第11話 もっと強く

グラさんの仲間のふたりを見つけ出す約束をした俺たちはグラさんと出会ったダンジョンとは別の街の近くにあるダンジョンに来ていた。

弱いモンスターしかいないがほとんどの冒険者に探索されているため財宝なんて落ちてない

練習用のダンジョンと言われており、あまり危険視されていないダンジョンだ

そんなダンジョンの最奥でグラさんは俺たちに向かってこう言い放った

「ラミーユちゃんは人間の域を軽く超えておるから心配はいらんと思うが。ライト君、アンナちゃん、レンくんの3人はまだ弱いんじゃ。」

「そりゃあそうだ。まだ冒険者になったばっかりだしな」

「そうじゃな、じゃがこれからワシの仲間2人を見つけ出すとなるとその程度の強さじゃワシも困るんじゃよ。正直に言うとワシの仲間2人も人間では無いわけじゃがこの世界には人間が頂点の種族と思っておる人間がおって、そういう奴らから見れば魔王軍なんて反吐が出るほど嫌いな存在な訳じゃな。2人がいるところはそこで捕まっておる。」

人間種が至高と考える街や国は聞いたことがある。師匠が冒険者現役時代に立ち寄った街がそれに該当するんだが勇者一行は手厚くもてなされたが不老不死の存在となっている師匠だけは少し厳しい目を向けられたらしい。

勇者がそれに気づいて街を直ぐに出たらしいが、気持ちはわからんでもないのだが嫌いな魔王軍を潰すために動いている人に対する対応ではない。

「じゃあその街と戦争みたいなことになるんじゃないのか」

「その点はワシに任せろ。魔王軍に責任を取らせるんじゃよ」

グラさんは本気か冗談か分からないことを言うと手を叩いた

「話を戻すぞ。今回2人が捕まったのは宗教の地下のようじゃ。あまりいい噂を聞かない神父が所有しておって、軽く使い魔を使って偵察してみたら色々とふたりのものと思われる証拠が見つかった」

グラさんがどこからか取り出したのは金髪の髪の毛とそれよりも倍の長さのある赤い髪の毛だ。

「ちなみにこの2人は魔王軍の幹部を任されるだけあってかなりの実力者なんじゃ。自分で言うのもなんじゃがワシぐらいは強いぞ。対魔の魔術

を使われた可能性があるとはいえ2人を捕まえるとなるとかなりの手練れ。今のままで行ったら返り討ちになるどころか帰って来れんかもしれんからの」

グラさんは一瞬にして氷の杖を作り出し俺たちに向けた

「先程の続きじゃ、全員同時に殺すつもりでかかってこい。実力を調べさせてもらう」


グラさんと4対1の勝負をしてみるとはっきりと圧倒的な力の差を見せつけられた

グラさんに剣や魔術、飛び道具などなんでもいいから攻撃が当たりでもすればいいと言っていたが4人で攻め続けて既に15分ほど経過している、しかし一度も攻撃が当たらない。

「はい、そこ。背後を取ったからといって油断しちゃダメじゃぞ。本当に強い者は把握しておるし油断した隙に今じゃと3回は殺せておる」

背後に回ったレンの横薙ぎを大きくジャンプし躱す。

氷の杖を振り回しているだけのように見えるが戦闘能力が特化されているような強さのラミーユですら寄せ付けない戦いをしている。

リッチは魔術を得意としているため遠距離戦の方が得意のはずなんだが近距離戦でも手馴れているようだった

「そこ、チームワークが完全じゃないぞ。逃げ場を作っては数の有利が活かせん」

ラミーユの攻撃に合わせた俺の魔術も難なく躱される

「さて、こんなもんかの。思ったより動けるがまだ想定内じゃったな。」

グラさんは氷の杖を霧散させ壁にもたれかかった

「もしさっきあのダンジョンでワシと対峙していたら4人ともあそこで確実に死んでいたというのは理解してくれたかのう」

「そんなん出くわした時からわかってたよ、でもいざ見るとエグイな」

グラさんはなっはっはっはと笑う

「じゃが正直ライト君には期待しておったんじゃがな。エティカから近接戦のやり方を学ばなかったのかのう。あやつの事じゃしてっきり既に仕込んであるかと思っておったが」

「そこまでバレるのかよ…。まぁ師匠は魔術しか教えてくれなかったんだよな。」

グラさんはふーむ?と首を傾げるが俺もよくわかっていない

15分ぶっ通しで動いていたためレンとアンナが座り込んでいる。逆によく途中で倒れなかったものだ。アンナは後方支援で動かないとはいえ魔力を使うのに、体力は必要だ。

レンは言わずもがな前線で戦うため体力はかなり消耗されるはずだ。

俺も立つので精一杯な訳だが、ラミーユはと言うと

「グラ、強い、すごく強い、私の攻撃、当たらなかった」

「なっはっはっはそうじゃろぉ?じゃがラミーユちゃんもちゃんと強かったぞ、惜しい攻撃は何度もあったからの」

「私、グラみたいになりたい、もっと強くなりたい」

壁にもたれかかっているグラさんの前でぴょんびょんと跳ねている

かなりの体力おばけだ。

師匠と近い何かを感じているのかやけにグラさんに懐いている

確かに似ている、強者から溢れるオーラみたいなのが師匠からもグラさんからも感じられる

「ワシみたいになるにはまず人間を辞めるところからかのう。この国の中央にある大都市の地下には禁忌とされる魔の書物があってな、その書物を解読し…」

「おい変なこと教えないでくれラミーユならやりかねない」

なんかものすごい重要なことを言っていた気がするがさすがに止めさせた

「なっはっはっは。冗談じゃよ。もう少し休憩したらもう一度4人同時に仕掛けてくるのじゃぞ。」

グラさんはビシッと人差し指を立てて笑顔で言った

「ワシなら1週間あれば君たちを一流の冒険者に育て上げられるぞ」

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