第12話 修行

グラさんは修行のためにこっちのダンジョンに移動したと言っていた

弱いモンスターはダンジョンに漂うマナを糧に誕生するため、定期的に退治しないと溢れかえってしまうそうな

グラさんがこのダンジョンに魔力を送り込むことでモンスターが生まれるペースが早くなり、俺たちはそれを狩り続ける、それがグラさんの修行だった。

「ワシが作ったあのダンジョン見た目に力を入れすぎてモンスターをまだ準備できてないからのう、弱いモンスターがダンジョンを傷つけたら嫌じゃし一旦ここを使わせてもらうとするぞ」

「グラさんさっき魔王軍側から人類側の味方に着くとか言ってたけどそれなのになんでダンジョン作ろうとしてんだ?」

魔王軍から寝返るのなら人類を傷つける意味がないのではないか

「ん?単純にワシがダンジョンの主になってみたかっただけじゃよ、深い理由は無いぞ」

「あ、……そう……」

とりあえず俺は、新しく出来たダンジョンは安全なので潜る必要が無いこと、それと一応念の為に魔王軍が復活したことをギルドに伝えに行くことにした


「はい、重要なお話ありがとうございます。ご協力感謝します」

俺だけで報告するつもりだったがラミーユがついて行くと言ったので2人でギルドに来ていた

基本的に俺が話すから暇だと思うし修行つけてもらってた方がいいと言ったがついて行くと聞かなかったのだ

だが結果として何年もこのギルドの中でモンスター討伐数上位の冒険者であるラミーユと一緒にいるというのが大きかったらしく怪しすぎる話も職員は真剣に聞いてくれた

「あの……俺が言うのもなんですけど信じてくれるんですか?600年間音沙汰なかった魔王軍の復活ですよ?」

「あのダンジョンの主が魔王軍幹部 冷却死人のグランディータだったんですよね?ギルド本部から判明してる魔王軍幹部の名前は知らされていますし、その本人から魔王軍について聞いたのでしたら警戒するに越したことありません。そもそもギルド本部は常に最悪を想定し実力ある冒険者を王都に集めております」

なるほど。

「ラミーユさんにも王都に招待されていたのですが…」

「私はライトの仲間だから」

「じゃあ俺が王都行くって言ったら行くのか?」

「行く」

行ったとしても俺たちから離されて実力派冒険者たちと共に行動することになるだろうがこいつは多分わかってないだろう

「では提供していただいた情報は本部に送らせていただきます。ありがとうございました」


報告を終えた俺たちはギルドの裏にある武器庫に来ていた。ここにある武器なら無償で貸してくれのだ。

俺は師匠から譲ってもらった杖やグローブがあるし、レンやアンナも親から貰ったそれぞれの装備がある。しかし身元のないラミーユはここから武器を借りているのだ。

職員が言うには冒険者は基本的にレベルが上がるにつれ自分に合った武器を入手しそれで冒険に出る。

時折現れる不思議な雰囲気の冒険者は既に強力な武器を手に入れているらしいがそんな業物を持った人がなぜこんな町に現れるのか。

…話がズレたがラミーユの能力は人類を超えているか超えていないかと言うくらいめちゃくちゃだ

グラさんは人類を超えていると言っていたが師匠は過去にまだ人類の範疇と言っていたのだ。

……強くなったのだろうか?

