第2話 師匠

…………

あぁ…またここか…

「いいか?クソッタレな私にだって人助けをしたことがある。あの伝説の勇者の仲間の魔術師として魔王討伐もやった、私たちの住むこの国、シガリー王国の武力が足りないからって私は開発し終わった攻撃魔術をこの国だけに広めた」

真っ白な空間にぽつんと俺だけがいる。そんな中聞こえてくるのは何度も聞いてきた師匠の言葉だ。

「でもな、人の何倍も生きてきた私は人の愚かさってのをよく知っている。知略を渡せばしょうもない核兵器を作る。武力を渡せばしょうもない戦争が起きる。じゃあ何も渡さなかったらどうなるか?そのまま国が廃れて死ぬ。笑えないだろ?」

師匠の言葉は聞こえるが見渡してもどこにもいない

声の聞こえ方だって遠くにいるような近くにいるような…よく分からない聞こえ方だ

「だから私は誰にも寄り付かれないように最強の魔女になったんだ。そしたら面白いことに誰も私の元に現れなくなったんだ。シガリー王国には私から、くだらない戦争をするなら私がこの国を潰すと圧をかけた。他の国からは私の存在を知らない奴はいないから手を出せない。どうだ?完璧な作戦だろ?」

師匠は最強の魔女と言われるだけあって武力も知力も王国最高峰だ。故に最強。

「食料は献上されるしこの国で2番目に大きい山を私の領地として渡された。私からすればちょっと広すぎるんだが…」

似たような愚痴はよく聞いていた。

献上される食料は多すぎるし住んでいる山もひとつ小屋があれば十分だから広すぎると

ただそれは師匠が信仰されてるとかそういうわけじゃなかった

「単に私と国で壁を作りたかったんだろうな…」

自ら1人になったのに寂しがり屋な面倒な師匠だったのだ

「勇者の仲間たちもみんな死んだし、不老不死である私からすればお前といる時間なんてほんとうにちっぽけなんだよな。」

最初不老不死と聞いた時何言ってんだこいつと思ったが俺が成長して行くのに師匠は一切見た目に変化がないのを見て真実だということを理解した

「ちょっと長くなっちまったか?まぁなんて言うか…お前は立派に育ったよ。黒魔術師としての力量はまだまだだし、そもそも魔術師としての実力が全然足りない。雑魚中の雑魚だ」

酷い言われようだ。愛弟子に語る言葉かよ。どこが立派に育ってるんだ

「でもお前の実力はそこじゃない、なんてったって私の弟子だからな。私はお前の強さをよくわかってる」

…。

「お前は私みたいな復讐まみれな黒魔術師になるんじゃないぞ。復讐なんてお前には似合わないからな」

ーーーーーーーーーー

そこで目が覚める

そう、今のはただの夢

俺がそれなりに成長するとある日突然師匠が俺たちの家から姿を消した。何日も帰ってこずに俺一人の生活が続いていた訳だがある日を境にこういった夢を見るようになったのだ

ただの夢にも思えるが多分これは師匠からのメッセージ。連絡…と言うには一方的だが定期連絡みたいなものなのだろう

「げっ…もうこんな時間かよ…」

今回の夢での師匠の話は長かった。もしかしたら今日が何の日か把握しているのかもしれない

「師匠に育ててもらって、かれこれ20年か…」

そう、今日は俺の20歳の誕生日かつ、冒険者としての活動が許されるようになった日なのである


この国では20歳から冒険者につくことが出来る。もちろん早くに家族を亡くし生きていくためにお金が必要だという場合の特別待遇としてベテランパーティーの荷物持ちというのがある。荷物持ちでその報酬からちゃんと1人分貰えることに思うところがある人もいるようだが法律で決まっているし何よりこの国で俺と同じくらいの年代の人は基本親が早くに亡くなっているから、何かしら言うのは人として終わっているやつだ

親がいない理由としては師匠が言っていた通り戦争のせいだ。25年前かなり大きい戦争が起こった、住民の殆どが駆り出され被害は相当だった。だが師匠の介入により停戦となった。

それから世界中から戦争がなくなり無事平和となったのだ

話を戻すが、親がいないものの大きい兄弟がいたり、親戚が生きていたりする場合は俺のように20から働くことになる

なぜ20歳からだと言うと冒険者組合が酒場と併合しており、子供が入り込んでお酒を飲ませてしまうと冒険者組合が責任をとることになるからだ


そうして、以前まではコソコソと街の様子を見に行っていた俺もついに堂々と街に向かうことができるようになったのだ

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