第9話 勇気
勢いで考えなしに動くとよくないと理解していた私は、古屋さんと解散した後。
何も考えずに麗奈に電話をかけるのはよくないからと、ちょっと考えてからにすることにした。
・クーリングオフの期間が過ぎていたら。
先日のエステのお礼をいって、ピザパーティー楽しかったから今度は私の家狭いけど集まらない? って持ち掛けることにする。
クーリングオフができないのに、麗奈が通っているところは、金額とサービスが見合ってないよ! なんて現実を突きつけられても麗奈が嫌な気持ちになるだけだし。
古屋さんもいっていたけど、施術に差はあるけれど、施術されないわけではないから。
詐欺とは言い切れない可能性が高いとネットで調べてみてわかったこともあって。
麗奈が今手を引けないなら、余計なことは言わないほうがいいと思った。
確かに、いずれ自分がお金を払った物は金額に見合っていないのではないかと気が付くかもしれない。
でも、その役目をわざわざ憎まれ役をかって私がする必要はないし。
対処の方法もないのに、余計なことをいってかき回すのは絶対ダメ。
・麗奈がもしクリーンオフができるならば、希のことがあってすごく怖いけど。
あれだけの差はおかしいと思うし。
どうせ通うにしても、コースの回数券を買わないといけないところよりも、行きたいときに予約をとって、今日いったエステに行くたびに1万2000円払えばいい。
麗奈を嫌な気持ちにさせてしまう可能性は高い、何しろ私と違って、麗奈は12万ものお金を払うことに納得しているはずだから。
本当は黙って知らんぷりしているのが一番賢いことだと思う。だけど、やはり友達だし、しらんふりは流石にできない。
・次にクーリングオフはどうやったらできるかを調べたところ。お店に直接行くのはよくないらしく。
郵便局で契約解除通知書なるものを送ればいいらしい。
はがきはコピーをとって、配達記録が残る形で相手におくる。
すると、消印が押してある日付で効力を発揮するらしい。
一応クーリングオフするためのはがきの書き方をスクリーンショットにとって準備してから麗奈に電話をかけた。
挨拶もほどほどに、私はさっそくエステの話題を切り出した。
「そういえば500円エステ行けるのずっと先だと思ってたから、すごく早く行けることになってびっくりしたんだけど。契約はいつしたの?」
トーンをなるべくかえないように、そしてもし契約日がクーリングオフの期間を過ぎているなら、話題をかえよう。
「えっと、ちょうど一週間前だよ~。ローンも組めるって言われけど、利子とかあるだろうし一括で払ったら今月ちょっときついんだ」
7日前……なら、まってクーリングオフの期限は8日――――――今日までだ!
郵便局の営業時間は17時まで、今日配達物を受け付けた消印がいる。
今はもう16時を過ぎてる。
いう? 言わない? どうする? って自問自答が始まる。
保身に走って言わなければ、麗奈にはわるいけど。楽しく過ごせる。
だけど、いずれ騙されたことに麗奈は気が付くだろうし。
でもその時になって、麗奈はいろんな子を紹介してその中の誰かが契約をしてしまったらきっと大きなトラブルになる。
白雪ちゃんは日程があえば、すぐにでも500円エステに行くはずだし、白雪ちゃんも被害者になるかも。
すでにもし麗奈が誰か別の人を紹介して、その子が入っていたら……
「麗奈が500円エステに紹介したのって私だけ?」
「今のところね。来週はまた違う子と一応行く予定」
それをきいてほっとした。
「麗奈、私麗奈といい関係でいたいと思うの。何それって思うことを今からいうと思うんだけど、今じゃないと間に合わないから聞いてほしいの」
「どうしたの? 改まって」
「クーリングオフって知ってる?」
「詳しくは知らないけど、契約したのを〇日の間取り消せますってやつでしょう。……まさかエステのこと?」
他に契約なんかしているような年齢ではないゆえに、すぐにクーリングオフが今できるものはエステだと麗奈は行きついたようだ。
麗奈の声に不機嫌さが混ざる。
「そう。今日が契約してから8日目。麗奈が解除できる最後の日なの。私も今日知ってすごく戸惑ってる。私自身、先日行ったときは、エステすごく楽しかったし、よかったって思ってたから」
「戸惑ってるて何?」
「麗奈も私も他のエステ受けたことなかったじゃん。あそこのお客さん、同世代の子ばっかりなの気が付いてた? バリキャリとか、マダムとか誰もいなくて。同世代の若い子しかいなかったんだよあそこ」
「……え?」
少し間があってから、麗奈が声を漏らすかのようにそういった。
麗奈は私よりも多くお店に行っている。
だからこそ、私の疑問を今頭の中で思い出して確認しているのだと思う。
「とにかく、後で事情は説明するし。契約書をもって、郵便局に走って! クーリングオフのやり方のURL送るから、あのエステ解約したほうがいいと思う」
「まってよ、私今度別の子も連れていく予定で予約もいれてるし」
「キャンセルしたほうがいい。詳しい話はクーリングオフの手続きが終わってからする。このままだと麗奈が加害者になるかもしれない!」
「何なの!?」
電話は切れた。
折り返し電話をかけたけれど、通じない。
やってしまったと思いつつも、私はクーリングオフに必要な契約解除通知書の書き方のURLを麗奈個人のSNSトーク画面に張り付けた。
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