第26話 女神という存在
「ボクたち神々は真実を見通すためにその人の過去とか頭の中とか見ることができるんだ。未来を司る女神はそのまま未来も見ることができるらしいけど…
ここまで経歴がハチャメチャな人初めて見たよ」
テトラはどん引いた顔をする
「君のお師匠様はボクたちの中でも話題に上がっていてね。転生者でもないのにあそこまでの膨大な魔力を手に入れることなんて今まで例がなかったんだ。そもそもあのパーティーは何千年に1人ぐらいのケースの存在が同時に現れた。天文学的なレベルの確率だったんだ。」
そういえば師匠からはあの勇者パーティーとはぶらぶらしてたら出会ったと言っていたが本当なのだろうか?
「もしかしてこのパーティーのリーダーの君がここまで面白い経歴ならほかのみんなも…?」
そう言って、難しい話だったのか眠ってしまっているラミーユの頭に触れようと…
「待った。そいつはダメだ。」
「え?」
「頼む、やめてくれ」
「わ、私の記憶みていいですよ!」
「俺のも!」
察してくれた2人がテトラの注意を引く
ラミーユは人間のドス黒い部分を大きく見せる記憶がある。たとえ女神だとしてもあまり知られたくない。たとえ復讐や怨念を司る女神だとしても
「ふぅん?…ま、この子のリーダーの君が言うなら仕方ない。2人も見ない。それでいいかい?」
「2人は…いや、俺が言えたことじゃないな。悪い。そうしてくれ」
「そういえばグランディータと会ってみたいんだけどいいかな?」
「はぁ?女神?こやつが?」
グラさんはテトラを前にしてもいつも通り飄々としている
「ディレメスが間違いないって言ってる。復讐や怨念を司る女神だってさ」
「あぁ、あのマイナーな女神か。どおりで神格が薄い訳じゃな。」
「神格?」
「うむ。神というのはな、自分を信仰してくれている者の祈りが直接的な力となる。信仰者の祈りは神格と呼ばれる、簡単に言えばオーラがあるんじゃがこやつからは本当に僅かにしか感じん。」
「言ってくれるじゃん?でも神格が薄くても濃くても元々のステータスはカンスト状態。無くたって別に困りはしないよ」
「ならなぜ神とやらは人間に信仰させるんじゃ?必要ないのであろう?」
何故か2人の視線の間でバチバチと火花が飛んでいる気がする
「まぁいいや、今日は君の目的を聞きに来たんだった。君はなぜ魔王軍からこっちに寝返った?」
「ふん、勝手に辞めさせられたんじゃよ。そもそも魔王のやつはワシらの動きに不審がっていた。ワシらは自由にしていてもいいという条件で魔王軍となったが自由にしすぎたんじゃよ」
「辞めさせられた?…最近幹部が数を揃えたのに関係がありそう…。でも実力のある3人を辞めさせてまで追加した新規幹部ってそれほどまでに強いの…?」
なにか不穏なワードをブツブツ言っているがここはあえて聞こえていないふりをする
「…って!もうこんな時間!早く上に報告を済ませないと!」
突然ハッと我に返ったテトラは慌てた様子を見せる
「4人とも!今日はありがとう!また来るね!」
そういい急いでどこかに行ってしまった
「ワシがいうのもなんじゃが随分物騒なのに絡まれておるみたいじゃのぅ」
「そういう星の元に生まれたと思うしかないな、悪いなグラさん今日は修行休みだってのに時間取らせちゃって」
「構わんぞ。随分珍しい客を連れてきてくれたからのぅ。こういうバタバタ感あるのは好きじゃよ」
グラさんと別れたあと4人で飯を食べ今日のところは解散となった。
俺はほかの3人を見送り山に戻る。
そろそろこの山から離れるべきなのだろうが手入れする人が俺しかいないため俺がいないとダメだ
今日1日起きた出来事を思い返すと自然とため息が出る
明日からはまた修行に戻るのだ。早く帰ってとっとと寝よう
そんなことを考えていると
「……?」
木が並び立っているこの山は俺が通っている道しかちゃんと整備された道はない。しかし少し離れたところに気配を感じる。
顔はそちらを向けることなく俺は道を進み続ける。気配も近づいているようにも感じる。
この山に立ち入るのは俺と師匠だけ。
近くの街の住人は師匠がいるかもしれないしそもそも所有しているため絶対に立ち入らない。
では何者か?
分からない。情報が足りなさすぎる
俺は意識を集中させ気配のある位置を詳しく調べる。
手の中に小さな火の玉を作り出し、気配の方に勢いよく飛ばすが
「おいおい。久々の師匠との再会なのに随分な挨拶じゃないか?」
軽い爆発が起き煙が湧き上がるがその中から真っ黒なロングヘアーをなびかせ、派手なドレスを着ている師匠が立っていた
「よっ。何年ぶりだっけ?ライト」
「し、師匠…?」
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