第20話 ルクス

隣町であるルクスの正門が見え始めたので一度立ち止まり様子を伺うことにした

街は大きな壁に囲われておりモンスターの侵入を警戒しているように見える

はたまた侵入されて困るのはモンスターか人間か…

「門兵がいるな、普通に旅中の冒険者として通してもらうなら堂々と行くが1番なんだが…」

「これから教会勢力とドンパチしようとしてんのに堂々とか…」

「あ、向こうの道から荷馬車が来てるわよ」

アンナが指さす方向を見てみると確かに大きな荷馬車がせいもの方に近寄っていた

少し時間が経つと荷馬車は正門の前に止まり、街の中から門兵が数人か出てきて荷馬車の中身をチェックしている

問題無しだったのか荷馬車は街の中に入っていった

「あれぐらい入念に確認しているあたり、冒険者カードを見せる必要はありそうだな…」

「素性が分からない冒険者とか魔王軍が関わってる街からすれば警戒しなくちゃいけないし」

幸いにも俺たちがいるのは木が生い茂っている道で向こうから俺たちは見えないためもう少し様子を見ることが出来る

「そもそも4人ともフード被ってるから危なすぎるよな」

「だからって他の格好は顔バレるしなぁ」

どうやって潜入するか悩んでいるとラミーユが袖を引っ張ってきた

「どうした?」

「見つかっちゃった」

ラミーユの言葉に振り返ると先程の門兵のひとりがこちらを見つめていた


正門の前に俺たちは立つと怪しそうな目で門兵がこちらを見てきた

正門が少し空いていたので隙間から覗いてみると街の中からもこちらを覗いているようでなにか話し合っている。そのうちひとりが奥に入っていった

「あ、あの。この街にどういったご要件でこられたのですか?」

門兵の当然な質問に俺は声を若干低くするのを意識しつつ端的に答えた

「…旅の途中だ」

「なるほど、ではほかの3名もお仲間ですか?」

「…そうだ」

「…立派な武器を持っておられる方もいますしもしかして冒険者でしょうか?」

「…あぁ…」

「なるほど、では冒険者カードを拝見しても?」

「不要だ」

「不要って…それでは街に入ることはできませんよ?」

「俺たちはこの街の支配者に用がある」

「神父様にですか?…でしたら尚更カードを見せて頂かなければ…」

さすがに逃げるしかないか?一旦引き返してもう次は堂々と来よう。ファーストコンタクト最悪だったから向こうの印象も多分最悪だよ

そんなことを考えていると門がギシギシと音を立てながら開く。

俺はゆっくり開く門の向こう側にいる人物を見た

「おまちしておりました。この者たちのご無礼をお許しください。我らの主様が教会にてお待ちしております」

そこに居たのは人間の言葉を流暢に話すオークだった

オークは豚のモンスターで人間のように二本足で歩き、言葉を話す。

普通なら裸なのだが白い服を身にまとっていた。まるで教会のシスターのように。

「少し待ってくれ、こちらで話がある」

「もちろんです。お済みになられましたらお声かけしていただけますか。主様に案内をおまかせされているものでして。」

「わかった」


俺たちは街の隅にかたまり、コソコソと話し始めた。

「なんで通れたんだ?」

「わからん。でもお待ちしておりましたって言ってたし誰かと勘違いしてる可能性はあるな。実際教会のトップの直属の部下のはずのオークが出てきたんだし」

「フードのおかげで顔が見えないから勘違いされたってこと?」

「かもな。まぁあのオークの言う主様ってのがグラさんの仲間2人を捕まえた犯人か関係者で間違いないだろ」

…とりあえず長くなっても疑われそうなので案内役のオークに声をかけ、教会へと向かった

オークの案内で辿り着いたのはかなり大きめの教会だ

真っ白な作りでこの街の中で最も大きい建物なのではと思える

「主様がこの中でお待ちです。どうぞ」

俺たちは扉を開け、中に入っていく

オークは外で護衛なのか中までは入ってこないようだ

