冒険3~いざ冒険の旅へしゅっぱ~つ!~

「あー♪いいお湯でしたわ~♡」


「そ、それはよかったですね…」


「あら?アークさま、お顔どうかされたのですか?」


アークの顔にはビンタされた痕がある。


「えっこれですか?…これはセレスさんが『使っちゃいけないアリスのシャンプー』を勝手に使っちゃったからですよ。でも気にしないでくださいね…アハハ」


「あら?ワタクシではなく、アークさまがヒドイ目にあうなんて何だかおかしな話ですわね…ウフフ」


「まったくですね……いや『ウフフ』じゃないですよもう…全然笑えないです」


「セレスさーん、夕御飯出来たわよ~」


「は~い!今向かいますわ~!!」


「はぁ、僕は今日の夕ご飯は抜きか…トホホ」


「……お兄ちゃんもご飯冷めちゃうから、早くいらっしゃい!もう…っ!」


「ア、アリス~~~」


「うふふ、よかったですわねアークさま」


ふたりが食卓に向かうとテーブルの上には、アリスの美味しそうな手料理がたくさん用意されていた。セレスはとても感激した様子で夢中で料理にかぶりついた。


「はむはむ!むしゃむしゃ…ッ!ごっくん!こ、このお肉料理スゴく美味しですわぁ!こっちのスープもゴクゴクゴク、…げっほッ!アッツ~~~い!このスープ、ワタクシの心(ハート)と同じくらいアッツいですわね!でもこれで冷えた心と身体もぽっかぽか〜!ですわ!!…ああ〜どのお料理もとってもとっても美味しいですわ~~~♪デリシャス☆ハッピーッ!!!!!」


「もう~!アナタ、仮にも聖女さまなんでしょ?随分とお行儀が悪いのね…」


「アハハ、セレスさんそんなにお腹空いてたのかい?」


「…アリスさま、ワタクシは『仮』ではなく『正真正銘の聖女』ですわよ!コレはその、…アレですわ!ここ数日食うに困ってずっとその辺に生えてる『薬草』しか食べてなかったので、きっとその反動ですわね~~~~~!!もう色々とハード過ぎて本当に『薬草生えるW』ですわ!…それにしてもアナタ、本当にお料理がお上手なんですのね♪ステキですわ!将来いいお嫁さんになりますわよ~ワタクシが保証しますわ!」


セレスはそう言うと、用意された料理の感想を言い始めた。それを聞いてアリスは、ツンツンしながらも満更でもない様子である。


「~~~ッ!あ、ありがとう…。ワタシ、アナタのこと、少し誤解していた…かも…ごめんなさい」


「ウフフ、誤解が解けてよかったですわ♪あっ!ワタクシも沢山入っていたアリスさまのシャンプーを『全部使い切って』しまい申し訳ありませんでしたわ☆」


「……!?ちょっとぉ…アナタ、…あのシャンプースッゴく高いのよぉ!ウソ、本当に信じられない!!前言撤回よぉおおおお!うわ~ん!!!」


「あらあら、そんなに泣くほどのことですかね?たかだかシャンプーごときで…」


「お兄ちゃ~~~ん!やっぱりコイツ嫌い~!!」


「アリスさん、ごめん遊ばせ…。まさかあのシャンプーが、アナタにとってスゴく大切な物だったなんて知りませんでしたの。ではお詫びの品として、この石はいかがですか?」


そう言うとアリスは、不思議な綺麗な石をどこかから取り出すと泣いているアリスに手渡した。


「何これ?…スゴくキレイ……っ!!」


「これは『聖女石』(せいじょせき)と申しますの。聖女であるワタクシの身体の中で精製される特別な力を持ったパワーストーンですわ!!…是非受け取ってくださいまし~♪」


「スゴいな~!聖女ともなると、そんなスゴいアイテムを自分で精製出来るだなんて!どうやって精製するのか詳しく僕に教えてくださいよ~」


「それは……企業秘密ですわ~」


「いやいや、そこをナントカ……」


「あっあっあっ…その、~~~っ!……アークさまって…、ものすごくエッチな方なんですのね……」


「ええっ!?なんでそうなるの!僕は別にそんなつもりは……」


「…お兄ちゃん?…おい!なに『可愛い妹』のワタシという者がありながら、他の女にセクハラ発言してるわけ?…ブン殴るわよ?」


「…あのアリスさん、ブン殴ってから言うのはやめてくれませんか…?」


「……うふふ、おふたりがとても仲が良い事とアークさまがとってもエッチな方だという事がよく分かりましたわ♪…ではワタクシはそろそろお部屋で休ませていただきますわね!グッドナ~イトですわ」


