第13話 神器

「まさか、魔王城に神器が飾られているとはのう…」

グラさんはラミーユが持つ剣を考えるような素振りを見せながら眺めている

神器。師匠いわく、伝説の勇者が持っていた剣を筆頭に、一体どのように作られたのか、どれほどの職人がどれだけ集まれば作ることが出来るのか未だよく分からないほど強力な武器がこの世界にはあると聞いたことがある

師匠が持つ杖も神器と呼ばれる逸品で所持者の魔力の火力上昇、射程範囲拡大化など普通の杖の何百倍も効果があるらしい

しかし手に入れることが出来ればすぐ使えるという訳では無い。

神器は人を選ぶ。選ばれた人物でなければただの武器になりさがる。剣であれば普通より少し切れ味が良かったり、杖なら普通より威力が高くなる。

「まさかラミーユちゃんが神器の適応者。…いや、ラミーユちゃんくらいの実力なら神器の適応者でも変じゃない。偶然この剣に当てはまっただけと…」

顎に手を当ててなにか悩んでるグラさんを他所にラミーユが俺の服を引っ張ってきた

「ねぇライト。この剣喋ってる」

「はぁ?剣が喋ってる?気のせいじゃないのか?俺にはグラさんの独り言しか聞こえてないぞ」

「むぅ…困った」

「…なんて言ってるんだ?」

「よく分からない。難しい言葉ばっかり」

冗談じゃないのだろう

…グラさんには悪いが1回意識をこっちに戻らせよう

俺は手を叩きグラさんの注意を引いた

「なぁグラさん、この剣喋るらしいんだけどなんか知ってる?」

言葉にしてみると自分でも何言ってるか分からなくなったがグラさんはなにか思い当たることがあったようだ

「なんじゃライトくん、エティカの杖も喋るんじゃぞ。聞いてなかったのか?」

「は?なんだそれ聞いたことないぞ」

「正直あの性格じゃし言うのが恥ずかしかったんじゃないかのぅ。ラミーユちゃん、その剣の言葉、みんなにも聞こえるようにできるかのぅ?」

グラさんの言葉にラミーユは剣を見つめてできる?と首を傾げた

すると剣の柄の部分に埋め込まれた赤い宝石がチカチカと光る。

(悪いが少年、我の声聞こえておるか?)

低い男の声がした。俺でもレンでもないのでこの剣が声の主だろう

「あ、あぁ。ちゃんと聞こえてる」

(それは良かった。では改めて自己紹介だ。初めまして。我を振るうことの出来る者とその仲間たちよ)

なんだろう。神器って言うからちょっと偉そうなやつかと思ったら意外と紳士的な口調だ

(我は神々により創られし存在の1つ、聖剣ディレメス。神々の命令でこの地に降り立った神器だ)

これは確かにラミーユにはちょっと難しいか…?

俺だって何言ってるかわからん

ていうか神器ってちゃんと自分のこと神器って知ってるんだな。

「ほう?神々とは大きく出たもんじゃ。とっくに崇拝するのはやめたが神が本当にいるかは気になるところじゃな。」

(もちろん実際にいる。我は正真正銘神々の手により作られた存在。こう言っては不敬だが親と言っても過言では無い。)

まぁ『神』器だしな。

「色々聞きたいことがあるんじゃがいくつか質問をいいかのぅ?」

(我が答えられることであればいいだろう。我の所有者よ。壁に立てかけてくれぬか。無機物である我だがずっと握られると正直痛い)

ラミーユは正直にごめんといいディレメスを壁に立てかけた

「まずお主はなぜ魔王城で飾られていた?お主の元々の所有者はどこに行ったんじゃ」

(ふむ。我の元々の所有者は魔王軍との戦いにて命を落としてしまった。神器である我とて本体である所有者が傷を負ってもそれを回復することは出来ないからな。そうして我は魔王軍の者に拾われ、処分に困った我を飾ることにし、5年ほど年月がたった後に貴殿に回収された。)

「確かお主を回収したのは20年くらい前じゃったか?」

(む。もうそんなに年月が経ってしまったか。我を振るうことが出来る者と出会ったため眠りから冷めたが…)

はぁとためいきをつく。

無機物なのに人間味のある仕草をするんだな

「では次、お主は神々の命令によりこの地に降り立ったと言っていたがその命令とは?」

(我に課された命令はこの世界から気が遠くなるほど遠方から来た者、元々の所有者のサポートだ。そして元々の所有者の目標というか、最終的な目的は魔王の討伐。神々はこの地の状況を理解しておられる。今こうしている間にも次々とこの世界に勇者候補を送り込んでいるのだ)

要はディレメスと元々の所有者は神の使徒みたいな感じで送り込まれたってことか?

話のスケールが大きくなりすぎてよく分からなくなってきたな。

(少年よ。我からも質問があるのだが、この世界に強力すぎる武器を持った者や、異次元級の魔力を持つ者が前触れもなく現れたことがないか?)

強い武器や魔力を持った人…?

「あぁいるな。このダンジョンの近くにある街に現れては直ぐに王都に行く強い冒険者が。」

(全てかどうかは我も分からないがそういった者たちの大半はそうやって神々により違う世界から送り込まれた…いわゆる転生者というものだ)

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