中に入るとすぐに礼拝堂が広がっており、横に長い椅子が何列も並んでおり1番前には女神の絵が飾られていた

そしてその女神の絵を黒いフードを纏った人物が眺めており、ゆっくり振り向く

「よくぞ来てくれた我が同胞たちよ。例の作戦のためどうか力を貸し…」

完全にこちらを向いた直後俺たちを確認し固まる

「誰だ貴様ら」

男はフードを取り俺たちを見つめる

「報告では我が同胞が来たと聞いていたが…オークのバカどもめ、勘違いにも程がある」

男は一見ただのやせ細ったおじさんのような見た目だが只者では無いと何となく感じる

「はぁ…。何用だ。というか誰なのだ。なぜ人間の貴様らから強いアンデッドの匂いがする?」

周りにはこの男しか気配がしない。俺たちと勘違いしていた人物と密会でもするはずだったのだろうか

「この教会の地下に2人捕まっているのは本当なのか?」

「まず誰かを教えて欲しいものだが今のでだいたい察した。あの二人に用があり強いアンデッドの匂い。貴様らグランディータの手の者か」

男は片手をこちらに向ける

「地下に2人掴まっているのは本当だ。これから用があるのでな、とっとと終わらせてもらう」

先に動いたのはラミーユだった。一瞬のうちに間合いを詰めて男の腕を切り飛ばす。

「ちっ!」

しかし男も咄嗟にラミーユを蹴り飛ばし距離を取った

「なんという速さだ、貴様本当に人間か?

どうやら本気で相手をしないといけないようだな。…自己紹介がまだであったな。我が名はアース。魔王軍幹部候補の1人。《幻想》のアースだ」

アースは俺たちに向かって手をかざし何かの魔術を放った

攻撃の魔術ではないようだが特に異変はない。ディレメスの赤い宝石が光り始めたくらいだ。

ディレメスがふむ…とつぶやく

(幻術…残念だが我の常在スキルとしてそういった魔術は無効化される。)

「は?」

神器が神器しているところを見ておぉ…と感心しているとアースは相当絶望した顔になっていた

俺たちは武器を構えてアースににじり寄った


「なんというか…呆気なかった」

「活躍したのラミーユだけだったもんな」

「ん、でもあいつの蹴り強かった。幹部候補なだけはあった」

「名前的に幻術使いなのにフィジカルも強いってこと?怖ぇ…」

俺たちはアースを倒した後、教会の中を探索していた

外がやけに静かだが誰にもバレなかったのだろうか

「ライト、ここ」

ラミーユがディレメスで大理石で出来た床をトントンと叩く

他の大理石の部分とは違いそこだけ音が違った

確認してみるとやはり階段があり地下に続いているようだった

階段を降りるとまるでダンジョンのような洞穴が広がっていた

明らかに隠し部屋。

俺たちは警戒しつつ洞穴を奥へ奥へと進んで行った

少し歩いたところで壁になりつけになっているのが二人の女性いた

2人とも裸になっており今は意識がないようだ。ところどころに傷ができており拷問か何かをされたあとのように見える

俺とレンは、アンナとラミーユに拘束を解いてもらっている間、何となく後ろを見ていた

なんとなくだ。そう。別に振り返ったらアンナに軽蔑された目で見られるからとかではない。

ラミーユが袖を引っ張ってきたので振り返ってみると2人は黒いローブを被されており、アンナが回復魔法をかけていた

1人は赤い髪のおっとりした雰囲気の顔つきの女性で見た目はほぼ人間。先程ちらりと見えたしっぽが無ければ人間と言われれば信じてしまうだろう。ちなみに何がとは言わないがかなり大きかった

もう1人は黄色い髪の幼い容姿をした女性。こちらもほぼ人間なのだが頭に小さくツノがあり、そのツノさえ隠せばこちらも人間と言われれば信じてしまうだろう。ちなみに何がとは言わないが幼い容姿なのも相まって少し小さかった

「ライト今失礼なこと考えてなかった?」

「いえ全く」

とりあえず俺たちは2人の意識が戻るのを待つことにした



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る