セレスはそう言うと、アリスが用意してくれた彼らの両親がかつて使っていた寝室へと向かった。


「ちょっ!ちょっとぉ!だから僕はエッチなんかじゃあ…はぁ、なんかものすごく不本意なんだけど……本当に人の話を聞かない人だな。アリス、食器の後片付けは僕がしておくからお風呂入ってきな…」


「いいのお兄ちゃん?」


「ああ、任せてよ。アリス、…何か色々と不甲斐ないお兄ちゃんで、その…ごめんね…」


(お兄ちゃん!!ワタシこそ、その、……お兄ちゃんの優しさに甘えてばかりでごめんさない…ワガママな妹でごめんなさい…)


「そんな事でいちいち謝まらないでよ!…じゃあワタシお風呂行くからね!あっ!洗剤はしっかりと洗い落としてから、乾燥させてよ!!」


アリスはそう言い残すと風呂場に向かった。


「りょーかいです!さて、僕もやることやるか~」


しばらくして…


「お兄ちゃん!お風呂いいわよ~」


「ありがとうアリス~!今日は寒いから、風邪引かないように部屋をしっかりと暖かくしてゆっくりとおやすみ!」


「うん…おやすみなさい。…アークお兄ちゃん」


アリスとのおやすみの挨拶を済ませたアークは、浴室へと向かった。そして裸になった彼は、そのまま熱い湯船に勢いよく浸かった。


「ふぅ~いいお湯だな………にしてもこのお湯にセレスさんがさっきまで入っていたのか。…ううう、スゴくドキドキしてきた…。なんだか変な気分になって…あっ!でもその後アリスも入ってるんだった!なぜだろう…そう考えた途端に、何とも思わなくなってしまった…ははは」


アークは今日1日の疲れをすべて洗い流すと風呂から上がった。そしてパジャマに着替えるとそのまま寝室へと向かう。


「さて、とりあえず今日は夜更かしせずにしっかり休むとしよう!」


アークが消灯しそのまま眠りに着こうとしたその時である。


〈トントントントン〉


誰か彼の部屋の扉をノックする音が聞こえる。


(んっ?こんな時間に…誰だろう…あ~さてはアリスのヤツ、また一人じゃ怖くて眠れないのかな?しょーがいな~!まぁそういうところは、昔からホント可愛いんだよね)


「入っておいでアリス~!またお兄ちゃんが今日もいっしょに寝てあげるよ!だからもう怖がらなくても大丈夫さ…」


アリス(?)は無言で彼の部屋に入って来ると、そのままアークのベッドに潜り込んできた。そして力強く抱きついてくる。


「まったくもう!なんだかんだで甘えん坊だなアリスは~!……アリス?あれれ、なんだろう…アリスってこんなに『肉感的』なボディだったかな?」


「うふふ、当然ですわ♪なぜならワタクシなんですもの…」


アリスだと思っていた者の正体は、なんと裸のセレスであった。


「え…、ええっ!?…えぇええええエエエエッ!!!!!なんでセレスさんが、僕のベッドの中にぃいいいいるんですかァッ!?し、しかも…なんでスッポンポンなんですよおおおおお!!」


「シ~ッ!声が大きいですわ!アリスさまが起きてしまいますわよ!!」


「えっ!でもだって…」


「『でもだって』ではありまんわよ♪」


「…なんでいるんですか?僕の部屋にというか、ベッドの中に…」


「それは今からワタクシとアークさまが、仲良くおセッ○スするからですわ~」


「?…??……!?…!!!ちょっ!ちょちょちょちょっっっっと待ってください!全然意味がわかりませんよ……なぜですか?」


余りのことにパニック状態になるアーク。そんな彼の問いに対して、セレスはあっけらかんとした様子で答える。


「えっ?それはアークさんの『心の迷い』を断つためですけど…」


「今の僕に『心の迷いなんてモノ』はありませんよ…むしろ未知の冒険へのワクワクが止まらないです…はい」


「強がらないでくださいまし~!聖女であるワタクシにはわかりますわぁ~!すべてお見通しです!本当は不安や恐怖といった負の感情に今にも押し潰されそうなんでしょう!!どうなんですかぁあああ!!!」


