第5話 仲間

「よぉライト久しぶりだな」

掲示板を眺める俺に男が声をかけた

振り向くとそこには軽い鎧を身に纏った青髪黒目のの青年がいた

「あぁ、レンか。久しぶり」

「やっとお前が堂々と街に降りてきたんだな、これからも改めてよろしく頼むよ」

レンは俺が数年前からこっそりと街に来た時に知り合った数少ない友人だ。

レン・ゼーノ。最後に会った2ヶ月ほど前の時点で20歳になっており、モンスターの素材をたまに流して貰えるようにお願いしていたりする。

今は軽い鎧だが、クエストに出向く際は重装甲となりモンスターを剣で倒す、剣士という職業についている。

「仕事探しか?まぁライトくらいの実力ならそこそこの難易度行けるんじゃねぇか?でもまずはレベル上げだし初歩から行くのはどうだ?」

レンは掲示板から貼り紙を剥がし俺に見せつける

「スライム討伐か…」

「初歩中の初歩、ここら辺に住むスライムは基本弱いからな、レベル上げには最適だぞ」

レンからの提案はごもっともだ。だが実はもう既に受けたいクエストは見つけていた

「なぁ、このダンジョン探索って難易度ってどれくらいになるんだ?」

俺も同じように掲示板から1枚の貼り紙を剥がし取りレンに見せる。そこには『 クエスト 未探索のダンジョンの調査』と書いてある。

どうやら最近街の近くでダンジョンが発見されたらしい。

「未探索のダンジョンだろ?まぁ中堅冒険者、しかもちゃんとパーティーメンバーが揃っている奴らじゃないと即死だろうな」

ダンジョンは例え小さい規模のものだとしても未探索と言うだけで危険度は跳ね上がる

どのようなモンスターがいるのか、どのような罠があるのか。調査済みであればその調査を行なった者がギルドに報告し、ギルドが安全か安全でないかを判断し、安全なら低レベルの冒険者のレベル上げ場として活用する。

では未探索のダンジョンに潜り込むのはデメリットしかないのか。そんなことは無い

まず第一に誰も足を踏み入れてないことから財宝やレアな装備だったりが眠っているかもしれない

それを全て手に入れることが出来る

…まぁ魔術で財を成した師匠を持つ俺は特にお金には執着ないのだが…

「俺の師匠はどんな気持ちでダンジョンを次々と踏破してきたんだろうな?」

俺の独り言にレンは笑う

「世間的な意見だけを聞くなら世界平和。ただお前の話を聞いていれば何となく好奇心だろうなって思うぞ」

この街のほとんど全てのダンジョンは師匠が踏破しておりそこから入手した財宝やモンスターの素材を利用して毎日の研究だったり俺の指導に使ったりしている

「だが、ダンジョンに潜るなら仲間が必要だぞ。剣士は…まぁ俺がやるが、回復職と盗賊が必要だぞ。アテはあるのか?」

お願いもしていないのに剣士役を参加してくれるのは素直にありがたい。知らない人に命を預けたくないからな

「回復職と盗賊か、なんとかなる」


俺はレンと別れ、街の中を歩く

この街で出会った知り合いはレンだけでは無い。

滅多に街に降りないのもあり、時間を有効活用するために、それと素直に友達が欲しかったため同年代とはなるべくやり取りできるようにした

「よし、ついた」

ギルドから離れて10分ほどに家としてならこの街で1番大きい家がある

堂々と正面からたっているが昔はコソコソと家の裏から近づいていたのを思い出し同じように家の裏に回った

小さい石を拾い上げ2階の窓に向けて投げる

本当に小さな音、耳をすましていないと聞こえないほどの音なのだがあの部屋にいるのは聴き逃したことは1度もない

すぐにカーテンが開くと桃髪の少女と目が合った

少女は俺を見ると目を大きくして少し微笑むとカーテンを閉め、家から出てきた

「よっ、アンナ。半年ぶり」

「ひ、久しぶり、ライト…」

桃髪、淡いピンクの瞳の少女…アンナ・ドゥーラは手を背の後ろで組みこちらを見つめる

白装束をまとった彼女は腰に小さなカバンを身につけており、俺と同じく20歳な訳だがそれ相応に見事な大きさの胸。

…かなりでかくなってないか?

「なんか変なこと考えたでしょ」

「いえ全く」

「そう。…ライト、今日が誕生日だったよね、おめでとう。ほんとうに私のところに来てくれるとは思わなかったよ」

アンナは頬を赤くし笑う

…可愛い。

「当たり前だろ、20歳になったらアンナを仲間にして一緒に冒険する、言い出したのは俺だ」

「ふふふっ嬉しい。…あっそういえばお昼は食べた?まだだったら良ければ一緒にどう?」

そういえば朝家を飛び出してそこそこ時間が経っている。ギルドで食べるのもなしではなかったが…

「そうだな、一緒に食べよう。支度はできてるのか?」

「ごめん、ライトが来てすぐに飛び出てきちゃったから準備はまだなの、ちょっと待ってくれる?」

「ゆっくりでいいぞ、ちゃんと待ってる」

アンナはえへへと笑い家に戻って行った

…昔からこの気持ちは変わっていない。

いつからか覚えていないが俺はアンナに好意を抱いている。

アンナは俺の事をどう思っているのか分からないが俺のうぬぼれでなければ悪いようには思っていないはずだ

俺はその場でうずくまりはぁとため息をつく

こんな感情を持ちながら今後仲間として振る舞えるのか…?

そして、俺はこの感情をどうしたいのだろうか

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