第24話 女

ライトとレンがノーラさんと、ラミーユがグラさんと対峙しているのを横目に私はマリーさんと並んで座っていた

「前回グラには戦う力を見られたと思うんですが正直私は回復職に戦う力なんて必要かどうか分からないんですよね。だって回復職が戦い始めたらそのパーティー回復職以外全滅してるってことですからね」

マリーさんはニコニコと笑いかけながら話す

「まぁでもグラはきっと伝説の勇者パーティーのような全員が最前線で動けるようになるまで育て上げるつもりだと思うんです。まだ当分先でしょうが。」

伝説の勇者パーティーの回復職は不思議な力で敵を消し去ることが出来ると御伽噺では有名。でもその手の内は知られていない

「アンナさんは他の皆さんと一緒に戦いたいですか?それともサポートに回りたいですか?」

マリーさんの問いかけに私は悩む。正直他の3人みたいに前線で戦いたさはある。ライトだってもともと魔術師は後衛で戦う役職なのに前線に出ている。でも私はあの3人のように上手く立ち回れる自信はない。それにもし私が前で戦いたいって言ったらみんなの立ち回りを見直さなければいけない。私のわがままでそんなのできない

「かなり悩んでますね。アンナさんがもし他の3人を気遣ってサポートに回ろうとするなら私は反対です。自分の意思が強いひとは強いですよ」

「私は意思は強くないですよ。何もかも流されるままです。」

そういう私をマリーさんはじっと見たあとに優しく微笑んだ

「では今日の修行はおやすみです。お話しませんか?」

「え?」

「私にもっとアンナさんのこと教えてくれませんか?修行なんてそのあとでも遅くないと思うんです」

「は、はぁ…」

「決まりですね、早速ですがアンナさんは」

マリーさんは私の耳元まで顔を近づけて小さな声で言った

「ライトさんのこと好きなんですか?」

「は!?」

「当たりですね、大丈夫です。誰にも言いませんよ」

マリーさんのペースに惑わされながらも私たちは長い間話していた


ライトとレンがノーラに倒されて、アンナとマリーが座り込んで何か話している。

私はそんな光景を見てからグラと対面して構えた

「ラミーユちゃんが人間の領域でここまで強くなられると人間を辞めたワシの立場ないんじゃがな」

「関係ない。人間だからとか人間じゃないからとか私には難しいからよく分からない。でも戦ってつよいのはよくわかる」

「ラミーユちゃんはディレメスを手にしても力に溺れないしちゃんと強いんじゃな…」

グラは氷で剣を作り、私に向ける

「今のラミーユちゃんはワシに1本取るくらいなら容易いじゃろう。じゃからそろそろ次の段階、ワシの首をはねるつもりで攻撃してみろ。…大丈夫じゃ。万が一があればマリーに任せるし何よりワシもそれくらいの覚悟じゃないとラミーユちゃんを強く出来ん」

「…わかった」

グラは万が一の話をしているけれど私はグラに一手らしい一手を当てたことがない。

体のどこにでも剣が触れればいいというルールに甘えた私は足とか腕とかしか剣を当てたことがない。

というよりグラはヘラヘラと笑っているけど隙なんてどこにもない。

私はディレメスを構え、動きのイメージをする

ディレメスは私の考えていることを読んで威力を調節してくれる。

イメージを一通りし終わり私は息を吐きグラに突っ込んだ


グラさんの修行の日々を乗り越え一月ほどたった頃、俺はほかの3人と久々に外食することにした。

いつも修行の日はアンナが弁当を作ってくれたり、グラさんが大量の食材を買ってきたりしていた訳だがたまにはこういうのもいいだろうと俺が提案した。

ちなみにお金はグラさんから少し貰った

「最近は修行ばっかでゆっくりできる日なかったもんな」

「マリーさんの修行は確かにグラさんとノーラさんよりは優しいけど疲れるのは疲れるし…

みんなホントすごいよ、たまに見てるけど毎日ハードそうじゃん」

「ん、グラ強いから楽しい」

「楽しんでるのお前だけだよ…聞いだぞ、この前ついにグラさんの首に剣を当てれたってな」

グラさんが咄嗟に剣で防いだがフィジカル勝負ならラミーユに分がある

そのまま押して首に剣をチョンと当てれたとか

…こいつちゃんと人間だよな?

「それで、今日どこに飯食うんだ?」

「なんか最近はんばーがーっていうのが流行り始めててそれを食べに行こうかなって思ってな」

「はんばーがー?はんばーぐと名前似てるけどなんか関係あるのかな」

「聞いたことない料理、たのしみ」

どれくらいか歩いていると香ばしい匂いが漂ってくる。とてもいい匂いで嗅いだだけで腹が空いてしまう

匂いのする方に目を向けると赤い出店のようなものが立っており店の屋根には大きくMの文字。

あれがはんばーがーの店だろうか

店の前にはたくさんの人だかりがあり自分たちの番になるまでにかなり時間がたちそうだ。

店に近づくと赤い制服を着た店員さんらしき人がチラシをくばっていた

「いらっしゃいませーようこそマクルメクルバーガーヘ!オープン記念で全品セール中でーす」

その店の決まり文句を言いながら渡してきたチラシを見る。どうやらメニューの一部が書かれているみたいでサイズによって変わる値段やサイドメニューなども書かれていた

「パンに野菜とかはんばーぐを挟んでるみたいだな、だから名前似てるのか」

「美味しいの?」

「食べてみないとなんともだな、みんなこの普通のはんばーがーで食ってみようぜ。俺が注文しに行くからお前ら席取っておいてくれよ」

レンが行列に並びに行き俺たちは沢山並ぶテーブルのひとつを確保した

端っこの方になってしまったがこの混み具合でテーブルを確保出来たのは幸いだろう。

レンも並びながらこちらの場所も把握したようだし俺たちは椅子に座る

「すごい混んでるね、やっぱりこれだけ混んでるってことは美味しいんだろうね」

「だな、しかも結構安い。…あ、レンに金渡すの忘れてる、ちょっと行ってくる」

俺はレンの元に行き金を渡し元の席に戻ろうと…

「ん?」

店から少し離れたところに店の様子を遠巻きに眺める1人の綺麗な白い服を着た女の人がいた

別にそれくらいなんも不思議じゃない。しかしその女の人のことを俺はどこかで見たことがある気がするのだ

金髪ショートのかなり胸の大きい女の人なんてノーラ以外に…?

そんな事考えていると気づいたらテープルについていた

「どうしたの?ぼうっとして」

「…なぁあの女の人どこかで見た事ないか?」

アンナとラミーユに見てもらうがラミーユは首を傾げる

「ノーラみたいな人だけど顔全然違うから別人?」

「だよな、それにノーラはあんな服着るタイプじゃないしな」

「…?あの人って…」

アンナは少しその女の人を眺めるとなにか気づいたようにハッとした

「あの人、アースがいた教会の中にあった絵の女神とそっくりじゃない?」

「は?女神?」

「だから、女神アストラテトラ様にそっくりじゃない?っていってるの!」

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