そう叫びながらセレスは豊満な自分の胸を彼に押し当てる。


(ちょちょちょっとぉッ!!セレスさんの胸に押し潰されそうだよ…いいニオイ)


「ウフフ、怖がらなくても大丈夫…ですわ♪ワタクシがその迷いをすべて断ち切って差し上げますわ。この肉体(からだ)で……それとも初めての相手がこんなにも『清く正しく美しいカンペキな聖女』であるワタクシでは…嫌ですか?」


「いや…、別にそういうワケでは…ってぇ!それ自分で言っちゃうんですね…」


「はい!自分で言っちゃいます♪それではワタクシに身を任せてくださいまし~!幸いなことに、アークさまのココは『もうこんなにも立派』に…『戦闘態勢ヤル気満々』になっていらっしゃいますわねぇえええ!こちらとしても助かりますわ~~~っ!!」


そういうとセレスは、アークの「立派になった物」をイヤらしい手つきで何度も擦ると、そのまま勢いよく馬乗りになった。


「わ、わわわ、わぁあああああ!!!ちょっ、ちょっとやめてくださいよぉ!僕は…僕は…お互いのことをよくまだ知らない人と…、そんないきなり『そういうこと』はできないですよ!本当にすみません…」


「あら…思った以上に真面目な方なんですのね。…ワタクシは『無理矢理するのもされるのも』両方好きなのですが…いいですわ。今回は素直に引くと致します。……でもおっしゃる通りですわね。『これからお互いのことをもっとよく知ってから』でも遅くないですもの♪ウフフ」


「えっ……と、分かってもらえた(?)のならよかったです…」


すると突然不機嫌そうな様子のアリスが、アークの部屋に乗り込んで来た!!


「ちょっとぉッ!!今何時だと思っているのよ!夜くらい静かにしな………えっ?…お兄ちゃん?なに?えっ…ナニしてるの、ふたりで……」


「ち、違うんだあっ!アリス、これにはワケが…」


「あらアリスさまも、……よかったらご一緒しませんか〜?気持ちいいですわよ、もう『天国に昇ってしまうかも?』ウフフ」


そう言うとセレスは、聖女らしからぬ「どこかいやらしい手まねきと舌舐めずり」を同時に行いながら、アリスに対しネットリとした笑みを浮かべる。


「ひ、ひいッ!?お、犯される!!」


「なっ!?セ、セレスさんッ!アリスに誤解を受けるような変なこと…ってぇ!絶対今ワザと言ってますね〜〜〜っ!!!」


「ウフフ、だってなんだかとっても面白そうな展開なんですもの♪」


「ううううう、ワタシの大好きなアークお兄ちゃんから離れろぉおおお!この痴女めぇええええええッ!!」


アリスはそう叫ぶと、拳を構えてセレスに突撃する。


「まぁ!自分の気に入らない事は、なんでもかんでもすぐ暴力で解決しようとするだなんてぇ…っ!信じられない!なんて野蛮な方なのでしょう!…しかも聖女であるワタクシを『痴女』呼ばわりするだなんて…!いいでしょう!ならワタクシは抵抗しますわよ?拳で!!」


セレスはアリスの拳を軽く受け流すと、彼女の顔めがけ容赦なく強烈なカウンターパンチをお見舞いする!


