第30話 結果
師匠やアレスと会ってからかれこれ1ヶ月が経った
俺は師匠の言葉をギルド側に報告。唯一の弟子である俺の言葉は信じられると考えたのか案外あっさり話が通ってしまった
しかし1ヶ月が経った今特になんの異変もない。いいことではあるのだが…
「あいつだろ?あの魔女の弟子」
「あぁ。で、その魔女がこの国でなんか起きるっつったらしいぜ」
「1ヶ月経ってもなんも起きねぇじゃねぇか。わざわざ王都から招集うけたっつーのに」
どうやら俺への視線がかなり厳しくなった
俺が師匠はどこかに行ってしまったと言う報告も広まったようで師匠という盾を失った俺はただ友の少ない魔術師と成り下がったのだ
「…む、エティカとライトの悪口言ってる。あいつ黙らす」
「ばっかお前ありゃあ王都でかなり有名な冒険者だ。お前なら倒しかねないからじっとしててくれ」
俺はラミーユを横に座らせ落ち着かせる
「でも実際ラミーユの気持ちはわかるぞ。備えといても足りないくらいだろ。お前の師匠がそこまで警戒するんだからよ」
「そうだよ。ああやって油断してる方が痛い目を見るの」
向かいに座るアンナとレンも同意してくれる
現在地俺たちはギルドにいる。
理由としてはギルドから緊急収集がされたからだ。
内容は魔王軍の軍勢に備えろとの事
どういうことか聞いてみてもすみませんと謝られるだけで何も分からない
人がそれなりに集まったら皆に話があるとの事なので待っている訳だ
結構人も集まったしそろそろだろうか?
そんなことを考えていた時だ
「おいお前」
後ろから突然声をかけられた
振り向いてみると先程俺に厳しい目を向けていた王都から来た冒険者だった
「お前、あの最強の魔女エティカ・フロリアの弟子って本当かよ?」
「え?…まぁ」
金髪の男3人組だ。鎧や武器などを見るにかなりの業物。しかしなんというか、金にものを言わせて買って貰えた感が染み出ている
俺の事を噂程度にしか聞いてないような言い方的にこの街のことはあまり詳しくないようだ。
王都生まれ王都育ちといったところだろうか
王都では有名な冒険者らしいが見た感じ武器頼りなところがありそうだ
「ふぅん?お前みたいな弱そうなのが…ねぇ?」
男の言葉にラミーユがディレメスを抜こうとしたが俺は相手にバレないように必死に柄を抑える
そう、こいつは王都で有名ということは武器に頼っているとしてもこの国のためにはなっているのだ
最強の魔女の弟子と知っている人に近寄るだけで恐れられるような俺とは違うのだ
「弟子がこんなんだったら案外魔女の方も大したことないのかもな?」
男達がゲラゲラ笑う
周りを見渡してみるとあまりいい顔をしていない人が所々に。
俺の師匠が国家間での戦争を辞めさせたり、あの山を拠点にしたおかげで街荒らしの被害がなかった。そのことをよく理解している人はちゃんといるのだ…怖いものは怖いだけで
「まぁあくまで噂だし案外その通りかもな。要件はそれだけか?」
俺の言葉に男たちは笑うのをやめて直ぐに真顔に戻る
「今回お前がギルドに適当なことほざいたから俺たちがこうやってわざわざこの街に来たんだ。」
「はぁ」
「こうやって1ヶ月経ったのに特に何も起きやしねぇ。お前の言った冗談が俺たちを巻き込んでんだよ」
「…関係あるか分からないがこうやって冒険者招集されたんだが…」
「…チッ…さっきからうるせえなお前」
男は手を軽く振り払い、その直線上にいる俺の頭を攻撃しようとするが
「…」
ラミーユがパシンという音を立てながら止めてみせた
「ライトとエティカの事なんにも知らないくせに」
正直ラミーユは男の俺やレンなんかよりも背が高い。そのため傍から見ればかっこいいお姉さんなのだ。そんな人が明らかに怒ってる雰囲気を醸し出されるのはさすがに少し怖い
ラミーユは男の手をギリギリと力ずくで俺から離していく
「いててててててててて!なんだお前クソが!」
男が咄嗟に手を離そうとするがラミーユの力が武器頼りの冒険者なんかに負けるわけがなくなかなか振り払えない
「ラミーユ、もういい」
俺の言葉にラミーユがぱっと手を離し席に着く
俺のために怒ってくれたのだ。それを俺が咎める必要は無い
「んだよこいつら調子狂うな」
痛そうな素振りを見せる男はラミーユを睨みつけるが段々と口角が上がりにやりといやらしく笑う
「おいおいよく見たら美人じゃねぇかよ、そっちの女も」
…だと思った
よく見なくてもこの2人は美人だ。俺がこの2人を仲間にしたことで敵を作ってしまっていることを俺は知っている
「お前のせいでこの俺の大事な腕を痛めた。たっぷりと慰謝料を請求したいが俺も鬼じゃない。雑魚のお前たちがそんなに稼いでるわけないしな
その代わりにその女2人、1晩貸せ」
「ダメだ。ていうかやめとけ」
もうオチは見えている。こんなに目立ってしまえば相手から絡んできたという証言もある。
俺たちは手を出してないし手を出したとしても正当防衛になる
「はぁ?1晩貸すだけでいいっつってんだよ黙ってきけ貧乏人が」
俺はレンとアンナにアイコンタクトを送る
2人は肩を竦めた
「…わかった。じゃあラミーユちょっとこいつら痛めつけてくれないか。絶対に殺すな。」
「ん」
そういいラミーユは3人の首根っこを掴みギルドの外へ引きずって行った
男たちが何かを喚いているが正直なんて言っているのか分からない
その直後に鈍い音が響き、数分後にボコボコにされた3人とラミーユがギルドの中に戻ってきたのは言うまでもない
3人は俺に謝罪の言葉だけ告げ大人しく席に着いた
「あそこまでする必要なかったんじゃないか?」
「何発か殴ったけど倒れなかったから」
理由になっていない気がするがむしろラミーユのパンチを数発喰らい倒れなかったあの3人に感心する
下手な鎧ならこいつのパンチでただの鉄塊に早変わりするんだが相当いいものなのだろう
そうこうしているうちに行儀が悪いながらもカウンターのうえにギルド職員がたつ
「集まっていただいたのにお待たせしてすみません!他のギルドと連絡を取りあっていたら遅くなってしまいました!」
ギルド職員は息を切らしながら言葉を続ける
「実は別のギルドから連絡が来まして、現在魔王軍と見られる軍勢がこの街目掛けて向かってきているとのことです!」
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