第23話 魔王軍

「なんということだ…」

黒装束の4人がルクスという名の街に来て、そのうちひとりが開口一番に放ったのはこれだった

そもそもこの街に入る時門番がおらず普通に入れたのだ。

そしていつもこの街に来る時はオークが迎えに来てアースの元へと連れていってくれる。

それなのにどれだけ見渡しても人、人、人。

モンスターなんてどこにもいなかった。

「1度、アースの元へ行こう」

4人はいつもアースのいる教会に向かう。

扉を開け中を見渡すもアースの姿はない。

あの人質の2人のいる地下だろうか。

そう思い地下に行くもアースはいなかった

「ん!?」

いないのはアースどころではない。人質の二人もどこにもいない

「これはまずくないか?アースがいないだけならともかく、あの二人が逃げたとなると魔王様になんと言えば…」

「と、とりあえずアースだ!アースを探すぞ。あいつを見つけて2人をどうしたか聞くぞ!」

4人は慌てて教会から飛び出し近くにいた女に声をかける

「す、すまないそこのご婦人。ここの教会の主はどこにいかれたのか?」

「え?ここの教会は何年も使われてなくて誰も出入りしてませんよ…?」

「そ、そうか。すまない、こちらの勘違いだったようだ」

その後数人の人間にも聞いてみたが答えは同じ。

この街の教会は使われていないことになっていたのだ

「これはまずいことになったぞ」

何者かの介入。

ここ数年で順調に進ん下準備が進んでいたのに全て壊されている。

「とりあえず魔王様への報告を優先しよう。この街は捨てる。直ぐに魔王城に戻るぞ」

4人は街を出て早速魔王城に向かう

それなりに歩いた頃、4人の前に真っ黒なフード付きローブを纏った1人の人物が現れた

フードを被っていて顔は見えないが魔王軍関係者だったりするのだろうか。

その人物は4人に向かって、大きい何かを放り投げる

大きい何かは4人の前でぐちゃりという音を立てて落ちた

「!!?」

それはアースの死体だった。偶然か、それとも狙ったのかアースの顔が4人を向いているようにカクンと落ちた

「お主らが探しておったのはこれじゃろ」

アースを放った人物は女性の声でどこかで聞いた記憶がある

その人物は氷の剣を作り、4人に突っ込んで行った


4人はアースと同じく魔王軍幹部次期候補と言われているだけあり相当な実力の持ち主だった

しかしたった1人に為す術なく殺されてしまったのもまた事実

4人を始末したフードの女は自身のフードを取る

「任務…いや、んんっ!任務、完了」

咳払いをすると先程の声とは違う低い女の声でそういった

フードの下には金髪の長い髪が隠されており、風になびいている。

「他人になりきるのも簡単では無いな」

その人物は氷の剣を道端に放り、どこかに消えてしまった


「よーしみんな、修行するぞー」

グラさんが俺たちの前に立ちにこやかにそう宣言した

「え、あの修行って2人を助けるためにじゃなかったのか?俺たちがまだ弱いからって」

「あー…あれも確かに修行なんじゃがな。なんというかワシも焦ってたみたいでな、みんなの強さがまだ育ちきっていないのに送り出してしまった。本当に申し訳ない。」

やっぱり焦ってたのか

「なので君たちをもっと強くするためにも今回は2人に修行を手伝ってもらう、ラミーユちゃんは引き続きワシが担当する」

「ん、グラならもっと強くなれる。ノーラとマリーもいつか戦える?」

「もちろんじゃよ。じゃがほかのみんなが修行している時はダメじゃよ?…そしてマリー、アンナちゃんを頼んだ」

「わかりました」

「最後にノーラ、お主にはライトくんとレンくんを任せたい。2人になるが大丈夫か?」

「問題ないわ、…まぁそういう割り振りになると思ってたしね」

「では2人とも、そしてみんな。開始といこうか!」


「…というわけで2人とも私が修行つける訳なんだけど、グラからどれくらい強いかはもう聞いているわ。それを踏まえて修行のメニューを考えていこうと思う」

おぉ、修行っぽい

「じゃあまず、2人ともそこに立ってくれるかしら」

ノーラの言う通り俺とレンは横に並んで立つ

「ま、やっぱり手っ取り早いのが自分より強いひとと戦うことだよね。かかってきてよ」

前回グラさんとは4人同時だったが今回は2人。

ラミーユとは違い俺、レン、アンナはグラさんに一騎打ちを挑んでいないため久しぶりの格上との対峙となる

ノーラは両手にバチバチと電撃をまとい構える

「グラとは違って1本とるんじゃなくて私に一回も触られなければOK。私も指でチョンって触るとかじゃなくて両手でちゃんと触るよ。制限時間は5分。頑張って避けてね」

ノーラは両手をワキワキして俺たちににじりよってくる

両手で触られるのなんてほぼ不可能だがグラさんレベルなら余裕だ。つまりノーラやマリーもそれくらいは平気でこなしてくるだろう。

よって油断せずに警戒しつつ距離をとる

しかしノーラがフッと消え、一瞬で俺の目の前に現れた

「はい、タッチ」

ノーラの手が触れる寸前で飛び退く

「あれ?よく躱せたね」

ノーラは手をパキパキとならしながら俺ににじりよってくる

しかしレンが背後に周り剣を構えており、俺は注意をそらすべく魔術をいつでも放てるように手を構える

レンが大きく剣を振りかぶりノーラに向けて振り下ろしーーーー

「左」

ノーラがノールックで右にズレてレンの剣を躱す

レンの剣はそれだけにとどまらず何度も振るい畳み掛ける

レンの剣もスピードなら目にも止まらないほどのスピードで普通一回はかすってもおかしくないが

「右、斜め下、上、左」

と言ったようにレンの剣がどこに来るかを的中させながら見事に避け続ける

「剣筋はいいね。ちゃんと重心も上手くコントロール出来てるし。でもあともう一歩かな」

そういいノーラは素早く振り向くとレンの懐に潜り込み腹に両手を押し込んだ

バチンという音がしてレンに電撃が駆け巡り倒れてしまう

「もちろん気絶してるだけだよ。数分すれば目は覚めるし」

ノーラはまた電撃を両手にまとい構える

俺は1度少しだけ距離を取りノーラに向かって手をかまえ魔術を発動し手から放出される

しかしその瞬間ノーラが俺の懐に潜り込み俺の手を上にずらし直ぐに両手で俺に触れる

手を抜いた格上にさえ勝てない無力さを感じながら強い電撃により俺の意識は飛んでしまった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る