〈ばちこーん☆〉


「ぐえっ!?いぃいイイイイイイイぎゃあぁああアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」


「わぁ~~~!!アリスが『とても女の子が出してはいけないような声』で物凄い悲鳴を上げながら、悶絶して地面を激しくのたうち回っているうぅうううう!!!!!」


「これが気高き聖女の愛の力(物理)ですわ♡…女子力とも言いますわね♪」


「言いません!!!ア、アリス~~~!!だ、大丈夫かい?」


アークは依然として自分に馬乗り状態でいるセレスをはねのけると、急いでアリスの元に駆け寄った。


「…ってやる」


「えっ?」


「ママに言いつけてやる~!お兄ちゃんが『痴女とエッチな行為』に及ぼうとしていたことを言ってやる~!アークお兄ちゃんのバ~カあぁあああああッ!!うわ~~~ん!!!」


「えっ…ママに?……あっ!お師匠さまに言われたら困るよ~!やめてよアリス!!それぜっっったいに『面倒なことに』なるじゃないかあぁあああああっ!!!」


兄の必死の制止を振り切りアリスは、泣きながら家を飛び出してしまった…。


「あらあら、妹を泣かせるなんていけないお兄ちゃんですわね。…早く仲直り出来ることを心よりお祈り申し上げますわ、ウフフ」


「他人事だと思って…ってぇ!全部アナタのせいですよね…」


「……追わなくていいのですか?」


「いいですよ、多分お師匠さまの家に行ったと思うので…」


「そうですか…つまり現在このお家では、ワタクシとアークさまの『完全二人っきり』な状態なワケなのですね…あ〜ん♡」


そう言うとセレスは静かに自分の足を大きく開くとその痴態をさらした…。彼女の顔はとても聖女とは思えない『とてもはしたないメスの顔』になっていた。


「来て…アークさま……」


そう言うとセレスは静かに目を閉じた。


「………セレスさんっ!!!」


〈ぽーい!ガチャ!カチッ!〉


「きゃー!もうアークさまったら!仮にも聖女であるこのワタクシを、まるで物のようにぞんざいに部屋から投げ捨てるだなんて…しかもご丁寧に部屋のカギまで掛けて、…イイッ!スッゴくイイですわ〜〜〜!!ワタクシ『雑に扱うのも好きですが、雑に扱われるのはもっと好きですの〜〜〜〜〜!!!!!…ウフフぅ~~〜ッ、ああ♡なんだかとても心が満たされたので、今宵はステキな夢が見れそうですわね!!」


そう言うとセレスはとても満足そうな様子で寝室に戻った。アークは「聖女じゃなく、いっそ『性女』に改名した方が良いのでは?」と思いながら眠りにつく。

翌朝、アークは剣術の師匠であるカランに呼び出され道場を訪れていた。彼女はただ無言で彼を見つめてくる。色々と察してはいるが、アークは要件を聞こうと口を開いた瞬間である!彼女の鉄拳が彼の顔面に炸裂した!


〈ばこーん!〉


「〜〜〜イッたあッ!!お師匠さま!急に殴るなんてヒドいじゃないですか〜」


「大馬鹿者!なんで普段『仏のように慈悲深く心穏やかで優しい美女』のこの俺が、こんなにもこんなにも激おこなのか、…わかってるよな……?」


(……自分で言うなよ…)


「はい…昨晩のアレですよね、あとその、…アリスはまだ帰って来てないのですが…元気です?」


「ったくよ〜、可哀想にアリスのヤツ、泣き疲れて俺の布団で寝てるぜぇ!…でぇっ!実際どうだったあ~ッ!!『聖女の具合』ってヤツはよう〜!グヘヘ、教エロよ〜このドスケベ息子ぉ〜!いや〜しっかし、息子の『ムスコ』も遂にオトナになっちまったかあ〜!めでたいね~♪よっしゃ今日は赤飯炊くかぁ!料理できねぇ〜けどぉ~!がっはっは!!」


(あーもう!思った通りの展開になったな…)


アークは昨日起きた事を包み隠さずカランに伝えると、彼女は少し残念そうな様子でアークに謝罪した。


「わりーわりー!どうやら俺の勘違いだったみたいだな〜!つーかアリスの言っていることとだいぶ内容が違うじゃあね〜か!口より先に拳が出ちまったぜぇ〜…そうだな、お詫びと言っちゃなんだが…最後に『特別な稽古』をつけてやるよ!ほらよ!」


