第27話 エティカ・フロリア

溢れんばかりの膨大な魔力を感じさせるその存在は俺の前で堂々と腰に手を当て優雅にたっていた

間違えるわけがない。この圧倒的なほどまでな魔力は…

「師匠!どこいってたんだよ!」

俺の師匠、エティカ・フロリアはフンと笑う

「まぁちょっとした野暮用だ。だがもう少ししたらまた出ていくがな」

「そうなのか… ていうか何しに来たんだ?」

「もちろんバカ弟子の顔を拝みにな。それに少しだけ話がある」

「話…?」

首を傾げる俺に師匠は手を伸ばす

「なぁライト、お前、私と来ないか?」

「…は?」

「どこに行くかは言えないがお前が私と来ると言えばそれでいいんだ」

そんな突拍子もない事を言われても

「近い未来この世界は大波乱に陥る。その前にお前一人でも助けたいんだ」

今まで見た事のない師匠の顔だ。焦り、不安そんな感じだろうか

「大波乱ってなんだよ、俺一人だけってなんだよ、ラミーユと仲あんなに良かったのにどうするんだよ」

「…っ!ラミーユは連れて行けない、お前一人しか連れて行けないんだ…」

俺は師匠が伸ばした手を払う

「師匠、あんた言ってたよな?大事なものは何がなんでも守り抜けって。そうやって教えられてきた俺がはいそうですかってついていくわけないだろ。」

「ライト…」

俺の知ってる師匠は堂々としている人だ。そんな顔しないでくれ…

「師匠の言う大波乱が何なのか知らないけど師匠が残ってくれればなんとかなるだろ?」

「ならない…私でもどうにもならないんだ…

というか私には何も出来ない…」

師匠が何も出来ない?どういうことだ?

「…わかった。残念だがお前を連れていくのは諦める。だが約束してくれ」

師匠は悲しそうな顔をしたがすぐに後ろを向いて顔を見せないようにしてしまった

「死ぬなよ」

師匠がそういうと突然強い風が吹く。

風が止まるとそこにはもう既に師匠はいなかった


「近い未来に大波乱…か」

翌日俺は皆よりも先にグラさんと会い師匠のことを報告した

「あのマイナーな神が来たといい、エティカのその発言と言いなんか不穏じゃのぅ」

「師匠はなんも出来ないって言ってた。なんも出来ないことはないと思うんだけどどう思う?」

「情報が足りんからのぅ。まだなんとも言えん。そもそもそれは本当にエティカなんじゃな?」

「間違いないぞ。あの魔力の存在感は師匠しかありえない」

「確かにワシでもあそこまで魔力量のあるやつエティカしか見た事ない。偽物という線はありえないという訳じゃな」

グラさんは椅子に座りふーむと腕を組む

「マリーとノーラに魔王軍の動きを調べてもらっておるが特に目立った動きは無いらしい。そもそもその大波乱が起こる原因も知らんからのぅ」

やっぱりよく分からないよな…

「まぁ仕方ない。どっちにしろ気になることがあったし一調べするとするかのぅ。今から古い知人に会うわけじゃがライトくんもせっかくじゃし会ってみるか?」

「え?」


グラさんの転移魔術で飛んだのは洞窟の中だった

全体を見たわけじゃないので分からないが結構広いし、しかもそこそこ地下なのだろう。濃い魔力を感じる

グラさんの修行がなければ耐えきれなかったところだろう

「先に言っておくがこれから会うやつは一癖も二癖もある。あっちのペースに乱されんようにな」

グラさんはそういうと洞窟の壁をぺたぺたと叩く

「癖があるやつとは随分なご挨拶だな冷却死人よ…いや、今はただのグランディータだったな」

突然どこから現れたのは大柄で顔の整った男だった。身長的に2mはあるのだろうか。身長に比例したようなサイズの大きい帽子を目深まで被っている。黒いジャケットを着ており見た目は明らかに人間なのだが…

「ほっとけ、どうせ仕方なく幹部をしておっただけじゃし。お主はまだ引き継いでいるようじゃな」

「クハハハハ、魔王軍幹部は私にとっても都合いい環境であるのでな、もう少しは有効活用させてもらうぞ」

2人のこの会話的にこの人は多分…

「それよりもその小僧は?」

「ライトくんじゃ。お主と今から話がある訳じゃが彼にもいてもらった方がいいと思ってな」

「ほう?では先に挨拶をしようか」

男は腰をかがめ手を胸に当て頭を下げる。それは上級貴族のような礼だった

「私はアレス。魔王軍幹部第1席 《残虐暴漢》のアレスだ。今後ともよろしく頼むぞ小僧」

「残虐暴漢…」

なんと言うかグラさんの冷却死人といいそのまま過ぎない?これ名前つけた人ネーミングセンス無いだろ

「アレスはワシ、ノーラ、マリーと同じく伝説の勇者パーティーにより殺されなかった幹部じゃ。…まぁこやつは殺そうにも殺せんがな」

「クハハハハ、あの勇者たちは実に面白かったぞ。特にあの剣士、あれはなかなか良かった」

「それは一旦置いておこう。なぁアレスよ。魔王軍は今何をしようとしているんじゃ?」

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