第16話レン

俺は剣の手入れをしながらふと考える

あいつの師匠だったり、ラミーユだったり、グラさんだったり。あいつ経由ではあるもののかなりの強者と出会えている。強者の中でも最上位と言ってもいいレベルの。

グラさんは魔王軍幹部と言っており、つまりはあれぐらいの強さの敵が今後ゴロゴロ出てくるのだろう。

ならば俺は今の自分に満足なんかしてはいけない。もっと強くなるべきだ。このチームを守るためにも。

だが今の修行はたまに湧くゴブリン退治。正直ラミーユみたいにグラさんとやり合っていた方が授業になるんじゃないか?

なにか考えがあるとは言っていたがよくわかっていない。

最近はあいつと対面したりして自分なりに修行をしているがダメだ。あまり成長している実感がない

「どうすればいいんだろうな…」

「ふむ、レンくん。今の状況になにか思うところがあるようじゃな?」

いつの間にか俺の横にはグラさんが立っていた

先程まであいつと話していたはずだが…

周りを見てみるとどうやらアンナもいつの間にか来てきたようでライトとなにか話している

「修行つけてもらってる身でなにか言えるような立場じゃないのはわかっているが…」

「まぁ気持ちは分かる。じゃが少し待っておくれ。あまり感覚的に分からないと思うが君たちはちゃんと強くなっておる」

ゴブリン退治で強く?レベル的な話か?

「それはあまり信用していない顔じゃな?君たちは近くにラミーユちゃんと言う強者がいるからか自分の微々たる成長を見逃しておるようじゃ。」

ライトくんの場合はあやつになるんじゃがな…とグラさんは苦笑する

「人間の限界なんてたかが知れとる。例外を沢山見ておるだけじゃ。ワシも人間の頃そういう悩みを抱えておったぞ」

「グラさんって人間の頃どれくらいの実力だったんだ?やっぱり今よりは弱いだろ?」

「当たり前じゃ。ワシのこの魔力はリッチじゃからこそ。まぁリッチは優秀な魔術師しか成ることは出来ないんじゃがな?」

グラさんはいたずらっぽく笑う

「やっぱ生まれ持った奴と元々持ってない奴とじゃ天と地ほどの差があるよなぁ」

「ん?レンくんは強いぞ?」

「建前はいらねぇよ。」

「建前なんかじゃないぞ。なぁレンくん勇者が強かった理由ってなんだったと思う?」

勇者が強かった理由?

「そりゃあ生まれ持ったか努力の末か手に入れた強力な力だろ?」

「そうじゃな?では努力の末に力を手に入れていた場合なぜ努力できた?」

「なぜ努力できたか…?」

強くなりたいとか、魔王を倒して世界を平和にするためにとか思いつくは思いつくが…グラさんが求めている答えはそうじゃない気がする

黙ってしまった俺を見てグラさんはまっすぐ俺を見て言った

「仲間たちを守るため。ワシはそうやって見えた」

「はっ…綺麗事だ。そんなんで強くなったら苦労なんかしねぇよ」

「…本当にそう思うか?ならレンくんはこれ以上強くなれん。…なんてな、本心を言ってみるんじゃ」

「…確かに俺もあいつらを守るためにもっと強くなりたい。でも俺なんかが勇者と同じくらい強くなれるとは思っていない」

「人間の怖いところは意志が強いこと。意思が弱い人間は何も続けられん、意思が強いと妥協も許さないほどまっすぐ道を進む。レンくんは意志が強い人間じゃ。それだけで十分強い」

俺は意志が強い…?そんなことないだろうに

建前にも程があるし、ただの慰めにしか聞こえない

…でもまぁ…

「ありがとうグラさんさっきよりはマシになったよ」

「おう、いい顔じゃ。修行の方はワシに任せて君たちは親交を深めるといい。急がなくても強くなれる、一朝一夕で強くなられてたまるか」

グラさんはそれじゃといいフードを羽織ってダンジョンを出ていった

たまにああやって外に出ていくが何をしているんだろうか?外に出た日は大量の食品を持って帰ってくるが…それでその食品をダンジョンの奥に持って行っている

ダンジョンの奥になにかあるのだろうが立ち入っては行けないとグラさんに止められている

悪い人じゃなさそうなんだけどな…

「まぁいいか…」

俺は手入れしていた手を止めライトとアンナの本に歩み寄った


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