第4話 皆仲よくしようの魔法
古屋さんと話したことをきっかけにして、これまで考えてなかった別の視点が霧が晴れるかのように見えてくる。
これまで自分の視点だけで起った出来事をみていて、周りでいったいどういったことが起こったか、なぜかいつの間にか離れて行ったり、疎遠になったのかわからないまま時間が過ぎていってたことが。
別の視点で考えてみると、今までわからなかった離れて行った人の理由が見え始めてしまう。
例えば新学期の間はつるんでいたのに、いつの間にか離れてしまった子。
小学生の頃はグループの誰かと喧嘩したり、これは離れて当然だよねというあきらかな原因が周りにもわかる状況だったけれど。
中学の頃は、もめる以外でグループから穏便に離れる子ってのがでてきた。
同じグループだったのにいつの間にか他の子と話すようになって、他の子と話す時間が長くなるにつれてこちらのグループにいる時間が少なくなって……気づけば自然とグループから抜けてしまう子。
その後グループが変わったからと無視とかすることもなく、顔を合わせると挨拶して、ちょっと雑談したりもするそんな関係になった子が誰しもいると思う。
当時はもっと気の合う子がいたのかな? くらいで気にも留めなかったけれど。
今更のことなんだけれど、この子といると何かモヤモヤすることがあるからとか。
このグループよりも別のグループの子と仲良くしたほうが楽しいかもというのがあったのではないだろうか? と思い始めてしまう。
私はどちらかというと仲間外れはよくないよねと思うタイプで、さっき古屋さんと話していた遅刻するような子とも、遅刻しないようにいろいろ言いながらも、毎回毎回待たされて遊ぶタイプだったし、一緒にいる子はそういう優しい子ってのがいつも多かったかも。
今までは、皆と仲良くしないことは悪いこと、だから仲良くしなきゃって考えていた。
だから、うーんって思うことがあっても、虐められたりするわけではないし、そこまで悪い子じゃないから仲よくしてきた。
高校ではいつも遅刻する子には、遅刻してこないでね! と念押ししたり。
その子だけ早めの時間を伝えたり、なんとかその子が治してくれればとがんばるだけで、その子との付き合い自体をどうするかとか考えたことなんてなかった。
思えば集まろう~ってなったときに、何かしら理由をつけて断る子っていつも同じ子で、決まってそういう子はグループから離れて行って学校で会えば挨拶してちょっと話すかなって仲になってしまった。
私の大学で所属するグループも前は6人組だった。
例にもれず、仲たがいしたわけではないのに自然と3,3で別れた。
いろいろ遊びを計画してくれる子と、愚痴ばかりのグループに。
私も自分が愚痴を言う側のときは気が付かなかったけれど。
ネガティブなことがずっと続く食事はおいしくなく。
皆バイトで忙しいし、誰も幹事や提案をするわけではないから、せっかくの春休みだというのに。
夏休みとは違い旅行の予定は愚か、遊びの予定やご飯食べようって予定も何もたっていない。
ちょっとだけ、このまま3人での大学生活を考えてみたけれど。
昼食の時に愚痴を聞き続けるのはしんどいし。
せっかくの大学生なのに、なんの遊びの予定もないままはちょっと味気なさすぎる。
「今度は何考えてるの?」
古屋さんに話しかけられてハッと気が付いた。
私は食べている途中でずいぶんと長く考え込んでいたみたいだ。
今のグループで悩んでいると言いそうになって私はやめた。
愚痴ばかりの話はしんどくなる。私はこの前古屋さんに思いっきりそういう一面を見せたばかりだし。
「古屋さんは春休み旅行とかする?」
私はあえて楽しい話へと変えた。
古屋さんと話すとなんか悩みが少し解決するみたいな、なんていうか友達になってこれからも会ってくれるかはわからないけれど。
会うと毎回愚痴とは思われたくなかった。
現に、私が愚痴ばかりのグループしんどいと思っているからこそ特にだ。
「今のところ2回は行くの決定かな。もう一つくらいは行きたかったんだけど。バイトもやめちゃったからちょっと予算的にきびしいかなって。私定期的にライブで県外遠征するから、その費用が半分旅行みたいなもので結構かかっちゃうんだよね。石井さんは?」
「私は……今のところ予定なしデス」
「あっ、友達と旅行は気を使って楽しめないタイプとか?」
「私が今いるグループの子バイト忙しくて。もう3月のシフトは出ているだろうし。今更ってなるときびしいかなって」
「とりあえず声をかけるだけかけてみたら? いつもの子たちは無理でも他の子は捕まるかもよ」
「確かに……」
そうか、別にいつメンじゃなくてもいいのか……と思いながらその日は古屋さんと解散した。
古屋さんと解散して、私は考えていた。
これからの自分の身の振り方を。
麗奈、白雪ちゃん、朋ちゃんみたく、ごく自然に今のグループから離れて、楽しそうな子とまたつるむべきか。
今のグループでこのまま耐えるはもう考えられない。
だからといって、希と裕美は悪い子ではないし。
希も裕美もバイトのせいでかなり学業に影響がでているし、このまま見て見ぬふりをしてとなるといろいろ考えこむ。
そして私が考え出した結論は。
とりあえず希と裕美にバイトをやめたことを報告して、古屋さんと話して分かった学業に影響がでたら本末転倒な話とか。
バイトはやめても履歴書に書かなくていいとか話して、二人もブラックバイトをやめれば、春の頃のように愚痴が減った会話ができるのではないかということだった。
二人から助けてほしいとか言われたわけではない。
おせっかいかもしれないけれど、このままだとなんだか後悔しそうで私は22時過ぎならバイト終わっているかもしれないしと二人にSNSで連絡をしてみることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます