第18話 真意
「4人とも、ワシの修行についてきてくれた!」
修行が始まって1週間がたった。グラさんいわくもう既に俺たちは成長しているとの事だが…
「本当に強くなってるのか…?実感がないな…」
「みんな強くなってる。やっぱりグラすごい」
ラミーユがそういうが本当に実感がない。この一週間まともにやったのはゴブリン討伐だ。自分たちで勝手に自主トレとかしていたが。
「ライトくんの言う通りあまり実感がないじゃろうな。ワシがそうやって調整してきたからじゃ」
調整してきた?
「みんなには毎日ゴブリン討伐をしてもらったわけじゃがこれをすることでどう強くなると思う」
「レベル上げとかか?」
「それもあるのう。じゃがレベル上げだけならワシが強いモンスターを相手して他の誰かがトドメを刺せば経験値を得られる。違うか?」
たしかに。その通りだ。
「ワシはこの修行の初日、みんなにはこのダンジョンに魔力を送り込みゴブリンたちを発生させたと言ったんじゃが実は少しずつ魔力を強めていった。日が経つにつれゴブリンは強くなっていたんじゃが気づいたかのう?」
グラさんの言葉にレンが頷いた
「本当にちょっとずつな。切る時に違和感があったと思っていたけどそういうことだったのか」
「そうじゃ。人間は案外毎日少しずつの変化には気づかないもんなんじゃよ。違和感があるくらいじゃが。さて、もったいぶるのはやめよう。
みんな気づいておったかわからんが実はこのダンジョンは地下8階まである。それを一日1階ずつ下に行っていた訳じゃな。」
「は、?」
この人いまなんつった?
(なるほど。だから感じる魔力が日に日に濃くなっていたのか。そして下の階から感じる魔力も。)
「お、さすが神器じゃな。魔力感知がちゃんとできているとはのう」
「ちょ、ちょっと待てよ、俺たちは入ってきて階段を降りた覚えはないぞ?常に1階にいたはずだ」
「む?簡単じゃ。ダンジョンの階層全部転移しておるから、ほら、階段下るのってだるいじゃろ」
何を言ってるかわからん…
「あれ?でもこのダンジョン8階まであるなんて聞いたことないよ?1階しかないって聞いてたんだけど…」
「なんかダンジョンに魔力を送り込む時やけに下まであると思ってのう。確認してみたら8階までいたという訳じゃな。そのおかげで未発見の財宝でがっぽりじゃよ」
(なんというか、規格外だな。このリッチ)
神器が引いてるじゃんか
そもそも階段降りるより階層を転移する方が面倒だろ…
「濃い魔力が漂う環境で強いモンスターを倒した君たちは今かなり強くなっておる。そこでワシから最後の修行じゃ。」
グラさんがつま先で地面をコツンと鳴らす
すると突然風景が変わり大広間にいた
「ここはこのダンジョンの第8階。俗にいうボス階層じゃ。最後の修行というのはこのダンジョンのボスモンスター…」
背後で大きな音が鳴り響き砂が舞う
振り返ると、グラさんと初めて出会ったあの日に遭遇した大柄の筋肉隆々の鬼のような見た目のモンスターがいた。
「ゴブリンキングの討伐をしてもらおう」
ゴブリンキングが俺と同じくらいの大きさはある棍棒をレンに向けて振りかぶる
レンは大きく飛び退きギリギリでかわす。レンが元いた場所は大きく穴があいていた
「くっそ、ラミーユに頼りきってるのが仇になったな…」
ラミーユはグラさんと対峙している
ゴブリンキングは強いモンスターではあるがラミーユの敵では無い。神器のディレメスを持っている状態なら尚更だ。
そこでグラさんはラミーユと戦おうと少し離れたところに行ってしまった
「ていうかこのゴブリンキング、なんかでかくね!?3mぐらいはあるぞ!」
レンが言う通り通常の個体よりかなり大きい
ボス個体と言うやつだろうか?
「あぁそれはワシがこのダンジョンで得た財宝を売った金で食材を大量に買い、それを食べさせた。つまりワシが丹精込めて育てたゴブリンキングじゃよ」
グラさんはラミーユの剣閃をかわしながら楽しそうに言う
あんたのせいかよ
俺はアンナを後ろに下げながらゴブリンキングと距離をとる
…そういえばこの前アンナが顔真っ赤にして話しかけてきたんだが結局当たり障りのない雑談をしていたが何か言いたいことがあったのだろうか
アンナは白魔術の回復魔法と支援魔法を俺たちにかけてくれている
それもあって時間が経つにつれゴブリンキングを追い込んでいき、トドメをさした
「終わったな。ゴブリンキングだしもう少し手こずるもんだと思ってた」
「なっはっは。じゃから言っておるじゃろ。君たちは強くなっておるんじゃ。」
頬に傷をつけたグラさんが笑いながら歩いてきた
「あぁこのキズか。いやぁラミーユちゃん強くなっておるわい」
グラさんに傷をつけられたのはかなり快挙なのだが当の本人のラミーユはどこか満足して無さそうだ
「グラ本気じゃなかった。」
あー…そういう…
しかもグラさんはリッチの常在効果として自然回復というものがあるからあれくらいの傷ならすぐに消えるだろう。
「さて、まだ強くなった実感がなさそうじゃが…本題に入るとしようか」
グラさんが指をパチンとならすと空中に映像が現れる。この国の地図で、この街から少し離れたところに大きな赤い点がある
「ここにワシの仲間が2人とも捕まっておる。正直いうが教会にはアンデッドは入れん。君たちに頼るしかないわけじゃが…」
グラさんは俺たちに頭を下げて言った
「頼む。ワシの仲間…ノーラとマリーを助けてくれ」
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