第6話 賽は投げられた
アンナと合流し共に昼食をとることになった
ギルドで食べるのが手っ取り早いが久々に再会し、満を持して冒険者になれたことだし贅沢をすることにした。
とは言ってもこの街に高級料理屋なんて洒落たものは無い。露店や定食屋が少々あるくらいだ
定食屋から選んだのはアンナの好物である、はんばーぐ専門店だ
はんばーぐははるか昔この街に立ち寄った冒険者が広めた料理だそうだが今までにない発送に味わい、けちゃっぷと呼ばれる新しい調味料の酸味。
かなり美味しい。こう言ってはなんだが体重を気にする年頃の女の子であるアンナも好物になるわけだ
現在、互いに注文を終え、はんばーぐを食べているところだ。
「ところで、ライトは冒険者になったわけだけどこの街を出るの?」
「今のところはそんな予定は無いな。あの山は師匠が帰ってくるまでは俺が責任もって管理しないとだし。最強の魔女の拠点だったあの山を荒らすようなヤツなかなかいないだろうが…一応な」
「なるほどね、あの人のもとで学んだライトのことだから珍しい素材を集めにこの街を出るのかと思っていたわ」
「俺の事をなんだと思ってるんだ。あの師匠とは違って俺はそこまで研究一筋じゃないし無茶もしない。安定こそ至高だ」
ちなみに俺の師匠は魔女のくせにフィジカルがバグっている。師匠の武勇伝のひとつとして伝説の勇者と意見が合わない時は腕相撲で決めていたそうだ。仲は良かったらしい。
「そういう割には最近この街の近くにできたダンジョンを攻略しようとしてるんでしょう?」
「…師匠が前までこの周辺で突然現れたダンジョンは片っ端から攻略してたから、弟子である俺が引き継がないとなんだよ」
「基本面倒くさがりなのにそういうところは真面目なところ好きよ」
「そりゃどーも」
ある意味この街は最強の魔女の拠点になるためこのシガリー王国では最も安全と言える。しかしその魔女がいない今、牽制はできているがダンジョンなどが現れると実はどうしようもない
師匠がいなくなってから1回だけダンジョンが現れ俺がこっそり攻略しようとしたんだが…
「そういえば、ダンジョン攻略には剣士、魔術師、回復職、それと盗賊が必要よね、剣士はレンがやってくれるみたいだけど盗賊はどうするの?」
「アテはあるんだけどちょっと性格が難ありでな…」
ちなみに俺、レン、アンナは3人で昔から遊んでいたことがある。
だがいつの日か子供のようには遊ばなくなり、近況報告し合う仲となった
決して仲が悪くなった訳では無いが時間が経つにつれ落ち着き始めたのだ
…それと俺がアンナを意識し始めて、それにレンが気づいて…という感じだ
「性格難あり…?どんな人なの?」
「俺より2つ年上の女の人だよ。師匠とは既に顔を合わせてるんだけど師匠いわく、出会ってきた盗賊の中で2番目に強いらしい。」
ちなみに1番は伝説の勇者パーティーの盗賊だそうな。さすがにその盗賊とは力の差が歴然だが、師匠と手合わせした時も現代の人類で初めて惜しいところまで行けた唯一の存在だ
「へ、へぇ?女性ね…?」
アンナはコップに入った氷入りの水をカラカラと音を立てている
「この後、俺の仲間に入らないかスカウトしに行くけどアンナはどうする」
「ふつ…すきな…さいごに…でしょ…」
小さい声でゴニョゴニョ言った後にコップを置き
「遅かれ早かれ顔合わせすることになるし私もついて行くわ!」
…そんなライトとアンナのはるか頭上、屋内にいるふたりをまるで見えているかのように見下す2人の黒装束。
「賽は投げられた。あとはあの女と会ってダンジョンに潜る。」
1人はクックックッと不敵に笑う。
ライトとアンナはちょうど店から出てきて歩き始めた
「お前、ライトに手を出すなよ」
「わかっている、今回はあくまで視察。そんな怖い顔をするな。あなたの愛弟子には指1本触れないから安心しろ。…最強の魔女、エティカ・フロリアさん?」
「チッ!」
黒装束の1人ーエティカ・フロリアはライトを見つめ、自身が付けているネックレスをぎゅっと握った
「ライト…」
そうつぶやきふたつの影はどこかへ消えてしまった
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