き飛ばされ、今度は受け身すら取れず、後頭部を地面にたたきつけられた。

 その拍子に千春は、起き上がり、逃げる様に走り去っていってしまった。

 目の前がチカチカとし、ぶつけた後頭部がじくじくと痛み、身もだえて居たら、気が付くとそのまま気絶してしまったのだった。




「あー、長いな。で、お前は失恋したって事か?」

 話を聞くとは言ってはいたが、思いのほか真也自身も驚くぐらい説明下手で、気が付けば出来事のあらかたを会話形式で説明していた。

 我ながら容量が悪いと、自分に悪態をつく。

「ええ、少なくても俺はそう思ってます。あの後、病院で目覚めた時には千春は海外。後からおじさんたちと連絡はしましたが、本人とはそれ以来疎遠でした」

 そう、彼女はそれ以来真也への接触を一切してこなかった。

 時より、事の顛末を知っている千里さんと春奈さんが、彼女の近況などを国際電話を使ってわざわざ報告してくれていて、その中でも特に気になったのが、何かにとりつかれたように勉強を始め、高校を飛び級し、さらには大学も卒業してしまったという話を聞かされたことだった。

 何が起きているのか、不安だったお二人が、真也に相談するぐらいには鬼気迫るような状況だったと聞き及んでおり、真也は親友であり、幼馴染であり、初恋であった彼女の事を心配はしてはいたが、しょせんはフラれた男、自分には関係ないとそう言い聞かせながら、二人の話を聞いていたのは真也自身、後ろめたさ半分といった感じだった。

「で、いきなり現れたと。寄りにもよって、お前が告白された次の日に」

「や、やめてください。マジで意味わかんないんで」

 頭を抱える真也に、まぁこうなるのも無理ないかぁ、と半ば納得してしまった静流だったが。

「お前はまず、女心を知るべきかもな。いろんな意味で」

「はい?」

 はぁ、と呆れたような顔をしながら、電子タバコを取り出し、吸い始める先生を見て。この人に相談しても解決できないのでは?と、内心呆れながら、「先生室内でたばこアウトでは?」と言ったら、軽くこずかれたのは言うまでもなかった。

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