そう言うと彼女はアークに木刀を投げた。


「特別な稽古、ですか?…はあ〜、もうお師匠さんから教わることなんて何もないですよ?そもそも僕の方が強いですし…負けても文句言わないでくださいね…」


そう言うとアークは面倒そうに木刀を構える。


「……生涯独身流孤高剣第39代目継承者カラン、いざ参る!」


次の瞬間、彼女はアークとの間合いを一気に詰め渾身の剣撃を放っていた!ほんの一瞬の出来事に、彼はこの一撃を上手く防ぐことが出来なかった。


「裏・奥義!斬桜花月万咲閃(ざんおうかげつばんしょうせん)ッ!!」


〈ズバーン!!〉


凄まじいスピードと威力の斬撃がアークに炸裂する。


「なあっ!?……ぐううう!そんな…、み、見切れなかった、だと…?この僕が、あああ………」


アークはその場に力なく倒れた。


「はぁはぁはぁ…どうだいアーク!少しは俺のこと、見直したかい?」


「ううう、か、感服致しました!お、教えてください!その剣技をおッ!!何ですかその技!僕は知りませんよ!」


アークは力任せに彼女の体を掴むと、激しく何度も揺らしながら必死に教えを乞う。


「い、イタッ!ちょ、ちょっとぉ!待っ、激し…い、お願い落ち着いてえっ!……ええ〜い!話を聞かんかあ〜!!この大バカ息子めぇ〜〜〜ッ!!!」


アークの顔面に彼女の怒りの鉄拳が炸裂した!


〈ばこーん!!!〉


「ぐは〜ッ!す、すみません!つい興奮してしまい!」


カランは頬を赤らめながら乱れた服を整えると、落ち着いた口調で語り出した。


「まあ知らなくて当然だな、この技は俺の『完全オリジナル』だからな」


「…完全オリジナル、ですか?」


「うむ。アークよ、実はな…生涯独身流孤高剣とはお前に教えた四十八の剣技に加え、実はもうひとつの『裏奥義』からなる流派なのだ…」


「ええっ!?初耳なんですが…」


「そりゃそうさ〜!だって意図的に教えてなかったんだも~ん☆」


「な、なんでですか〜!イジワルしないでくださいよ〜!」


「……自分の胸、よ〜く手〜当てて考えてみ?」


アークは逞しい己の胸板に手を当ててよく考えてみた。すると心当たりがあり過ぎることに気がつく。


「…すみませんお師匠さま、心当たりがあり過ぎます。本当に申し訳ありません」


「…そう言うことだ!お前は免許皆伝をもらった瞬間から、一気にだらしなくなったからな!良いかアーク、裏奥義とは免許皆伝を授かってからのその者の姿を見て、伝授するかしないかを決める特別なモノなのだ」


「そうだったんですね…僕は自分の強さに、自分自身にぃ…ッ!自惚れておりました〜〜〜!!!」


「……今のお前は伝授するに値するな…」


「ええっ!?今、なんと…」


「だ〜か〜ら〜!教えてやる言ってんだろ〜バカ息子」


「あ、ありがとうございます!お師匠さま〜!!」


こうしてアークは、カランから最後の稽古として裏奥義の技術と知識を学んだ。その後彼は、アリスに昨夜のことを謝罪し、何とか許してもらうことに成功する。そして彼女と共に帰宅をすると、急いで旅の準備に取り掛かった。長旅になることは確実だったので、セレスとアリスの意見を聞きながら念入りな旅支度をする。その準備は数日にも及んだ。そして…


「…本当にアリスも来るのかい?…かなり過去な旅になるよ?」


「当たり前じゃない!ワタシが着いて行かないと『色々と』心配ですからね〜」


そう言うとアリスは、敵意ある視線をセレスに送る。


「…ウフフ、あ〜らとーっても残念ですわ〜残念残念……」


「ああん?何が『残念』なのよこの痴女!」


「…アリスさま『股の穴かっぽじって』よーく聞いてくださいまし…ワタクシは『清く高潔で美しい聖女』です。『恥知らずで下賤な痴女』ではございませんの〜。ドゥーユーアンダースタンド?」


「~~~ッ!ちょっとぉ!セレスさんお下品ですよ!それを言うなら『耳の穴』ですってばぁ!!…ヤダもう」


「あら~そうとも言いますわね♪ウフフ」


「そうとしか言いませんよ~…」


(ううう~アークお兄ちゃんをこんな人に渡してなるものですか~!)