そんなラミーユの戦闘スタイルは静かな高火力だ

剣を一閃する時火力を高めるには普通大きく振りかぶるのだがラミーユは力を込めている様子もなく圧倒的なまでな火力を出すことが出来る

一度どうやってやっているか聞いてみたが

「ぐーっと込めてどーん」

と言われたため才能の差を感じ諦めた

そんなラミーユの戦闘スタイル故に剣は刃こぼれしやすい。実際今持っている短剣等もボロボロだ。

なので新しい武器を取りに来たというわけだ

武器庫には一般的な剣、盾、杖、弓矢などはもちろん、シューティングスターや斧などちょっと扱いずらい武器が飾られている

「やっぱり盗賊って言う職業だし短剣が1番相性良かったりするのか?」

「ん、しまいやすいし使いやすい。ライトも盗賊やるなら短剣がおすすめ」

パーティーに2人も盗賊はいらないだろとか俺はお前ほどフィジカルに自信はないとか思うところはあるがこいつは嫌味とかではなくそう思ってるから口にしている。

ならばそんなツッコミは無粋だろう

「もし盗賊になったら参考にするよ」

「ん」

そんな会話をしているとギルドの女性職員が話しかけてきた

「ラミーユさん、これで何度目ですか…?あなたの討伐記録はよく理解してますが定期的に武器をダメにされてはこの武器庫もいつか底を尽きてしまいます!」

「ん、こんなに武器あるのに?」

「失礼ですがここにある短剣は全てあなたのものという訳では無いのです、初心者の盗賊の短剣でもあるんです」

ギルド職員の言葉はごもっともだ

だがそんなに武器をダメにしてるのか?

「ちなみにここで武器って何回くらい貰ったんだ?」

「よく覚えてない…でも前はここにある何倍かはあったはず…」

ちらりと女性職員を見る

「ラミーユさんがこの武器庫から借りた短剣は100はくだらないです…あくまでこの武器庫は貸し出してるだけで提供している訳では無いのですが討伐記録等の貢献度故に大目に見ていたのですが本来ならその武器の請求が…あっ!待ってください逃げないでください頼れるのはあなただけなんです!」


「ってことがあったんだけどさ、グラさんなんかいい武器ないか?」

「確かにラミーユちゃんの戦い方的に武器がすぐにダメになるんじゃろうな…。そうなると短剣と言うよりは壊れづらい武器の方が良かったりするんじゃないのか?」

なるほど

「短剣以外に試したことは?」

「ある、普通の剣の方が使える」

なら普通の剣に…ん?ちょっと待て

「普通の剣の方が使える?」

「ん、短剣より力を入れられるし扱いやすい」

「じゃあなんで短剣使ってんだ?普通の剣の方が使いやすいんだろ?」

「…?。ライトが昔盗賊は短剣しか認めないって言ってたから」

俺そんなこと…言ったわ…

盗賊は短剣の方が合うしそっちの方がかっこいいってラミーユに語ったことある

「…悪かった、無理させたな、普通の剣を使ってくれ」

「ん、無理してないから平気。短剣も良かったから」

ということはこいつは100%の実力を発揮せずに師匠やグラさんに認められ、討伐記録上位になったと、どちらにせよ化け物か

「そうじゃなぁ、普通の剣で壊れづらい剣となると」

グラさんはどこからともなく1本の剣を取りだした

金色の柄の真ん中に真っ赤な宝石のようなものが埋め込まれたそれはもうかなりの業物の剣だ

「これは魔王城からこっそりいただいてきた剣なんじゃがかなりの逸品じゃと思うぞ」

ラミーユは剣を手に取り握り具合を確かめている

「しっくり来てそうじゃな。振ってみたらどうじゃ?」

「ん」

グラさんが来い来いと手のひらをくいくいっと曲げる。ラミーユは慣れた手つきで剣を構え、グラさんに一閃。

「っ!?」

グラさんは慌てて飛び退き斬撃を受け流した

「おぉ…」

ラミーユ自身も驚いており剣を見つめる

「な、な、な…なっはっはっはっ!なんじゃそのデタラメな斬撃は!」

グラさんが元いた場所は爆発したかのような跡が残っていた。

「いつもとは違って力込めたのか?そうは見えなかったがお前そういう戦闘スタイルだもんな」

「いや、本当に軽く振っただけ。素振りした時くらいの力しか込めてない…」

ちなみに事の成り行きを眺めていたレンとアンナは驚きすぎて言葉も出ない。

「なっはっはっ!その武器はラミーユちゃんにやろう!これはかなり面白いことになったぞ!」

グラさんだけが何か喜んでいるが…

「なるほどのう…ワシは使えんかったから気づかんかったがその剣、さては『神器』と呼ばれるものでは無いかのう?」

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