第15話 アンナ
「はぁ…」
私は実家の手伝いをしながらとある男の人のことをふと考える
私の実家は薬屋。この街では唯一の薬屋だったりする
パパとママが基本的にお客さんの対応するんだけど私もたまには手伝えと言われている
…私は将来家を継いで薬屋になるんだと思う。
小さい頃からそう思ってたし今もそう思っている。でも、何年か前に突然私の前にある男の子が現れた。
その男の子は将来私を冒険者チームに誘うと言ってくれた。そこからはその男の子ともう1人の男の子と遊んだりして毎日を過ごした。
そうやって過ごしているうちにもう1人の男の子とあまり遊ばなくなって、私を誘ってくれた男の子とまた二人で遊ぶようになってからかな、その男の子のことを意識するようになってしまっていた
最初はなんなのかよく分からなかった。男の子と会うとドキドキするし目も合わせられなくなったり、遊ばない日なんか一日中その子のことを考えてたりなんかもした。
でも少しずつ私はその男の子のことを好きなんだとわかった。
どこを好きになったのか分からない。多分1番近くにいた男の子だったからかな。一緒にいるだけで落ち着くし何して遊んでも本当に楽しかった。
最近その男の子が成人して約束通り私をパーティーに誘ってくれた。そこまではいい。そこまでは良かったんだけど…
「あの女の子…ライトと近くない?」
ラミーユ・カフィ。年上とは思えない語彙力と幼い雰囲気。過去に何かあってそうなってしまったと聞いてはいるもののどうしても許せない気持ちになる。
完全に油断してた。ライトは私をパーティーに誘ってくれるくらいだしきっと特別扱いしてくれてるんだろうって思ってた。
胸の中で怒りのような不安のようなモヤモヤが湧き上がり頭を抱える。
そもそもライトもライトだ。そういう子だからといってベッタリくっついても大して反応みせないで平然としている
2人っきりならあれくらいの距離感が普通ってこと…!?そんなのずる…じゃなくて破廉恥よ!
この前も二人でギルドに報告とか武器見に行ったみたいだし。あまりムードがあるとは言えないけど2人っきりていうのが良くない。
あの二人がお互いに恋愛感情を持っていないというのは見ていたらわかる。ライトは仲間としてみているしラミーユは保護対象としてみている気がする。分かってはいるんだけど…
「アンナ〜薬の調合は順調かしら〜」
扉の方を見るとママが入ってきていた
おっとりした雰囲気でとても似合うピンクのエプロンをつけ、シワやシミが無いため40代とは思えないくらい若く見えるとても綺麗なママだ。
「あ、ごめんちょっと考え事して…」
「わかるわよ〜最近忙しそうだもんね〜ライト君のことでしょ〜?」
「え!?」
「良かったらママに話してくれないかしら〜パパに言えないでしょうしね〜」
ママは私の対面に座り薬を次々と乳鉢に入れ始める
「…」
「〜♪」
ママは鼻歌を歌いながら作業の手を止めない
「…これは私の友達の話なんだけどね?」
私は様々な薬の中から一種類を取り、乳鉢に入れた
「なるほどね〜アンナのお友達はその男の子のことが好きなんだけど関係が壊れるのが怖いのね〜」
「そうなの、告白したとしてそれがOKでもダメでも結局前みたいに友達のままでとはなれないでしょ?それが怖くて…」
「うんうん、わかるわよ〜ママにもそんな時期があったわ〜。ふふっ親子ね〜」
「ママにもそんな時期…って私のことじゃないって!」
顔が赤くなるのを感じながらも何とか抑えようと落ち着かせる
「パパは今もだけど昔はかなりモテモテでね、ママなんかよりもかわいい女の子なんて沢山いたし。パパがいる場所は周りに女の子が囲っていたぐらいよ〜」
…それはすごい光景だ…
パパは薬屋の跡継ぎというのもあり玉の輿というのもあるけど普通に顔がいいから今も健康なのに診察しに来る女のお客さんがいるくらいだ
「じゃあママはどうやってパパと付き合うどころか結婚までこじつけたの?」
「簡単な話よ〜?どんな女の子たちよりも前に出て必死にアピールしたの。でも必死ってバレたらイメージが崩れちゃうから姿では見せなかったけどね」
こんなおっとりしてるママが他の人よりも前に出てアピール…?あまり考えられない…でも…
「ママ、ちょっと出かけてもいい?」
「いいわよ〜薬の調合もこれで最後だし。どこに行くの〜?」
「ラ…ちょっと今の話を友達に!」
私は大急ぎで部屋を出た
「ふふふ、若い恋っていいわね〜」
ママが何か言っていたけどよく聞こえなかった。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい〜」
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