「おうおう~!三人ともそんなんじゃあ上手くやって行けるのか心配だぜぇ!こりゃ先が思いやられるな~!カッカッカッ!」


そんな結束力にいまいち欠けた三人の姿を見たカランは、とても面白がった様子で笑顔で語る。


「お師匠さま、不安になることを言わないでくださいよ…あっ!そうだ…『ホタル』が帰って来たら、その『ごめんね』って伝えておいてくださいませんか?」


「おう任せておけ!だけどよアーク!お前が旅立ったことを知ったらホタルのヤツ、きっと悲しむぞぉ~!」


「あ~ホタルちゃんの存在を忘れてた!早く出発しましょう!あの子きっとお兄ちゃんが旅立ったことを知ったら、ぜっっったいに追いかけて来るもの…!断言できるわ!!」


「…なんですのその方は?」


「あーーーつまりアレだぁ!ホタルってのはな、アークの『未来のお嫁さん』だ!ヒヒヒ」


「だーかーらー!!ママ~、妹のワタシは認めてませんからね~!!」


「あらあら~、ワタクシ以外にもそんな方がいらっしゃるだなんて…とんだ『スケコマシ』ですわね!ウフフ、殿方はそうでなくては!!」


「いや、ホタルは別にそんな…もう~、急に色々と心配になって来たよ…大丈夫かなこの旅は?」


「おう、そうだ!アークちょっと…」


カランはアークを呼び止めると古びたお守りを彼に手渡した。


「俺は旅に同行出来ないからよ、代わりにソイツを持って行ってくれ…」


「……お師匠さま………あっ、…えっと……『母さん』ありがとう。僕、必ず使命を全うして見せます!勇者として!必ずこの世界に光を……ッ!!」


「……!!おう…、胸を張って行って来いよ…お前はもう『立派な男』だぁ!!」


「ママ~、お兄ちゃんばかりズルい~!!ワタシも、ワタシも頑張るわよ~」


「そうだ!アリスお前にもプレゼントがあるんだった!」


カランはそう言うと変わった形の銃を彼女に手渡した。


「…?なーに?コレ…??」


「それは『スフィアコネクトアームガン』略して『スコアガ』だ!昔知り合いから貰ったもんだが、護身用として役立ててくれ!まあ使い方は知らんから根性で使えよ!!」


「もう〜ママはテキトーだなぁ…でもありがとう…ママ。お兄ちゃんの足を引っ張らないように、ワタシも頑張ります!!」


「おう、行って来いアリス!!…可愛い俺の娘……」


「うふふ、素敵な親子の愛…ですわね!…美しいですわ、本当に美しい……」


「…さて、みんな…、そろそろ行こうか…」


「うん、アークお兄ちゃん…」


「はい、アークさま!この世界の平和のため…人々の未来(あす)のため…いざ冒険の旅へしゅっぱ~つですわ~~~~っ!!!


「ああ!ドンドン行こう!!ドンドン…」


「はい~ドン!ドンと!!冒険して参りましょう!名付けて『DON!DON!!クエスト』ですわ~~~~~ッ!!!!!」


「あああああ、何かセレスさんが主人公みたいな……」


「そんなことないわよ!アークお兄ちゃん、頑張りましょう!Don!Don!!レッツゴぉーーーッ♪」


「……うん!Don!Don!!突き進んで行くぞぉおおお!!!さぁ…僕たちの冒険のはじまりだぁぁああああああ!!!!!!!」


アークたちは元気よく旅立って行った。

そんな三人を笑顔で見送ったカランだったが、突然目からこぼれ落ちるアツいモノが、…涙であった。そして彼女はコレを止める術を知らなかった。


「…『母さん』……か、アーク、そう呼んでくれたのはいつ以来かしら!俺、…母さんね、スゴく嬉しいよぉ…っ!アンタならきっと世界を救えるわ…!!だから行っておいで……母さんはずっとアナタことを、この村で待ってるからねぇ…アーク………ッ!!!」


こうして勇者アーク・ブルーシャインの大冒険が始まった。そして彼とその仲間たちは、やがて『伝説』としてこの世界で語り継がれる事となる。ただそれはまだずっと先の話である…(つづく)









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